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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
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酒場でひと悶着

「師匠、遅い」


「すまん。いろいろあったんだ。総ギルドマスターからクリフォト暴走の鎮圧を依頼されたから北の港町へ行くぞ」


「クリフォト暴走?レベルは?」


「Ⅳということになってるが実質Ⅵだ」


「楽しそう」


アリアが戦闘狂になってしまった。育て方を間違えたかもしれない。

今では魔物の肉を平気で食べるようになったし。私のせいだが。


ギルドでも一応クリフォト暴走の鎮圧の緊急依頼が出されているが、正直言って実力がなければただの足手纏いだ。


依頼はすでにカードで受注しているとのことなのでさっさと行ってしまおう。地図を見る限り、休まず走れば今日中には港町へ行けるだろう。


「走っていくぞ。今日中には着く」


「はい」


アリアもスタミナがついてきたので多少の無茶もできるようになった。

途中で疲れても『疲労回復』の魔法をかければいい。


私たちは北門を抜けて走り出した。


-------------------------


「もう夕方か。討伐は明日にしよう」


「は・・・はい・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


やはりきつかったようだ。

『疲労回復』で回復させても潜在的な疲労や精神的な疲労は回復できない。


今日は宿を取って早く寝かせることにした。


アリアが寝たのを確認し、私は町を散歩する。港町なら海の料理があるはずだ。

ところがクリフォト暴走の影響なのか人が全然いない。みんあ避難してしまったのだろう。


唯一開いているのが冒険者ギルドで冒険者たちが集まっていた。


それと気になったのが受付や厨房にいるのがなぜがカラフルなモヒカンの世紀末風の男しかいないことだ。ここはギャングのたまり場か何かなのだろうか。


「おい、テメェも仲間か?」


緑のモヒカンが声をかけてきた。仲間とはクリフォト暴走のクラーケンのことだろう。


「そうだ」


「ランクはぁ?」


さっきからカツアゲするかのように聞いてくる。なんなんだ一体。


「Sだ。これがカード」


証拠を見せるとギルドが一気に騒がしくなった。


「ヒャッハー仲間だぁ!」


「ヒャッハーSだぁ!」


「ヒャッハー勝ち確だぁ!」


モヒカンの声が大きすぎて耳が痛い。

他の冒険者も大盛り上がりをみせている。クラーケンとはそれほど強いのだろう。


「テメェらSランクに最高の料理を作りやがれぇ!」


「ヒャッハー腕がなるぜぇ!」


ヒャッハーヒャッハーうるさい。元気なのはいいことだが。


酒場の適当な席に座って料理を待つ。


すると若い男女がやってきた。美男美女で恰好から見る限り男が剣士で女が魔法使いだろう。何の用だ?


「おい、俺たちの仲間になれ」


何言ってんだこいつは。

私は誰の下にもつかないし、こんな奴と関わりたくない。


女も勝気な笑みを浮かべている。


「断る。帰れ、邪魔だ」


それなりに強そうだが私にとっては足手纏いにしかならない。


「なんだと?」


「わたくしたちの仲間になれるという最高の名誉を自分から蹴るなんて!」


「お前らのことは知らんし俺にとっては邪魔でしかない。帰れ」


「まあ、有名なわたくしたちのことを知らないなんて、なんて哀れなのかしら」


哀れなのはお前らの方だろう。

これでも私は戦闘になったら容赦はしないのだ。


「哀れだな。俺たちとの実力差も分からないのか?」


分かってないのはお前だ。


「・・・ランクは?」


「Bだ」


Bということはやはりそこそこ強いのだろう。だが、


「雑魚だな」


この一言で二人ともキレた。


「テメェ・・・」


「リーダー、この人には教育が必要ですわ」


「やる気か?」


「なんだなんだ喧嘩か?」


「Sランクに喧嘩売るとは・・・蛮勇だな」


「ヒャッハー喧嘩だぁ!酒の肴だぁ!」


野次馬の中にモヒカンまで加わり始めた。店員としてダメだろうその反応は。

私を肴にするんじゃない。


だが迷惑なので喧嘩は買う。


「机が邪魔だからどかすぞ。全員立ってくれ」


野次馬が立ち上がり、料理などを倒さないように注意しながら『念動』で全部いっぺんに動かす。


喧嘩を売ってきた二人は少し驚いたようだがすぐに


「泣き叫んでも知らねぇぞ」


「土下座して謝るなら許してあげますわ」


「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。俺は容赦しないからな。いつでも来い、実力差すら分からない雑魚ども」


挑発すると顔を真っ赤にした。タコみたいだ。

だがちゃんと連携してくるあたり、一応Bランクなだけある。


「死ね!」


鋭い。

だが事前の動作で太刀筋が簡単に読めてしまう。


魔法も雑すぎて少し抵抗すれば無効化できる。


「避けるな!」


「じゃあ受けてやるよ」


手の部分だけ人型を解く。

すると竜の硬い鱗に阻まれて簡単に刃が折れてしまう。


「なっ・・・」


「もう終わりか?」


「まだですわ」


巨大な火の玉を放ってきた。火には水だが、実力差を分からせるためにも同じ魔法で対抗しよう。


火の玉に手をかざし、野球ボールほどの大きさの火球を放つ。速度も遅い。


「アハハハハ!その程度の火球でとめられ」


ドゴォン!


火球と火球がぶつかり爆発するがバリアを張ったので被害は出ていない。


「お前の魔法は雑すぎる。大きければ大きいほど強いわけではない。魔力を限界まで圧縮して完璧なイメージと共に放つことで強くなる。・・・次は俺の番だ」


刃が折れて呆然としている男の胸倉を掴んで投げ、背中から打ち付ける。地面に亀裂が入った。受け身をとっていなかったが、せいぜい骨が折れたぐらいだろう。


女の方には何の変哲もない水玉を作って顔をすっぽりと覆わせて窒息させる。途中で助かるために水を飲み始めたが減るより早く水を追加するため意味がない。

気絶したがそのままにしておく。ちょっとぐらいやりすぎても魔法なら治せる。


十秒ほど放置して水玉を無理矢理全部のませて二人とも回復させる。水中毒にはならない程度の量だ。どう反応するかな。


「ひ、卑怯だぞ!」


何を言っているんだ。


「お前は実戦でも負けたら卑怯と言うつもりか?魔物相手に卑怯だと言いながら死ぬつもりか?無様だな。戦いでは何でもありだ。俺は騎士じゃない。持てる力をすべて出し切ることが相手への礼儀だ」


殺し合いではないのでかなり力を抑えたが。


「もう一回だ!」


「はあ・・・」


逆恨みされても嫌なのでバキバキに心を折る必要があるな。


「わたくしも!」


「まずはお前から魔法で倒してやる」


さっき飲ませた水を操作して全部無理矢理胃から送り出す。


すると小腸と大腸が冷える。


つまり腹を壊す。


ギュルルルル~。


女が腹を押さえる。


「な、何を・・・」


「お前が飲んだ水を操作しただけだ。魔力操作や魔法操作、水玉は基本中の基本だ。だが基本も使い方次第で凶悪な武器になる。こういう風にな」


さらに操作して水をキンキンに冷やす。

そして足に『拘束』。


「や、やめて・・・」


公衆の面前で漏らすのはこれ以上ないほどの恥辱だろう。だが止めない。


異臭が漂ってくるが私や野次馬は水を冷やす前からちゃんと体ごと見ないようにしている。


・・・我ながらえげつない。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


全員沈黙。


『清潔』の魔法で異臭の元を完全に消すが『拘束』は解かない。


次は男の方だ。

男の横にいる女は涙目で顔が真っ赤でまだこちらを睨んでいる。


まだ折れないか。


男は殴り掛かってくるが避け、腕と襟を掴んで勢いそのまま頭から地面にたたきつける。痛そう。


さらに足も竜にして腹を蹴り上げ、浮いたところを後頭部と腰を掴んだまま腹に膝蹴り数発。


気絶したので女のもとへポイ捨て。


回復させたがまだ睨む。


正直言ってこれ以上殴りたくないので言葉に殺意を乗せる。


「覚えておけ。次はない」


言葉に本気の殺意を乗せるためにオリジナル魔法『感声』を即興で作った。即興のわりにうまくできたと思う。


二人ともがくがく震えて漏らした。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


どうやら私が怖すぎて全員なにも言えなくなってしまったらしい。


ていうかギルドマスターはいないのか。

いなさそうだ。


とりあえず汚物を『清潔』で消して二人を解放する。


「すまない、せっかくの酒場の雰囲気が台無しになってしまった。俺はもう帰るよ」


「ま、待った!」


声をかけてきたのは斧を背にかけたおっさんだ。


「あんちゃん、かっこよかったぜ!こいつらはな、いつも傲慢で迷惑だったんだ!成敗してくれてスカッとしたぜ!」


「そ、そうだ!悪いのはこいつらだ!あんたが帰る必要はねぇ!」


「ヒャッハァ!アニキィ!俺らの料理を食わねえなんてひでぇじゃねぇか!」


・・・。


いい人ばかりだ。


「なら、お言葉に甘えて」


絡んできた二人は黄色いモヒカンに追い出された。


その後は酔っぱらった冒険者たちと魚料理を楽しんだ。料理は絶品だった。

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