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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
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力に溺れれば

「リリアが生きているというとは既にバレているだろうな。追手が来ても面倒だからアリアは留守番してもらってもいいか?」


「分かりました」


「公爵と辺境貴族を捕まえて外患誘致の証拠を見つけるか吐かせればいいんだよね。問題はどこにいるかが分からないことだよね」


「それについては情報屋を使う」


王位継承争いのときに頼った情報屋なら知っているだろう。


「情報屋って裏社会の人間だよね?大丈夫なの?」


「大丈夫ではない」


「だめじゃん」


「裏社会に信用とか信頼なんて言葉はない。お互いに利用しあうだけだ。それに裏社会には裏社会のルールがある。裏切ったらどうなるかは分かっているだろうから利用するだけなら大丈夫だ」


裏切り者の末路は悲惨だ。ドラム缶にコンクリ詰めにされて海に沈められるとかもあったらしい。


「竜様は優秀なのか危険なのか・・・」


「少なくとも裏社会と関わっている間は危険と思った方がいいな」


何かあれば連帯責任で私まで被害を被る可能性がある。裏になれていない者には守秘義務がある。


「私は王都の情報屋のところへ行ってくる。居るかは分からんがな」


竜になって飛び立つ。


竜で全速力だと数分で王都に着く。

もう城は崩れてしまっている。リリアには伝えた方がいいのだろうか。

王城で殺された者たちへ黙祷する。


黙祷が終わり、情報屋のところへ行く。相変わらず薄暗い所だ。


酒場には王都が大変なことになっているというのに前に来たときと何ら変わっていなかった。彼らにとってこの程度の騒ぎはなんてことはないのだろう。


「あんたは・・・」


「覚えていてくれて何よりだ」


「客の顔を覚えられない奴はこの世界でやっていけねえよ」


「それもそうだな。本題だが、今回の反乱に参加した王国の貴族のことを教えてくれ」


「あんた、今回もデカいヤマか?」


ヤマとは仕事のことである。


「さあな。成功すれば報酬はもらえるかもしれんが王都がこの有様じゃもらえないかもな」


「ならなぜ金がもらえないのに仕事をする?」


「国のためさ。・・・ああ気にするな。お前たちに利用価値がある限りガサ入れとかはしないさ。国と裏社会は持ちつ持たれつだろ?」


「まあな。俺たちもガサ入れされるようなヘマはしねえ。それで情報料だが、白金貨五枚、現ナマな」


白金貨五枚を直接手渡す。


「まいど。まずラット公爵だが、数世代前から帝国のスパイだ。功績をあげて公爵にまで上り詰めて王国を乗っ取るのが仕事だった。今は皇帝を救出して帝国軍にいる」


「懲りないな帝国は」


「それで辺境貴族だが、こいつらは完全に裏切り者だ。前から帝国と裏で繋がってて帝国に国内情勢や物資を提供していた。裏切り者の中には辺境伯もいたからな。権力でいろいろと悪事を揉み消していたそうだ。ちなみに帝国軍は辺境伯の領地に進軍してるぞ」


「外患誘致罪が成立するな」


「なんだそれ?」


「外国と通謀して国に武力行使させた者に適用される。外患誘致罪で有罪になれば死刑以外は絶対にあり得ない、刑法で最も重い罪だ」


「恐ろしいな」


「俺には裏社会の方が恐ろしいよ。今回は助かった。利用価値があればまた利用させてもらう。無くなれば・・・分かっているな?」


「こっちもあんたみたいな国の偉い人という上客を逃すつもりはねえよ」


「ならいい」


脅迫みたいなことを言ったが裏社会では日常茶飯事なのだ。


しかし本当に情報屋は頼りになる。使えなくなれば潰すが。

だが相手も私に利用価値がないと判断すれば躊躇なく始末するだろう。気を付けなければ。


森の中で竜になり、住処へ戻る。


そこで情報屋から仕入れた情報を話す。


「裏社会ってすごいね・・・もうそこまで分かってるんだ」


「彼らも必死なんだよ。ほんの一瞬でも遅れが出たら破滅だ。裏社会のみで生きる者は三途の川にいつも肩まで浸かってる状態だからな」


「恐ろしいね・・・でも頼りになるね」


「信頼するな。いいように使われて最終的に消されるぞ」


「恐ろしいですね・・・女王なのに全く裏社会のことを知りません。なんというか、悔しいです」


「国と裏社会は持ちつ持たれつだが慣れないものが関わると大やけどでは済まないぞ。裏社会と関わるときは専門家にやらせておけ」


彼らはいかに儲けるかしか考えていない。

事件屋だって依頼人もターゲットも損させて大金を搾り取ろうといつも虎視眈々と狙っている。


閑話休題。


「辺境貴族は外患誘致罪、公爵はスパイ罪が成立したが・・・不可解なのは帝国がまた王国に進軍していることだ。リリアの契約でもう戦争できないようにしていたはずだが」


「おそらくあの時の契約紙よりも強力なものを使って細工したのかと。契約は使ったものよりも強力であれば上書きできてしまうので。おそらく王の権限を代行している公爵がやったのかと」


「また戦争か・・・」


「また?おじいちゃんって戦争に参加したの?」


「前の戦争は防衛と報復の名目で参加した。蹂躙だったが」


ハッキリ言って面倒くさい。


人殺しも抵抗が無くなってきたとはいえできればやりたくない。


「私は・・・一国の女王として、帝国を壊滅させます。全く懲りていないのと、帝国を放置すれば更なる災いを呼び寄せてしまうので」


「やりすぎじゃないのか?帝国の無辜の民はどうなる」


「様子を見ます。戦争に参加または援助した貴族も殺害を許可します。平民は帝国を壊滅させたあと保護します」


「そうは言っても、いくらなんでもやりすぎです。せいぜい帝国の全領土を王国の管理下に置くというのが妥当では?」


「・・・彼らはやりすぎたのです」


私はこの世界の歴史をあまり知らないが帝国は過去に数えきれないほどの侵略戦争を世界に仕掛け、途中で失敗してはまた侵略戦争をしたらしい。


たしかにこのままでは世界に災いを齎すだろうが・・・。


「リリア。お前には一国を滅ぼす許可を出した業を背負いながら生きる覚悟はあるのか?」


直接手を出していないとはいえ、国を滅ぼす許可を、数えきれないほどの命を奪うことの覚悟はできているのか。


リリアはまっすぐ私を見て


「できています」


とだけ答えた。


「そうか」


なら私は・・・。


「ひとつ聞いてもいいだろうか」


「なんでしょう?」


「帝国の貴族だが、彼らをどうするのかは帝国の平民に任せようと思う」


帝国の貴族は平民を道具としか見ていない。


「彼らに力を与えた後どうするのか・・・結果次第では、帝国すべてが血に染まるだろうな」


「まさか・・・」


「どういうことですか?」


「おじいちゃん、どういうこと?」


アリアと孫は分かっていないようだが、リリアは分かったようだ。


「そのことを知ったうえでもう一度聞く。覚悟はできているか?」


「できています」


痛みをこらえるような顔をしながら、だがしっかりと答えたリリア。

私からはもう何も言うまい。


「どういうこと?教えてよー!」


「・・・結果次第では帝国の平民も殺すと言うことだ」


そう言うと孫とアリアは顔を青くして私から離れた。


「・・・師匠、どうしてですか?」


「貴族がいなくなれば平民たちは生きていけないだろう。反乱を起こせないように教育を一切させない代わりに最低限生きていけるよう貴族が管理していたからな。私は平民たちに力を与えた後、結果次第で平民を殺害するのは・・・何も変わらないだろうからだ」


「・・・・・そういうこと・・・」


孫は理解したようだ。


「あの・・・まだ分からないんですが・・・・」


「・・・・力に溺れ、今まで支配されてきた怒りを貴族を殺すだけでは飽き足らず、無関係な外国にまで矛先を向けるようならば今の帝国と同じ過ちを繰り返すだろうから、そうなる前に死をもって止めるだけだ」


「力を奪えばいいのでは・・・」


「一度抱いたどうしようもない怨みは消えない。力を奪ってもなんとしてでもまた力を手に入れようとするだろうからな。アリアのように自制心の強い者ばかりではない」


「・・・」


アリアも思うところがあるのだろう。


奴隷にされ、理不尽な扱いを受け、私に助けられ力を求めた。


「もし私がアリアに力の扱い方を教えていなければ、どうなっていたと思う?」


「奴を殺すだけでは決して満足しなかったと思います・・・すべての奴隷商を殺していたでしょう」


「アリアは自制心が強く、奴隷の期間も比較的短かったからそんなことにはならなかった。だが、何世代も支配され続けた帝国の平民は・・・一度歯止めが壊れてしまえば殺さない限り止まることはない」


「・・・」


アリアも彼らの気持ちが分かるのだろうか。


私には分からないが・・・想像することはできる。

もし前世の壊れていた時期に今の力を手に入れていれば、破壊と虐殺を繰り返していただろう。


「・・・・・・人間は、どれだけの業を背負えば満足するのだろうか」


決して満足することはないだろう。

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