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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
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雑談

「図書館の場所を聞くの忘れた」


「・・・」


「・・・」


気まずい沈黙。

リリアに地下の図書館の場所を聞くのを忘れたためまだ燃えている城の前で立ち尽くしていた。

王都は誰もいなかった。まさにゴーストタウンだった。


夜空と燃える城はかなり美しく幻想的だと場違いなことを思う。


「どうするの?」


「強行突破だ」


リリアを救出するときにかけた魔法を自分と孫にかける。


「来い」


門に体当たりして穴をあけて中へ入る。


「滅茶苦茶だね・・・」


天井や柱が焼け崩れて足場がない。

床も天井も一面火の海だ。


かなり熱くなっているので『心頭滅却』をかける。幾分マシになったのでさっさと地下への入り口を探す。


『空間探知』で地下空間の場所は分かるのだが詳しい構造は分からないため入り口が分からない。

しばらく探していたが時間がないのでもう一度強行突破だ。


「セイッ!」


脆くなった床を全力で踏んで突き破り、空いた穴を中心にしてさらに踏み抜いて穴を広げる。

人一人入れる穴が開いたので孫を呼ぶ。


「穴をあけたぞ」


「何でもありだね」


地下室は明かりがなく暗いのでまた新たに『暗視』の魔法をかける。


「刑法の本は・・・あった」


すぐに見つかったので本棚から取って撤退する。


一階へ戻ると入り口が柱によって塞がれようとしているところだった。

全力で走ってギリギリで脱出する。


城から建物が倒壊する嫌な音が聞こえたのでさっさと逃げる。


私の住処へ戻って城を見るとすでに倒壊していた。


「おかえりなさい」


「本は見つかりましたか?」


「うん」


「キャロルは刑法を覚えておいてくれ。細かい所は違うがほとんど前世の日本の刑法と同じだ」


「前世?日本?」


「あ」


リリアに聞かれてしまった。

誤魔化そうかと思ったが通じないだろう。かなり訝しむような目で見てくる。


「竜様・・・・あなたは私に何かを隠してるんですか?」


「いや・・・まあ・・・隠してる」


正直に言ってしまおうか。


「それはだいぶ前に言っていた『他人には言えない秘密』ですか?」


「そうだ」


「あの・・・無理にとは・・・・」


「師匠、言ったらどうですか?」


確かにもうどうしようもない。正直に言ってしまおう。


「私とキャロルはこことは違う世界から来た転生者だ。前世では私とキャロルは家族で私が祖父でキャロルが孫だった。信じられんかもしれんがな。あと私は元人間だ」


「信じます」


即答。

意外だ。


普通なら頭がおかしいとか思うだろう。


「なんで竜様が人のことを深く知っているのか、政治に非常に詳しいのか分かりませんでしたが、人間だったのなら説明がつきます。前世では王だったのですか?」


「王ではないが官僚だった。キャロルは弁護士らしい」


「エリート中のエリートじゃないですか」


「すごいでしょ!えっへん!」


孫が胸を張る。確かに弁護士になるための試験である司法試験は日本三大試験のうちのひとつだが私の国家公務員総合職採用試験も日本三大試験の一つだ。


ちなみにもう一つは公認会計士試験である。また、人によっては不動産鑑定士と言う人もいる。


「確かにエリートとは言われていたが一時期の私は壊れていたんだよ。その時に裏社会と関わったおかげで表も裏も詳しくなった」


「竜様が壊れるなんてあるんですか?」


「前世はこの世界と違って魔法や魔物がなかったから私も弱かったんだ。おそらくこの世界の一般人よりも弱かっただろうな」


「信じられないです」


「私もこの世界に来たときは魔法なんて信じられなかったよ」


その後は孫が本を読み終わるまで私の前世の話をした。

魔法の代わりに科学が発展していたこと。私の国では識字率がほぼ百パーセントだったこと。ほとんどの成人が月に金貨二枚以上稼ぐこと。


「不思議な世界ですね・・・でも竜様たちからすれば私たちは未開の野蛮人ということになりますね」


リリアが寂しそうな顔をしたので否定する。


「なにも技術がなければ野蛮人というわけではない。時代や世界が変わっても人の輝きは変わらん。私にはこの世界の人々の方が輝いて見えるよ。前世では大人になるにつれて皆汚れていったからな。ここから見える綺麗な夜空と森林を見ていると心が安らぐ」


「おじいちゃん、前世でどんな人生だったの?」


「聞きたいか?いかに人が愚かで浅ましく醜い生き物かという話を」


権力にしがみついて滅茶苦茶な要件を言ってきて自分より弱いものがいなければ落ち着かない。

そういう人間を山ほど見てきた。


「いや、いいよ」


「キャロル・・・いや水仙が死んでいなければ分かっただろうよ。人の愚かさを」


「おじいちゃんって本当にどんな人生だったの?妙に達観してるし」


キャリア官僚時代は地獄というたとえですら生ぬるい惨劇の日常だった。

体調不良や鬱病、早期退職でいなくなる同期は多くどんどん同期はいなくなっていき、最後まで耐えられたのは数人だけだった。やりがいと惨劇が両立した日々だった。


「惨劇の日常をただただ生きているうちに悟ったんだ」


「惨劇って・・・あ、もう全部覚えたよ」


「もう覚えたんですか!?」


「これでも私かなり頭いいんだよ?内容も前世の刑法とほぼ同じだったからすぐに覚えられたよ」


さすがだ。


今は祖父として鼻が高い。


「リリアの回復魔法を阻害する毒薬はまだ有効なのか?」


「この毒薬は一週間ぐらいは効果があります」


厄介だな。

止血できたとはいえこのままではいつまでたっても治らない。


異次元空間のなかにヨモギがあった。

手ごろな大きさの石を加工しヨモギを乗せて擂る。


ヨモギは食べ物としても使えるし生草から採った汁は傷薬としても効果を発揮する。

魔力の器でヨモギの汁を取る。


「失礼する」


「なんですか?」


「薬草だ」


服を軽くはだけさせて固定してある布を取る。よく応急処置だけでここまで回復したなと思えるほどの傷だ。

一応血は止まっているが化膿したりすると厄介なのでヨモギの汁を塗る。


「んっ」


「痛かったか?」


「大丈夫です」


素肌が見えているため恥ずかしいのだろう。顔が真っ赤だ。

リリアの肌は健康的で綺麗だ。


ふと後ろから視線を感じたので振り返ると二人がジト目で見ていた。


「おじいちゃんのタラシ・・・」


「変態」


タラシとか変態とか何を言っている。


「ロリコンとでも言いたいのか?言っておくが私の精神年齢は百歳越えの爺だ。それに前世では家族もいたんだ。女性のことを綺麗とか可愛いとは思うがそれだけだ」


リリアは私の言葉でショックを受けた顔をしていたが私は私は後ろを向いていたため分からなかった。


二人はまだジト目で見てくる。


「無自覚タラシ・・・」


「鈍感系ですね」


なんなんだいったい。


しかしこの傷は大丈夫だろうか。

前世なら確実に縫わなければならない大怪我だ。


これほどの大怪我をしておきながらまともに話せるまで回復するとは。


塗り終わったのでまた服を裂いて『清潔』の魔法をかけて固定する。


「回復魔法が効くようになるまでは絶対安静だな。その間に筋肉が固まったりしそうだが」


マッサージすればいいのだろうが私はマッサージの方法を知らない。


「処置も終わったしラット公爵と辺境貴族を捕まえに行こうか。首謀者を捕まえて仲間の情報を吐かせよう」


「途中で自殺されたり口を割らなかったらどうするの?」


「自殺させなければいいだけだし口を割らせる方法はいくらでもある」


事件屋仕込みの拷問術がある。それを魔法と組み合わせれば世にも恐ろしい拷問ができる。


「顔が怖いよ!」


いつのまにか黒い笑みを浮かべていたようだ。


「あの、疑うわけでなないのですが、大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫だ。キャロルは司法の専門家で私は行政の専門家だ。裁判や後始末は任せておけ」


裁判にかけさえすれば勝てる。

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