天才
二話前にアリアの容姿を書きました
武器ができるまでの三日間、アリアに簡単な武術を教えることにした。
みすぼらしい服ではかわいそうなので前にもしたように私の魔力で白い武道衣を作った。
アリアは物覚えがよく、私のアドバイスをすぐに理解し問題点を無くすのだから、天才と言ってもいいかもしれない。ただそのせいで基本を疎かにしてしまう。
「師匠、はやく強い技を教えてください」
「まだだ。基本を極めないといくら強い技を使おうが意味がない」
「でも私は基本ができてますよ」
そう言ってまっすぐ突きを放つアリア。
確かに速いし風も起きているから基本はできていると言ってもいいだろう。
だが。
「まだ極めたとは言えないな。せめてこれぐらいはできないと」
五メートルほど離れた太い木に向かって全力で超高速の突きを放つ。
すると真空波が飛んでいき木が倒れた。
「ほら見ろ。基本技でもこんなに強くなる」
前世では真空波で木を倒すなんてありえないが、プロボクサーはパンチの風圧で何本も並んだ蠟燭の火を消すことが出来る。
さすがにプロボクサーまでとは言わないが、これで基本技でも極めればかなり強くなるということが分かっただろう。
アリアは驚きのあまり口を開けていた。
「・・・師匠、そこまで極めないといけませんか?」
「いや、これはさすがに無理だな。そうだな・・・最低でも身体強化なしでも高速の突きが繰り出せるまでだな。風圧でこの火を消せるぐらいだ」
魔法で火種をだす。
だいたい直径五センチメートルほどの火だ。
「これが消せるようになったら最も単純で最も強い技を教えてやる」
「本当ですか!?」
「本当だ」
前世でも誰でも使える技を強化した技だ。多分ショボいとか言いそうだな。
その後は無我夢中で基本練習をしていた。
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「まさか一日でここまでとは」
「約束です師匠。教えてください。早く!」
アリアが尻尾を振りながら早く教えろとせがんでくる。
「分かったから落ち着け」
なんと昨日の夕方に風圧で火を消せるほど腕が上がった。こうも天才だと天狗になってしまいそうだ。
その時は私が伸びた鼻をへし折ればいいのだが。
「最も単純にして最も強い技。・・・これだ」
バァァァァン!
爆音の破裂音が鳴り響く。
「・・・あう」
アリアが倒れる。戦いならこの時点で勝負はついている。
私はとくに難しいことをしたわけではない。ただの『ねこだまし』をしただけだ。
ねこだましと言っても威力は悪魔的だ。
前世の某暗殺漫画の必殺技なのだが相手の意識の波長を読み取るなんてできないので手に『爆音』のかけてねこだましをするだけである。
これにさらに『閃光』をつければさらに強くなるだろう。
誰もがこういった単純な技を侮る。とんでもない話だ。
こんなに簡単ですぐに繰り出せる技が弱いはずがない。
それはそうと、アリアがさっきからビクビク痙攣している。やりすぎたかもしれない。
「・・・し、ししょお・・・」
「すまん、強すぎた。今回復させる」
痙攣を治す。
「どうだ?単純で強いだろう?」
「・・・」
「どうした?」
「ショボい」
やっぱり言うか。
「ショボくとも強ければいいだろう。それとも、こんな技がいいか?」
右足に火属性の魔力を纏わせて前宙し岩に踵落とし。爆発が起こり岩が粉々に砕け散る。
極戦流の『炎纏脚』だ。
「そうです!そんな技がやりたいです!」
「確かに派手だが・・・」
粉々になった岩を魔法で復元し、今度は右手に魔力を纏わせて岩を殴る。また粉々に砕け散る。
「こんな風に同じ威力で素早く繰り出せる技の方が有利だ。俺は素早くコンパクトに敵を倒す方がカッコいいと思うぞ」
「むう・・・」
「・・・・・アリア、お前は冒険者だったな?」
「?はい。Fランクです」
「そうか。そうだな・・・Cランクまで行けたら今みたいな技を教えてやる。Aまで行けたら奥義を教えてやる」
御褒美と明確な目標があればやる気も出るだろう。
奥義は極戦流の技をもとに作ったオリジナルの技だ。
「・・・もしSランクまで行けたらどうしますか?」
Sか。
どうしよう。
悩んだがこう答えることにした。
「Sランクになった時に条件を満たしていれば秘義を教えてやる」
師範は秘義『破魂』の後継者は極戦流の免許皆伝を持つものとは言っていなかった気がする。
Sランクになった時に秘義を教えても問題なさそうであれば教えることにしよう。
「分かりました!絶対にSランクまで行きます!」
そういう心意気は大事だ。
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「基本はできてるから次は捌き方やカウンターを教える。右の突きをやってみろ」
「はい」
右の突きは結構早い。小さな体からは想像できないエネルギーを感じる。
私に当たる前に手首をつかむ。
「動かしてみろ」
「・・・あ、あれ?」
動かそうとしても全く動かない。
掴んだまま左へ倒す。
「どうだ?」
「すごいです。びくともしませんでした」
「大切なのは反応速度と掴み方・動かし方だ」
その後も捌きやいなし、カウンターを教えていた。
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「いくらなんでも早すぎないか?」
たったの三日で基本とカウンター等をマスターするなんて早すぎないか?私を超える早さだ。
「師匠の教え方がうまいからですよ」
「ほめてくれるのはうれしいが、同時に心配になる。お前が天狗になりそうでな。十で神童十五で才子二十すぎれば只の人という諺があるからな」
「気を付けます」
そのうち私を超えるかもしれない。
その時はその時か。
今日武器ができあがるはずだ。
「武器をもらったらいよいよ実戦だ。こんなに早くなるとは予想外だった」
「楽しみです」
脳筋にならないよな?




