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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
四章 王立学院での日々
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アリアと孫の悩み

「なんて奴だ・・・」


何とか即死は免れたが全身ひどい大怪我だ。

爆発の時の熱で火傷して爆発の時に飛び散ったナイフが左腕に刺さった。どういう仕掛けだ。


すぐにでも回復したいが弾丸が数発体内に残っているためこの状態で回復すると弾丸が体内に残ってしまう。


とりあえずナイフを抜き、軽い回復魔法をかけた。


もう一人の使徒はどうなったのだろうか。


『鎮痛』の魔法のおかげで動けないほどの痛みはないが痛いものは痛い。

ふらつきながら町へ戻るとアリア一人でが巫女服の使徒と戦っていた。


巫女服の使徒は糸を操り、絡めとったり切ったりと多彩な戦い方のようだ。

アリアの体には小さい傷があるが苦戦しているわけではないようだ。


糸を避けて近づく。

そのまま殴るかと思ったが袋から取り出した砂を使徒の顔面に投げつけて素早く背後にまわり、首を折った。


かなり素早く動きが洗練されている。魔物と戦っているうちに腕を上げたようだ。


「強くなったな、アリア」


「その声はししょ・・・キャァァァァ!」


振り向きざまに悲鳴をあげられて殴り掛かってきた。


「うおっ!?」


驚いたが余裕で避ける。


「なにをする?」


「化け物め!」


「化け物!?」


化け物とは心外な。

自分の姿を確認したいのだが、鏡も水もない。


『分身』で今の自分の姿を確認すると・・・化け物か?と思う程度だった。


爆発のせいで上半身が裸で爛れていて血まみれでちょっと抉れているところもある、顔も似たような有様。


爆発に巻き込まれたら誰でもこうなるのではなかろうか。


分身の自分を見ているとアリアがこんなことを言った。


「化け物・・・分身まで使うのか!」


まだ勘違いしているのか。

いくら私でも化け物と連呼されれば多少傷つく。私がそんなに怖いか?


「さっきから化け物化け物ってひどくないか?」


「・・・師匠?アンデッドじゃないですよね?」


「大怪我だがこの程度では死なん」


「私に声をかける前に回復しておいてください。師匠の声とよく似たアンデットだと勘違いしちゃったじゃないですか」


「色々あって今は回復できない」


ため息交じりに答えるアリア。誤解が解けたようでなによりだ。


何があったのか聞かれたので説明しようとすると遠くから孫が走ってきた。


「ちょっとなにさっきの大爆発!あ、アリアちゃん何か知らアンデット!?」


騒がしいな。


「そんなに私がアンデットに見えるか」


「キェェェェアァァァシャベッタァァァァァァ!!」


「うるさい」


「うるさいです」


「ごめん」


なんだこのやり取りは。


孫の反応が突然発狂したようにしか見えなかった。

いくらなんでもその反応は演技としか思えなくなる。


今の驚き方・・・前世で聞いたことがあるような気がする。なんとかセットだったような・・・?

なんとなく危険な気がしたので思い出そうとするのはやめよう。


「シュラ、なんで回復しないの?それ子供が見たらトラウマになるよ」


「色々とあって下手に回復できない」


「どういうこと?」


「体内に弾丸が残っている」


「弾丸?」


「私も最初は信じられなかったが蒼い使徒の武器がどう見ても銃で音やリロードも同じだった」


孫はすぐに分かったがアリアは分からなかったようだ。この世界に銃なんてないから分からないのは当たり前か。


「でも治療しないと死ぬよ?」


「分かってる。だから荒治療をしようと思う。もう脅威はないだろうからな」


「荒治療?」


「グロいから私から離れて背を向けて耳を塞いでおけ」


二人が離れて背を向けたのでもう一度『鎮痛』の魔法をかけ一回体を完全に治療し、下半身の服の一部を裂いて噛む。


回復し終わったら手に魔力を通して魔力の爪を作る。


それを自らの体に突き刺し、回復しながら弾丸を抉り出すというとんでもないやり方だ。

元が竜なので人以上の生命力と魔法と魔力があるからこそできる荒業であり、覚悟がなければできない。


「!!!!!!」


布を噛んで激痛を堪え、弾丸を取り出していく。死なない程度に肉も抉っているのでグロい音と濃い鮮血の臭いがする。


痛みで片膝をつくが、弾丸はあと一発。


「シュ・・・・!!!」


見るなと言ったのに孫が見た。

顔を真っ青にしてどこかへ行ってしまった。気分が悪くなったのだろう。

だから離れて見るなと言ったのに。


考えているうちに最後の一発も取り出し終わった。全身がさらに血まみれで手に至ってはもう真っ赤だ。

地面に肉と血の池があり、離れて燃やし尽くす。燃え終わった後は風の魔法で臭いを散らした。


血がひどいので自分に『清潔』の魔法をかけ、新しい服を作って着る。


それにしても血を失いすぎて貧血だ。フラフラして歩きにくい。


「師匠!」


「ああ・・・すまないな」


アリアが肩を貸そうとしてくれるが身長差があるのでできない。

心配そうに私を見上げている。


「大丈夫だ・・・・少し休めばいいだけの話だ」


「無理をしないでください。あそこにちょうどいい木があるのでそこで休みましょう」


ふらつきながらアリアに言われるがままに木へ歩いていき、根元で横になる。

『造血』の魔法を使ってもいいのだが今使うと心配してくれているのに申し訳なくなる。


横になるとすぐに孫が駆け寄ってきた。


「シュラ、大丈夫なの!?」


「貧血だが・・・少し休めば治る」


「大丈夫なわけないでしょ!?自分の肉を抉り取ってたのに!」


「回復したさ・・・・」


「回復しても心配なものは心配なの!」


確かにあの方法では安心できないだろう。


だが襲われない限りもう大丈夫なので死ぬことはない。

そう言っても孫は納得してくれなかった。


少し眠ろうとしたときの孫の不安そうで悲しげな顔を見てなぜか心が苦しくなった。


-------------------------


「死なないよね・・・?」


「今のところどこにも傷は見当たりませんし・・・・しばらくすれば起きると思います」


「本当に、昔から無茶ばっかり・・・」


「昔?」


「前世のこと」


シュラは前世も無茶ばかりしていたらしい。

職場で誰かが休めばその人の分までやるし、誰かが夜遅くまで残業していれば手伝ったりもしていたらしい。


そのせいで体調を崩すことが多く、回復して休んだ分の仕事をしてまた体調を崩すという悪循環を繰り返していたらしい。


またシュラの言う「壊れていた時期」は特にひどかったらしく、仕事は問題ないしいつも優しくしてくれていたそうだが今にも死んでしまいそうだったらしい。


どうして無茶ばかりするのだろう。


シュラが燃える王城へ行ったときは死なないか心配になり、今回みたいに大怪我したのに心配させないように振る舞っていても本当か疑わしい。


シュラは他人に迷惑をかけたくないからそういうことをしているのだと思うけど・・・私としては悲しくなる。


シュラを守れる力がないことだけじゃない。


なんというか、他人を頼ろうとしていないように見えて、信用されていないのかと悲しくなる。

もっと私を頼ってほしいと思う。


私の膝で眠るシュラは子供みたいに可愛く感じる。


私がシュラと同じかそれ以上に強くなれれば、私はシュラに頼ってもらえるのだろうか。


「そういえばキャロルさん」


「なに?」


「師匠のこと好きですよね?」


「ぶっ!」


思わず吹いてしまう。


「ななな何を言ってるの私とシュラは家族でだから好きなのは恋じゃなくて家族としての好きで」


「早口で捲し立てて前のように『おじいちゃん』ではなく『シュラ』と言っている時点で師匠のことを好き、最低でも家族ではなく異性として見ていますね」


「うっ・・・」


真顔で攻めてくる。

この子鋭い!


「そ、そうだよ。悪い?」


「悪くないと思いますよ。ただ、師匠を見る限り師匠はあなたのことを異性ではなく家族として見ています。なので師匠と恋仲になるのは難しいかと」


「・・・」


「前世で家族でも今世では異性。あなたが師匠のことを異性として見るのは考え方の違いによるものだと思います。師匠は今世を前世の人生の延長として見ており、あなたは前世と今世は別物と考えているからこうなったのだと思います」


「・・・アリアちゃん」


「なんでしょう?」


「なにか変なものでも食べた?」


この子ってこんな子だったっけ?


「食べてませんよ。強いて言うならば、学院で友達と呼べる人たちと関わったせいだと思います。私は幼いころから教育は受けていましたが家庭教師でしたし、奴隷や冒険者は同じ境遇の人や顔見知り程度でした。ですが学院ではほとんどの人が身分を超えて対等に付き合っており、今まで知らなかった知識を共有したりいろいろな性格の人と関わるうちに私も影響されたのかもしれませんね」


「そうなんだ」


「それで友達が困っているときは相談に乗ったりしています。私もあなたのことを冒険者仲間ではなく友達だと思っていますので」


「友達・・・」


素直にうれしい。


「ですが・・・・」


アリアちゃんが突然挑戦的な笑みを浮かべる。この子ってこんな顔できたんだ。

基本的に無表情だったから感情の表現が苦手だと思っていたんだけど。


「師匠は渡しませんよ」


「・・・まさか」


「そのまさかです。なんだかんだで私も師匠のことが気になっているんですから」


こんなところにライバルが!


「孫と弟子・・・どちらも厳しいかもしれませんが、この二択ならば間違いなく弟子の私です」


「いいや、私の方が魅力的だもん!絶壁幼女に負けるわけない!」


「ぜっ・・・絶・・・・・壁・・・・?」


自分の胸を見下ろしてショックを受けた顔をするアリアちゃん。


「私の勝ちだね!」


「い、いいえ、まだ分かりません!師匠はそんなこと気にしません!それに私は身長が低いだけです!」


「負け惜しみにしか聞こえないね~」


「くっ・・・!」


「すでに心が私に傾いてたりしてたりして?ほら、私の膝に頭を乗せてるし」


「それはあなたが乗せたからでしょう!?師匠は私のものです!」


「あ、ちょっと!」


シュラを奪われてしまった。


悔しいけど、他のことで不安になった。

これだけ騒いでいるのに一切起きる気配がない。


「シュラ起きるよね?」


「・・・さあ」


-------------------------


すべて聞いていた。


私は今大混乱している。


孫が私を恋愛対象として好きになっているとは・・・。話の流れから察するに、アリアも同じだろう。


どうしよう。確かに私は今世を前世の人生の延長として見ている。


だが孫が前世と今世を別のものとして考えており、私を誘惑してきたのも恋愛としてなら納得できる。


いや納得できない。


前世の特技であったポーカーフェイスのおかげでバレていないが、会話を聞いていたのがバレたらと思うと・・・酷い目に遭うかもしれない。


それにしてもアリアの膝は意外と柔らかい・・・って何を考えているんだ私は!

私には家族がいた!それにアリアは私の弟子でキャロルは孫だ!それに竜と人が付き合ったなんて聞いたことない!


最後はもしかしたら聞いたことないだけでできてしまうかもしれないが、私に彼女たちを恋愛対象として見るのは難しい。


彼女たちには悲しい思いをさせてしまうが・・・申し訳ない。


私は前世と今世を別のものと考えるのはまだ難しい。

「キェェェェアァァァシャベッタァァァァァァ!!」の元ネタは「ハッキョーセット」と言えば分かるでしょうか。


元ネタのCMをミュートで再生したら危険なものを感じました。


なんでこんなこと書いてるんだろう?

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