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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
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襲撃事件

「次の出航が二か月後!?」


ニホ国の観光も終わり出国しようとして船の予定表を見たのだが、次に外国へ行くのは二か月後らしい。


前世のように多少の天候不良でも問題なく航行できない、船自体が貴重なため何度も使えないなどいろいろあって出ないらしい。


どうしよう。


ニホ国で最初に受けようとしていた孤児院は無くなっていたし他の依頼も報酬は雀の涙ほどしかない。

二ヶ月もここにいるのは少々キツイ。


国は好きだが魔物やいい稼ぎがない。だから早く出たい。


「船がないならおじいちゃんが竜になればいいじゃない」


「そうですね」


「何度も言うが、見つかれば大騒ぎだぞ」


「見つかってもすぐ逃げればいいじゃない」


「そうですよ」


「それはそうだが・・・」


押し問答が続いたが私が根負けして森深くで竜になり二人を乗せることになった。


-------------------------


『乗れ』


手合わせをした広場で竜になり、尻尾を地面につけて背にのぼらせる。


「ゴツゴツしてるしバランスが悪い」


「のぼる時に鱗の尖ったところが当たって痛いです」


『私は騎乗用の竜じゃない。飛ぶぞ。振り落とされないように』


軽く跳んで翼を動かし、少しずつ上昇していく。


ある程度の高さまで行き来る時の道順を逆走する。


下を見ると案の定大騒ぎだ。


いきなり竜がすぐ近くに出てきたらそうなるわな。


さっさと離れよう。


翼を動かす向きを変えて速度をあげながら進む。


「お、おじいちゃん!速すぎ!」


「飛ばされそうです!」


加速しすぎたようだ。

少し減速する。


減速してもかなり速いが。気圧で呼吸しにくいと文句を言われたが無視する。この程度では何の問題もないだろう。


『獣人国へ行くとまた騒ぎになるから私のことを知っている王国へ行くがいいか?』


「いいよ」


「王国ですか。初めて行きます」


そういえば辺境の貴族の不正はどうなったのだろう。多少の進捗はあるだろうか。

こんな短期間で不正すべてがなくなるとは思っていないので現状維持だったとしても特に文句はない。

獣人国が見えたので方向転換して王国へ向かう。


・・・!?


城が燃えている。


『なんだあれは!?』


「どうしたの?」


『見えないのか?城が燃えている!』


「・・・・あ、ほんとだ!」


「反乱ですか!?」


あり得る。


辺境貴族の不正を暴こうとして失敗したかもともと反乱の準備をされていたのか。とにかく急がなければ。


城のすぐそばに降りて二人を降ろし人型になる。


「嫌な予感がする。私は城の中へ入る」


「ええ!?危ないよ!一酸化炭素中毒になったらどうするの!?」


「『水中呼吸』で何とかする」


「意味ないって!」


「私も行きます、師匠」


孫は反対したがアリアは私についてくるつもりのようだ。


「だめだ。危険すぎる」


「おじいちゃんがやろうとしてることも危険でしょ!」


「私は元々の身体能力と魔法で多少の無茶ができる。お前たちはここで待っていろ」


何か言われる前に駆け出す。


『身体強化』と『韋駄天』、念のために『水中呼吸』をかける。


城壁を飛び越えて窓を突き破って中へ入る。


中は一面火の海で黒い煙が大量に浮いている。


しゃがんで移動しながら正面玄関へ行く。


美しかった正面玄関は火災のせいで見るも無残な姿になっていた。焼け落ちてしまったり高熱で絵画が溶けたりしている。


(!)


煙の臭いの中にかすかに血の匂いがあった。においの元をたどると分かりずらいが飛び散ったような血痕と死体があった。


襲撃のあと誰かが放火したのだろう。簡単に消えないよう、強力な火にするために油と魔法による火をつかったのかもしれない。


炎と煙を避けながら階段を上がる。途中火に包まれた石柱によって塞がれていたが、自分を水玉で全身を覆って走り抜けた。


この熱さ、やはり魔法によるものだろう。確実に城を落とすつもりだったのだろうか。


二階は兵士だけでなく侍女らしき死体もあり、かすかな血の匂いも濃くなっていた。それでも犬ほどの嗅覚がなければ気づけないほどかすかであるが。


血はまだ新しいことから襲撃されたばかりだろう。生存者はいないのだろうか。

『気配探知』で探すと・・・見つけた。


王の間に一人だけ生存者がいる。まさか。


大急ぎで王の間へ行く。扉の前に燃えるバリケードがあったが壊して扉を開ける。


中にはやはり負傷したリリアがいた。王の座も燃えており、安全地帯が少なくなっている。


すぐに駆け寄るとリリアは腹を斬られていた。床に血だまりができている。

まだ意識はあるようだ。


「りゅう・・・さま・・・」


すぐに回復させようとする。しかし何かに阻まれて回復できなかった。


「なに!?」


「やられ・・・ました・・・・回復できないように・・・・特殊な毒薬を」


「しゃべるな」


『解毒』も試したが意味がなかった。回復できないなら止血するしかない。


「失礼する」


返事を待たず血がにじんでいるところの服を裂く。


「ちょっと」


「動くな!」


驚くのも無理はないが今は動いてはならない。強めの声で言うとビクッと震えたが静かになった。


「痛むが我慢しろ」


傷口を魔法で作った清潔な水で洗い流す。このとき消毒してはならない。


「っ!」


痛みに顔をゆがめるリリア。耐えてくれ。


次は清潔な布やガーゼを傷口に押し当てる。私の服を引き裂いて『清潔』の魔法をかけて少し強めに押し当てる。


「うぐっ」


「しばらくの辛抱だ」


最低でも五分間は押し当てなければならないがこの深さでは十分は必要だろう。


「なぜ・・・ここへ?」


「たまたまだ。・・・しゃべるなと言っただろう」


火の手が徐々に迫ってきている。

止血が間に合わなければ厳しいことになるだろう。


「りゅうさまだけでも・・」


「しゃべるな!」


なぜいうことを聞かないんだ。まだ助かる可能性は十分にある。

無理にしゃべると悪化する。猿轡でも噛ませてやろうか。するわけないが。


「少々時間がかかりそうだな。作戦を変更するか・・・」


作戦なんて考えていないがこう言っておけば少しでも安心するだろう。

バリアである程度火の手が伸びるのを防げるがバリアが消えた瞬間一気に火の手が伸びてくる。


止血が先かバリアが消えるのが先か。


・・・。


一分が数時間にも感じられる。バリアを重ね掛けして時間を稼いでいるがいつまで持つか。


さらに数分経ち、徐々に焦り始めてきたころ、ようやく血が止まった。固定して再び出血しないよう慎重に持ち上げる。


「リリア、止血できた。脱出するぞ」


「・・・」


「リリア?」


どうやら貧血で気絶してしまったようだ。オリジナル魔法『造血』もまだ効かない。


燃え盛る王の間を脱出し、脱出できる場所はないか探す。

右奥にベランダがあった。


揺れを抑えながら走り、ベランダへ出て翼を広げる。

人型のときの翼はあまり性能がよくない。


速度や最大高度が落ちるし誰かを抱えているとまともに飛べない。

だが今は落下の衝撃を抑えるだけでいい。


手すりに足をのせて下を見る。落ちても問題なさそうだ。


飛び降りて翼を動かし衝撃を最低限に抑える。リリアを見ても傷口が開いたような様子はない。


孫とアリアのところへ向かう。


ふと思ったが、リリアとアリアって名前が似ているな。

そしてリリアは前世の孫が成長した姿で私の孫がこの世界に転生者として存在している。


自分でも何を言っているのか理解できないが、なんとなく妙な気持ちになった。


「戻ったぞ」


「おかえり・・・って誰?」


「こ、この人って・・・まさか」


「そのまさか、リリア女王だ」


「女王!?」


「私がこの世界に転生して一番最初に深くかかわったのがこの女王だ。初めは女王ではなく王女だったが。とにかく、逃げるぞ」


「逃げる?」


「追手がいる」


あれほどのことをやって死ななかった場合も想定しているなんて、用心深い。


「撒いたら集合だ。場所はここ」


ちょっと無理して二人の額に手を触れて私の住処の場所とこの森のことを教える。そいて『気配遮断』の魔法を二人と自分にかける。


「幸運を祈る」


そう言って森の中へ入る。


この森のことは私が一番よく知っている。


どこに何があり、いつどこでどんな動物・魔物がいるのか、地形も把握している。


この森で全力で逃げ回る私を捕まえるのは至難の業だ。

数分逃げ回ると追手の気配はなくなっていた。


(もう終わりか)


私は薬草や手ごろな動物を狩りながら住処へ戻った。

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