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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
四章 王立学院での日々
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合同訓練に使う試作品と間違った噂

「暑い・・・」


「日本のようだな」


入学式から二ヶ月ほど経った。

王国は年中温暖だが今の季節・・・夏になるとものすごく暑くなる。


学院の生徒は全員夏服になり、私も白い半袖カッターシャツに青いネクタイ、夏用の黒い長ズボンの格好だ。魔法で体温調節はできるが燃費が悪い。


孫も相変わらず露出の高い服装だ。日焼けして褐色肌になると少しワイルドな美少女になるだろう。とくに興味はないが。


「シュラ、魔道具科の魔女っ娘ロリエルフと何を話すの?」


「教授と言え。内容は秘密だ」


「教えてよ~教えないとシュラが魔女っ娘ロリエルフのことを好きだって噂広めちゃうよ?」


「悪質だな」


「教えてよ~」


甘えた声でしなだれかかってくる孫。生徒がすごい見てくるからやめてほしい。


「誰にも言うなよ?関係科目の教授と魔道具科の生徒たちも緘口令が敷かれている。それにギルドと学院長と理事長に直接話して使用許可をもらっているほどの物だからな」


「は~い」


大丈夫だろうかと心配になりながらも孫の猫耳に口を近づける。吐息が当たったのか孫が「うひっ!?」と変な声を漏らした。


「・・・へ~。面白そうだね」


「もう試作品はできてるらしいから確認しに行くだけだ」


「私も行く」


そんなやり取りをしながら魔道具科の教室へ向かっていると近くにいた女子生徒から声をかけられた。


「あの、お二人は恋仲なんですか?」


「そ」「違うぞ。冒険者仲間だ」


孫が「そう」と言いかけたんだが。


「そ」の部分をしっかり聞いていたらしい女子生徒はニヤニヤしながら、


「初々しいですねぇ」


と言ってどこかへ行ってしまった。


「ま、まて!誤解だ!」


引き留めようとするがすでにどこかへ行ってしまった。絶対に噂になるやつだ。


孫を見るとニヤニヤしていた。


「へへへへ」


「その笑い方のせいでせっかくの可愛さが台無しだな」


可愛い、というと孫が顔を赤くした。


「それより冗談でも恋仲とか言うのはやめてくれ。水仙とは家族だろ」


家族というと今度は悲しそうな顔をした。よくわからない。


「はあ・・・噂は後で対処するとして、教授に会いに行くぞ」


「・・・はい」


初めは楽しそうにしていたのに今は意気消沈している気がする。具合でも悪くなったのだろうか。


「具合が悪いのなら救護室へ連れて行こうか?」


「大丈夫」


「・・・?」


よくわからないが・・・とりあえず教授に会いに行こう。


-------------------------


「ハル教授」


「あっ、シュラさん!あれ?キャロルさんも?」


魔道具科の作業室へ来るとすでに数人の生徒と夏なのに魔女の恰好をした幼女にしか見えないエルフがこちらに気づいた。

彼女のフルネームはハル・フェダスというらしい。見た目からほぼ全員が『ハルちゃん』と呼んでいる。

教授と言う人はあまりいない。


「色々あってな。試作品ができたと聞いたが」


「ああ、レイドクリスタルですか。もうほとんどできてますよ」


「たった二ヶ月でほとんど完成したのか?」


「だってこんな面白そうな装置、つい時間を忘れて作成に没頭しちゃうじゃないですか。生徒たちも放課後も残って作業してましたよ」


「すごいね・・・」


「試作品はこの部屋で厳重に管理してますよ」


準備室へ入り、さらに奥の『危険物倉庫』と書かれた薄暗い倉庫の中の『最厳重管理』と書かれた小部屋へ入る。


「危険物倉庫は助教、さらに奥で個別に管理された個別部屋は准教授、厳重管理以上は教授しか立ち入りを許可されません」


「じゃあなんで私たちは入っていいの?」


「非常に優秀な実績や提案をして成功した者は学院長以上の方の許可があれば教授同伴で閲覧を許可されます。・・・こちらです」


銀行の金庫室につけられていそうな丸く分厚いドアを開けると出てきたのは真紅に輝く大きな小星形十二面体のクリスタルだった。

台座の上でふわふわと軽く上下しながら回転している。


「綺麗だね・・・」


「そうでしょうそうでしょう。これが出来上がった時、生徒たちも私も思わず見とれてしまいましたから」


教授がない胸を張って自慢げにしている。


「シュラさん・・・?」


教授が光のない目でこちらを見上げる。ものすごく怖い。

なぜ女性は失礼なことを考えるとすぐに気づくのだろうか。


「ねえねえ、これどうやって使うの?」


「細かい設定をして専用の触媒をクリスタルに投入すると起動します」


「なんでこれが最厳重管理なの?」


「これに触媒を投入して敵国に放り込んだらどうなると思う?」


「・・・あ」


「そういうことだ。設定を変えれば惨劇をいとも簡単に引き起こすからな」


「これを合同訓練で使うの?」


「教授の元でいざとなれば強制停止させる体制で使う」


よっぽどのことがなければ大惨事にはならないだろう。

これを使うころには生徒たちもそれなりに強くなっているはずだし、長年の問題解決に繋がればいいが。


「ではそろそろ戻りましょうか。講義があるので」


「そうだな。冒険科に戻ろうか」


「分かった」


-------------------------


「シュラにキャロルじゃねぇか!どうだった?」


訓練場に戻るとオスローが野外訓練の準備をしていた。


「もうほとんど完成している」


「そうか!それは楽しみだな!」


「先生、何の話ですか?」


すでに来ていた生徒が声をかけてくる。


「秘密だ。合同訓練の時に話す」


「合同訓練ですか・・・」


生徒が嫌そうな顔をする。


学院では定期的に戦闘科・冒険科・魔術科・魔道具科と一緒に野外で実際に魔物と戦う合同訓練がある。目的は他人の戦い方を見て学んだり、それぞれが学んだことを実際に生かすためなのだが問題があった。


戦闘科と魔術科の仲が悪いのだ。


理由は基本的な戦い方に対する考えらしく、戦闘科は魔術科のことを「魔物に襲われるのが怖くて近づけないから離れて戦える魔術科を選択した臆病者」と言い、魔術科は戦闘科のことを「脳筋でドMで死にたがり」と言っている。


冒険科・魔道具科は基本的に中立なので大きな問題になったりしないが冒険科と魔道具科は戦闘科と魔術科から「どちらも選べなかった優柔不断な奴ら」と言われている。


本当に嘆かわしい話だ。


孫はそのことを知らなかったようなので説明する。


「なにそれ?愚かとしか言いようがないよ。戦場でそんなこと言いあってたらあっという間に殺されるよ」


そう言って憤慨していた。


「それを分からせるためのレイドクリスタルだ」


「俺も最初聞いた時はなんて鬼畜野郎だと思ったぜ」


「大丈夫さ。死ななければいいだけだ」


「うわぁ~・・・」


何にせよ、合同訓練が楽しみだ。


せいぜい自分たちの愚かさを噛み締めながら合同訓練に臨むがいい。


そんな悪役にしか思えないことを思いながら私は黒い笑みを浮かべていた。


関係ないが、後日想像した通り私と孫が恋仲という噂が広がり訂正するのが非常に大変だった。

訂正した後、なぜが孫が拗ねてしまったので機嫌を直すために顎と喉をくすぐって猫化させたら正気にもどったときさらに拗ねられた。


意味が分からない。

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