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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
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手合わせ

帰ろうとしたとき、ふと気になったことを孫に尋ねる。


「水仙、この世界での名前はなんだ?」


「キャリア・ルーラ。おじいちゃんは?」


「・・・名前はない。親もいないからな」


「じゃあ冒険者としての名前は?」


「シュラ」


「シュラ・・・修羅か。格闘ってイメージにピッタリだ。あ、そうだ。手合わせをお願い」


なんだいきなり。


「手合わせ?」


「居合と格闘ってお互いにもいい影響になると思うんだ。峰打ちだから大丈夫だよ」


確かにいいかもしれない。


数日実戦をしないだけでだいぶ腕が落ちてしまうからな。


「いいだろう」


「私もやりたいです」


「アリアちゃんはおじいちゃんとの手合わせが終わってからだよ」


「はい」


木を伐採して広場を広くする。


孫が刀をだして居合の構えをとる。


私も手甲をつけ、自然体になる。


「「・・・参る」」


二人同時に接近する。


居合は太刀筋が分からないので相対する者にとって最大の恐怖だ。しかし居合は抜刀の勢いを利用するため相手に近づかなければならない。


だが私も接近しなければ戦えないので居合の弱点を孫は気にしなくてもいい。


孫が抜刀する。魔法で強化したらしく、目で追えない速さで斬り上げと斬り下げの二連撃を放ってくる。


何とか避けるが掠った。予想外の速さだ。


孫は納刀しいったん距離をとった。


さてどうしよう。

『身体強化』以外の魔法はできる限り使いたくない。


突きでもしてくれればいいのだが。


そう思ったら孫が抜刀し突きをしてきた。上段か。


峰に触らないように左手で刃を取り、手前に引く。


「!」


刃を持つ手を離さなかったため体ごとこちらに引き寄せられる。

右手で顔面に肘打ち。


「ぐっ!」


怯んだので両手で顔面を掴み膝蹴り。『身体強化』で骨は折れなかったがダメージは入らなかったようだ。


孫が後ろへ跳んで距離を取る。


「容赦ないね・・・突きは危険だな」


突きは悪手だと気づかれてしまった。


「『飛刀』!」


真空波か。


手で払う。

するとすでに目の前まで来ていた孫が私の首を斬ろうとしているところだった。

横へ飛んで避けるが孫はまた真空波を飛ばしてきた。


「ぐっ!」


避けられずにあたってしまう。


さらに追撃、しかし追撃が来ることは分かっていた。


抜刀される前に上段の前蹴りを放つ。刀で防がれるが追撃させないことが目的だったので大丈夫だ。


「お遊びはやめにしよう。・・・『奈落墜とし』」


飛び上がり足に魔力を纏わせて踵落とし。


「ぐっ!」


また刀で防がれるが私の力の方が強い。孫を中心に地面に蜘蛛の巣状に亀裂が入る。


刀を足場にバク転する。そして地面に着いた瞬間回し蹴り。

さすがに途中で別の技を放つとは予想外だったらしく吹き飛ばされる。


しかし受け身を取りダメージを抑えられてしまう。


「強いね・・・竜の力ってすごい。でも私もこのまま負けるつもりはないよ」


納刀した刀に魔力が集まる。


次の瞬間、私の目の前に孫が現れた。瞬間移動したのかと思うほどの速さだ。


そして抜刀したかと思えば体の前で鞘に刀を納刀していた。


・・・なるほどね。


何が来るか分かった瞬間。


ズババババババッ!


時間差で数えきれないほどの太刀筋と攻撃が襲ってきた。

攻撃が収まった瞬間、孫が目で追えない速度ですれ違いざまに斬り上げを放つ。


全身から血が噴き出し、倒れる。


(やるねぇ・・・)


「師匠!?」


「大丈夫。急所は外したか、ら・・・?」


最後がおかしかったのは私が孫の首筋に手刀を落としたからだ。


私は全身ボロボロで血まみれだ。


「急所をわざと外したとはいえ、私が本当に気絶したかを確かめなかったのが敗因だ」


孫は今の技で本当に勝てたかを確かめず残心もしていなかった。腕はあるが慢心もある。


「し、師匠!?大丈夫なんですか!?」


「大丈夫ではない」


出血がひどすぎて貧血になり意識が朦朧としてきた。


魔法で回復するが失った血までは取り戻せない。

そのまま私は意識を手放した。


-------------------------


「自信あったのになぁ・・・」


「でも師匠に深手を負わせられたのはあなたが初めてですよ」


孫とアリアが何かを話しているようだ。

まだ意識はあるが動けない。


「免許皆伝もらって天狗になってたのかもね。最後の技で死ななかった魔物はいなかったし、急所に当たらなくても出血多量で倒せたもん」


「あれはどういう技なんですか?」


「えっとね、明鏡止水って分かるかな?無我の境地でただ刀を振ることだけを考えるの。斬るとか倒すとか微塵も考えちゃだめ。『一閃万斬』っていう名前なんだけどね」


「え?それってSランクの・・・」


「うん。その人が作った技なの。なんかいくら斬っても死なない友を殺すために編み出した技らしいんだけど、意味なかったみたい。木っ端微塵に斬り裂いても死ななかったみたいだよ」


「友を殺すんですか?」


「それが友の望みらしいから」


「ちなみにその友というのは・・・」


「Sランクの《嘆きの歌声》ボウレイだよ。名前の通り亡霊で体がないの」


前に想像した通りボウレイは亡霊だったのか。

亡霊ならいくら斬り裂いても死なないだろうな。


「え?でも亡霊ならお祓いでどうにかなるんじゃ?」


「無理だったみたい。死にたくても死ねないんだって。まさに不老不死。《狂科学者》も研究してるけどさっぱり分からないって」


「そうなんですか・・・死にたくても死ねないって、どんな気分なんでしょう」


「すべてを失い続ける果てしない虚無感だけしか感じないだろうな」


少し体を動かせるようになったので話に割って入る。


「おじいちゃん?起きたの?」


「誰かのせいで貧血になって倒れたがようやく動けるようになった」


孫を見て言う。

峰打ちと言いながら最後は刃で斬ってきた。


孫は目をそらして吹けないのに口笛を吹く。


「友を作ってもいずれ死に、自分の存在に疑問を感じるだろうな。ふつうなら発狂してもおかしくないのに発狂も世界を呪うこともせずに生き続けられるとは・・・言葉にできないほどの忍耐力と精神力がいるだろうな。それとその死ねない冒険者だが、もしかしたら殺せるかもしれない」


「・・・え?」


「私が学んだサルマド武術極戦流の秘義なら殺せるかもしれない」


「師匠、斬っても殴っても無駄ですよ。無限の再生力で粉微塵になっても復活しますから」


「意識があると言うことは魂があるのだろう?」


「え?そりゃあそうでしょ。何が言いたいの?」


「その魂を破壊してしまえば殺せるだろう」


『破魂』は神すら殺す技だ。

いくら不老不死とはいえ魂を破壊されれば死ぬだろう。


「秘義『破魂』は神すら殺せる。魂を直接破壊する技だからな」


「そ、そんな技があるの?」


「あるさ。あとはギルドが納得してくれるかだが・・・」


「しないでしょうね」


だろうな。


大陸に数人しかいないSランク、しかも不老不死の存在を消すなんて大陸すべてが反対するだろう。


「なら暗殺すればいいじゃない」


さらっと恐ろしいことを言う孫。


確かに暗殺するのもいいが、どこにいるのか分からない。

召集命令にも応じないだろう。


「暗殺は無理でも強制召集なら会って殺せるかもしれません」


「強制召集?」


「その名の通りSランク冒険者を強制的に召集することです。総ギルドマスターの権限で年に一度だけ使うことが出来ます。強制召集はどこでなにをしていようと構わず対象を召喚するので乱用すると問題なのです」


「つまり強制召集させればいいと?」


「はい。ただ、総ギルドマスターが応じるかが問題です。一度使うと一年間は使えません。使用不可の間に何か大問題が起きてしまえば大変なことになってしまいますから。ただでさえ強制召集の一つ下の緊急召集命令も無視する輩ばかりですから・・・」


それは確かに問題だ。


「だがやってみなければ分からないだろう?江戸のギルドマスターと会って総ギルドマスターと話させてもらえないかかけあってみよう」


無理だった場合は後で考えればいい。


悩むより行動が大事だ。

ほとんどの方は分かっていると思いますが、今話に出てくる孫の技やボウレイの設定は某有名和風アクションゲーム『SE〇IRO』とほぼ同じです。

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