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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
四章 王立学院での日々
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冒険者を辞めてしまえ

最近、孫の様子がおかしい。

よく私に関わっては甘えてくる。いや、甘えてくるというより誘惑しているといった方が正しいか。


「シュラ~膝枕してあげる」


「いらない」


発情期か?

香水でも買ったのかいい匂いがする。


万が一私を誘惑しているのなら相手を間違えている。私は一応祖父なのだが。

それにもし孫と前世と今世も血の繋がりがなかったとしても私の好みではない。もっと清楚な方が好きだ。


なぜこんなことを考えているのだろう?


「今世でそれをやると絶対に誤解されるぞ。前世なら親孝行として見られるが」


「む~」


頬を膨らませるが無視する。


獣人のアリアならこういう発情期みたいなことも詳しいと思うが最近会えていない。


「そんなことより、今日から冒険科の野外学習の日だ。さっさと生徒に説明しに行くぞ」


今日から三日間、冒険者として野外学習をする。


まだ三ヶ月ほどしか経っていないが、三日間で学ぶのは野営や冒険者の生活、ルールなど。危険なので魔物との実戦は必要時以外はしないように徹底されている。


また他の冒険者に何をされようが緊急時以外講師は介入しない。講師が介入するのは生徒だけでは対処できない緊急時のみ。


また、外にいる間は生徒と教師ではなく冒険者同士としての関係になる。


以上を生徒たちに説明し、事前に用意させていた冒険者としての装備に着替えさせる。


私たちも冒険者としての装備に着替える。私は単衣仕立ての流水模様の薄物だ。

孫はたいして変わっていない。

オスローは全身重鎧で大剣を背負っている。


「オスロー先生すげぇ!」


「キャロル先生・・・相変わらずなんかエロいです」


「シュラ先生の服涼しげでいいですね!」


三者三様の反応を見せて興奮している。生徒たちは予算がなかったのか普通のローブや革の軽装だ。


武器も見てみたが特殊効果がついているものはギュスタの炎属性の剣とフーカの水系統の魔法を強化する杖のみであとはどこにでも売っているものだった。


「準備はいいな!まずはギルドへ行って冒険者登録してこい!パーティ組むやつはパーティ申請するのを忘れるなよ!」


オスローの合図で生徒たちが一斉に正門へ向かって行った。


「さぁて、今年は何人がギルドで絡まれるかな」


「ひどくないか」


「鬼畜野郎に言われたくねぇな」


「お互い様だ」


冗談を言い合ってゆっくりギルドへ向かう。


-------------------------


「見ろよ!俺はEランクだぞ!」


「私たちも!」


試験が終わって冒険者登録できた生徒たちがはしゃいでいる。

他の冒険者たちは懐かしいものを見るような目だ。


しかし一部の冒険者は嫌なものを見る目つきだ。おまけに酔っ払っているから絶対に絡むな。


「あいつ絡むぞ」


私が言った通り、酔っ払った柄の悪い冒険者が立ち上がって生徒に近づいていった。


「おいガキ共。Eランクになったくらいではしゃいでんじゃねーよ!」


いきなり怒鳴る冒険者。そして怒鳴ったあと女子生徒たちを嘗め回すように見る。

女子生徒たちは震えているが・・・どうするのだろう。


関係ない冒険者たちはかわいそうにと哀れみの視線を向ける者と興味ないと無視する者だけだ。


「かわいい奴ばっかじゃねぇか。俺んとこに来いよ。気持ちいいこと教えてやる」


「キモ・・・ああいう奴ってどこにでもいるよね」


孫が冒険者に聞こえないように呟く。矛先がこっちに向いてはせっかくの貴重な体験が台無しになる。


委縮してしまった女子生徒が何人か私を見るが私は首を横に振る。この程度自分たちで対処できないといけない。


男子たちは何をやっているんだ?


見てみると男子たちも委縮している。怖いのだろう。


思わずため息をつきたくなる。


「まったく・・・この程度で怖がってどうする。俺がガキの頃はこんなの日常茶飯事だったぞ」


「私も。変態ばっかりだったよ」


「その露出の高い服装が原因だろう。とにかく、いい加減に不味くなってきてないか?」


冒険者同士の争いは基本的に他人が関わってはいけない。ギルドもその場に居合わせた受付によって対応が変わり、すぐに仲裁する場合もあれば放置する場合もある。今回は放置のようだ。


酔っ払い冒険者が女子生徒に触れようとしたので手を払う。


「あぁ!?」


振り向いて怒鳴ってきたが私の顔を見た瞬間固まった。


「て、てめぇ・・・いや、あなたは・・・」


私がどうかしたのだろう。


「え、Sランク冒険者の・・・・・《調律者》シュラ・・・・・!」


真っ青な顔で震えながら私を指さす酔っ払い冒険者。


いつの間にリリアから貰った称号が二つ名になっていたんだ?


酔っ払い冒険者が私の名前を言うとギルドが一気に騒がしくなった。


「え、あいつが・・・?」


「ほ、本物だ!」


「すげえ・・・帝国軍を一人で蹴散らしたんだろ?」


「ああ、竜を使役してるんだってな。本人の戦闘力も滅茶苦茶強いらしいぞ」


いつの間にここまで広がっていたんだ。

あれぐらい特に誇ることでもないと思うのだが・・・。


「ああ・・・シュラ様・・・素敵・・」


女性冒険者はなぜかうっとりしている。私が何かしたか?まったく身に覚えがない。


酔っ払い冒険者は「す、すいませんでしたぁ!」と頭を下げるとギルドから出て行ってしまった。


さて。


新米冒険者たちにいろいろと言うことがある。


「おい、新米冒険者たち」


今は生徒ではないので冒険者として扱う。


「女子とパーティを組んでるか知り合いの奴は?」


問いかけると男子たち全員がおずおずと手を挙げた。

それを見てわざとらしくため息をつく。


「仲間が襲われているなら助けろ。冒険者は他人同士の争いにあまり関与しないが、仲間が襲われているなら助けてやれ。あの程度の雑魚に何を怯える必要がある?あの程度一人でもやり返せないと冒険者とは言えないな。そんなんじゃゴブリンも殺せない」


最近よく「ゴブリンも殺せない」と聞く気がする。


「お前たちの防具や武器は飾りか?使わないのなら売るか捨てるかしてしまえ。ハッキリ言ってEランクになれたという事が信じられん。ランクが表すのは実力だけではないということを覚えておけ」


悔しそうにうつむいているが言い返せない。


男子はこれぐらいでいいだろう。

次は女子だ。


「女子も同じだ。冒険者なんてやっていれば誰の助けもない状況に陥ることなんて当たり前だ。冒険者に男も女も関係ない。冒険者になるからには誰かを傷つける覚悟も自分が傷つく覚悟もできてないといけない。『自分は回復専門だから戦えない』?『遠距離魔法専門だからどうしようもない』?そんなことを言うのなら冒険者辞めてしまえ。自分の身すら自力で守れない奴は町を出たらあっという間に殺される。悪いことは言わないから無理だと思うのなら命があるうちに冒険者を辞めろ」


厳しいかもしれないが、私は生徒に死んでほしくないのだ。

死因がつまらないことだったらなら、私は必ず後悔する。もっと強くしていれば、ちゃんと指導していれば、と。


「それでも冒険者を続けるのなら強くなり続けろ。最低でも不屈の精神と自分の身を守れる強さを持っておけ。お前たちが高ランクの冒険者になるかはこれからの経験と頑張り次第だ」


言いたいことはすべて言ったので孫とオスローの元へ戻る。


「シュラって怒らないよね。本気で怒ったらどうなるんだろ?」


「よく言った。若いのによく分かってるじゃねえか」


「・・・私は彼らに死んでほしくないだけだ」


「俺もおなじだよ」


「この場にアリアちゃんがいたら違った結果になってたかな?」


「いや、同じだっただろう。アリアも私たちのように傍観していたはずだ」


アリアがすぐに割って入ると生徒たちのためにならないからな。


「それより新米冒険者たちが意気消沈してるぞ」


「また私が言わないといけないのか?」


「当たり前だろ」


「なにが当たり前だ・・・分かったよ」


落ち込んでいる生徒たちに声をかける。


「どうした、強くなりたいから冒険者になったんじゃないのか?それとも世界を冒険するためか?どちらにせよ、依頼を受けてさっさと実力をつけろ。依頼を受けないと金が無くなって武器や防具を新調できなくなるぞ?それと野営のための道具一式は買ったのか?冒険者は野営なんて当たり前だぞ」


そう言うと生徒たちはようやく思い出したようで、急いで依頼を受注していた。事前に説明していた通り、魔物の討伐依頼は受けていないようだ。


生徒たちの依頼が終わるまで何をしていようか。

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