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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
四章 王立学院での日々
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惨劇を齎す者

「うあああああ!」


「助けてくれぇ!」


「きゃああああ!」


阿鼻叫喚の地獄絵図。


血や肉片が飛び散り、まさに惨劇だ。


生き残っているのは何人だろうか。

最初は大勢いた生徒たちも今は数えられるほどしかいない。


「シュラさん・・・」


クリア教授が声をかけてきた。


「あなたはどうして平気なのですか?」


「・・・・・もう慣れている。いや、慣れてしまったと言うべきか。物心ついた時から一人で魔物や動物を狩ってはその肉を食べていたからな。殺し合いや大量の血は日常だった」


もちろん今世での話だが。前世の私が見たらとっくに発狂している。

この世界に転生したばかりの頃は血を見るだけで吐いていたものだ。時間が経つにつれ慣れていったが。

何度も言うが私の精神は半分人で半分魔物なのだ。


人間でもない、魔物でもない。

私は転生してから何者になったのだろうか。


「なんと・・・」


「物心ついた時からとは・・・あなたは孤児だったのですか?」


「親の顔は見たこともないな」


「そうですか・・・すいません、こんなことを聞いてしまって」


「気にしていないさ。私自身、普通の人と違うことを恐ろしく思っていることがよくあるからな」


「大丈夫だよ。シュラはシュラだもん」


「・・・・今のところはな」


話している間にも魔物たちによる殺戮が続いている。


生き残った聡明な生徒が連携して何とか耐えているといった様子だ。


既に襲撃レベルは7まで行っている。脅威度がBの魔物も混じり始めるころだ。


これはどう考えてもやりすぎた。


一年次のプログラムで魔物との戦闘はかなり少ない。

魔物の脅威を理解させるためとはいえ、こんな惨劇を引き起こすのは懲罰に値する行為だろう。


「ハル教授、今回はやりすぎたな」


「そうですかね?いいデータが取れるのでやりすぎとは思いませんが」


ハル教授もヤバい人だった。

これは下手をすると歯止めが効かなくなって研究の為なら人が死んでもなんとも思わなくなってしまう。


「ハル教授。今の自分の言葉の意味が分かるか?」


「はい?・・・・・あ」


「私のようになるな」


「気をつけます」


大丈夫だろうか。私が言えたものではないが。


「シュラにも言えることだね」


孫の言い方は私をからかう言い方ではなく心配しているような口調だった。私のことを知っているからだろう。


「Sランク冒険者や研究者というのはいい意味でも悪い意味でも変わり者が多いですね」


「私は悪い意味で変わり者だと自覚しているよ」


「あ、やっと連携し始めたよ」


確かに、冒険科が魔物のことを説明し、戦闘科と冒険科が前衛、魔術科と魔道具科は後方支援だ。


レイドクリスタルもかなりひび割れており、何度か攻撃されれば壊れてしまうだろう。

レイドクリスタルによる襲撃はレベルが上がるほど敵は強くなるが出現する数は少なくなる。


「ヴァエル、膝を!冒険はヘイトを集めろ!魔法は回復、道具は爆弾を!」


ギュスタがリーダーとなり下位地竜を討伐しようとしている。


「んなこたぁ分かってんだよ!あのクソ悪魔に復讐するまで死ねるか!」


ヴァエルと呼ばれた坊主頭の戦闘科の生徒が叫ぶ。彼は最初に私を悪魔と呼んだ生徒だ。


ブレスにやられて倒れる生徒たち。


残ったのは四人だけ。

偶然か分からないが、戦闘科・魔術科・冒険科・魔道具科の生徒だ。


下位地竜も生徒たちもボロボロであり、勝負はお互いあと一撃だ。

下位地竜は魔力がもう残っていないらしく、巨体を生かした突進攻撃をする。正解だ。


しかし生徒たちもうまく引き付けてヴァエルが脳天に剣を突き刺して避け、ギュスタが足を斬り魔術科と魔道具科の生徒たちがとどめの魔法と爆弾を叩き込む。


下位地竜が倒されたのでレイドクリスタルが動作を停止する。


「お疲れ様でした」


ハル教授が呟く。お疲れを遥かにこえる疲れだろう。


「生徒に会いに行くぞ」


確認を取ってから転移する。


戦場はとても濃い血の臭いが漂っている。


ヴァエルは私を見るや否や斬りかかってきた。私は避けもせず受ける。


「てめぇ・・・」


「・・・」


腕や足、胸を斬られても耐える。さすがに首や心臓は避けるが。


「もう終わりか?」


「くそっ」


もう体力がないらしく、膝をついてしまう。


「あなたはもう立派な騎士ですよ」


戦闘科の元騎士が慰めている。


クリア教授は自分の生き残った生徒を抱きしめている。生徒は生き残った安堵からか深く眠っているようだ。


「先生・・・」


「よく生き残った。お前なら」


「そんなこと聞いてんじゃねぇ!こんなに殺してなんとも思わねえのかよ!」


「そのことですが大丈夫ですよ」


ハル教授が割り込んでくる。


「どういうことだよ?」


「生徒たちは生きています」


「記憶の中で?慰めは・・・」


「いいえ、これから蘇るんです。ちゃんと、合同訓練で死ぬ前の状態に。アンデットにはなりませんから。ではそろそろ生き返らせましょうか」


何を言っているのか分からないと言いたげな顔のギュスタ。まあそうなるだろう。


『魔導を極めし者』を持つ私でも蘇生の魔法は使えないし創れない。


だがレイドクリスタルなら限定的だが蘇らせることが出来る。

ハル教授がクリスタルに手を触れて何かを唱えるとクリスタルが輝きだす。


あまりの輝きに目を覆ってしまうが、光が収まるといたるところで生徒たちが立ち上がった。食われていても粉微塵になっていても生き返れるのはすごいと思う。


「みんな・・・」


「あ、あれ・・・?


「確か死んだはずじゃ・・・」


一応各教授たちに確認を取ると全員生き返ったとのことだ。


「こんなことなら最初から言ってくださいよ」


ギュスタが疲れ果てた口調で言う。


「生き返ると言ってしまえば意味がないからな」


「悪魔ですね」


生徒たちは状況を理解したようだが困惑しているようだ。勝負には勝ったが戦いには負けたとでも言いたげだ。


その後は私を見て怯えて泣いて逃げて殺害しようとしたりしてと大変だった。


とりあえず生徒全員に精神を回復させる魔法をかけ、トラウマや悪夢となって魘されないようにしておく。


後日、リリアに呼び出され怒られたが得意の弁論術で説き伏せた。レイドクリスタルは完全に破壊して二度と使わない・造らないことを約束に説教は終わった。


ハル教授にリリアに言われたことを話すと大泣きしてレイドクリスタルに抱き着いて泣き止んだと思ったら殺意のこもった目で私を見て、


「あなたは私に自分の子を殺せと言うのですか・・・?」


それはリリアに言ってほしいと言うと私の紹介でリリアに会わせろと言ってきた。


根負けしてリリアと学院長に許可をとって面会させ、しばらく待っているとハル教授と共に疲れ果てたリリアが出てきて、


「仕事を・・・お願いします・・・」


と言って自室へ行ってしまった。


後で聞いたがハル教授が狂気を感じさせる態度で脅迫まがいのことをしてレイドクリスタルを破壊するという約束を取り消したらしい。使用厳禁の約束は取り消せなかったらしいが。


その日は一日中書類仕事をすることになった。


いつ見てもどうでもいい物や女王がやらなくてもいい物が混じっているので改善案の書類を提出しておいた。


それと生徒たちだが自分たちの愚かさを痛感し、今まで見たことないほどのやる気を見せたそうだ。脱落者はいない。


そして私は『惨劇を齎す者』と不名誉な二つ名を貰ってしまった。《調律者》シュラが《惨劇を齎す者》シュラにならなければいいが。

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