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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
三章 旅
30/121

冒険者

「いつのまにか女王になっていたとはな」


「いまさらですね」


どうやら私が道場で修行している間に王が退位しリリアが女王になったらしい。

リリアの執務室はかなり豪華になり、基本的に外出ができなくなってしまったそうだ。今までは庭ならよかったのだが、ベランダまでしか出てはいけなくなったそうだ。


かなり不満そうだった。


今はリリアが王座に座っており、立派な冠をつけたおかげで威厳が出ている気がする。中身はあまり威厳はないが。


「いま何か失礼なことを考えましたね?」


「女の勘は恐ろしい」


「否定しないんですね。竜様の正体を知らない貴族なら不敬罪が適用されますよ」


以前は私は王国に属していなかったので、屁理屈で不敬罪程度なら貴族に非があると認められれば処罰はなかった。

だが条約により私はこの国に属することになり、立場は平民なので不敬罪が適応されてしまう。私には武力はあれど権力はないのだ。


この場にいる近衛騎士は私の正体を知っているので私の態度を不快に思っても捕縛したりはしない。返り討ちにされるしリリアが止める。


「そんなことより、我はこの国の在り方に不満がある」


「なんですか?」


「選民意識の強い貴族が多いのだ。選民意識を持つものを取り締まれとは言わんが、平民を奴隷のように扱うのは最悪だ。奴らは平民あっての貴族だということを理解していないし、善良な貴族が選民意識を持つようになればそのうちこの国は腐敗する」


王都近くの貴族は善良だが、辺境になるとひどくなってくる。

平民を奴隷のように扱い、理不尽な税を課し、意味不明な制度まで作り好き放題だ。

深刻なのは男爵などの下級貴族であり、上級貴族に馬鹿にされて鬱憤を溜め、平民に八つ当たりをすることで発散する。


「実際に辺境では貴族が好き放題して、様々な不正や悪事が働かれてすべて権力でもみ消され、自分たちに都合のいい虚偽の報告をしている。貴様はこの状況をどうとらえる?」


「・・・」


「言い忘れたが、平民の既婚者を夜伽に誘い、断られたという理由で虐殺された例もある」


「!」


「そのほかには闇闘技場を造り、不正に仕入れた奴隷たちに殺し合いをさせている領もある」


「!」


「貴様はこのことに気づいていたのか?それとも知らなかったのか?どちらにせよ、このままでは取り返しのつかないことになる。ひとついいことを教えてやろう。昨日の夜、王城に数匹の『ネズミ』が侵入した」


「!」


私は呆れていた。

いくら現代のような法整備や道徳がないとはいえ、いくらなんでも酷すぎると思った。

初めは非人道的な行為に怒りを感じていたが、黙認し放置する王家に呆れてきた。


私は身分は平民なので騒ぎを起こすわけにはいかない。かといって放置するのはできない。

私にできるのは女王であるリリアに対応させるように働きかけることだけだ。


ちなみに『ネズミ』とはリリアを狙う暗殺者のことである。リリアを邪魔に思う貴族からの贈り物だ。


「貴様がこの国の存続を望むのならこの国の病の元を取り除く必要がある。最も、貴様が対応しなくても我は何も言わん。将来どうなっているかは知らんがな」


貴族が平民を虐げる国はすぐに亡ぶ。

私としてはリリアには正しい対応をとってほしい。帝国のようになるのは避けてほしい。


「・・・・・・竜様、手伝いは」


「無理だ。貴様は王女ではなく女王になったのだ。国を治める者として、一人だけに依存するのは問題だ。我に頼りすぎるのはやめて、たまには国の仲間を頼ったらどうだ?」


いつまでも私に頼られても困る。

依存されて国の仲間を頼らなくなるのは問題である。


「我はしばらく旅に出る。我が戻った時に悪化していれば、強硬手段に出るからな」


「わ、分かりました」


つまり問題がある領の貴族を全員無理矢理攫うということである。

一気に辺境の貴族がいなくなるのは大問題である。


「信じているぞ、女王よ」


そのまま私は王の間から出ていった。


-------------------------


「あの男・・・!」


「やめなさい」


「ですが・・・!」


「すべて竜様の言う通りです。この件は王家に非があります。選民意識を無くし、平民あっての貴族だと理解している貴族は王都周辺の貴族だけです。まずは秘密裏に調査隊を辺境の領地に送り、貴族籍剥奪にできる証拠を探します。そうでなくとも不正が行われたという証拠が見つかり次第処罰し、領地を治める者として不適切ならば領地を没収し、王家の直轄領とします」


「分かりました。では詳しいことを決めるために、会議を開きましょう。まずは関係者に連絡してきます」


-------------------------


(やはり冒険者が一番いい)


旅をするにあたって、旅の費用を稼げて自由な職業と言えば、やはり冒険者だろう。


見るからにギルドという印象の武骨な建物に入る。

中はたくさんの冒険者で賑わっており、併設されている酒場で酒を飲んでいたり、掲示板を見たりしている。


受付に行き、高校生くらいの受付嬢に冒険者登録をしたいと告げる。


「冒険者登録ですね。冒険者としての規則やマナーの説明はどうしますか?」


「頼む」


説明されたことを要約すると、以下のようになる。


一、冒険者はギルドのある町や国では身分が保証される

二、冒険者同士の争いは厳禁。場合によっては冒険者資格剥奪

三、冒険者にはランクがあり、G~Sランクまであり、Bランク以上は本部に認められる必要がある

四、ランクは冒険者カードで分かり、G~Dは鉄で、Cは銅、Bは銀、Aは金、Sは白金

五、冒険者には採取・調査・討伐の三種類があり、ランクアップには試験に受かる必要がある


大部分は想像していた通りだが、試験でランクが決まるとは少し予想外だ。実績で決まると思っていた。


「討伐で頼む」


冒険者の中では討伐が一番人気らしい。


「分かりました。この紙に必要なことを書いてください」


紙には年齢、名前、性別を書く欄があった。


年齢は二十歳、性別は男だが、名前はどうしよう。私は無名だ。


前世の名前は書く気にならないし、二つ名も不名誉なものばかりだった。

名前、名前・・・。


・・・前世で息子がハマっていたオンラインRPGのキャラ名「修羅」でいいか。中二病だが。


「シュラ様ですね。ではこちらへ」












-------------------------------------------------------------------------------












「これより試験を開始する」


試験監督はギルドマスターがするらしく、ガルドという執事のような白髪でモノクルをつけた老人が出てきた。

まわりには大勢の冒険者がいて、私がどこまで行けるか賭け事をしている。

ランクが低くて見下されるのも癪なので全力で行く。


ルールは魔法陣の中で召喚された魔物を討伐すればいいだけだ。


「召喚・ゴブリン」


出てきたのは緑色の肌で痩せこけ、口から涎を垂らしている貧相な防具を着た醜悪な見た目の魔物だ。

顔面にアイアンクローをするとあっけなく死んだ。力を入れなくても死んだ。


「召喚・オーク」


出てきたのは服を着て槍を持った毛むくじゃらの魔物。


突きをしてきたので柄を踏んで態勢を崩し顔面に肘打ちをする。相手は魔物なので容赦はしない。

顔面がへこみ、被害を外にださないための魔法陣に当たって死んだ。


「ほう。召喚・人喰い狼」


ちっさかったので蹴り飛ばす。


「また瞬殺か。大物が来たかもしれん。召喚・オーガ」


出てきたのは筋肉がついた鬼だった。

金棒を振り回しているが、遅いので手首をつかんで投げ、地面にたたきつける。

が、すぐに起き上がり、怒りに満ちた目でこちらを睨みつけてくる。

だが攻撃は相変わらず遅いので背後にまわり、ジャーマンスープレックスをする。

地面が陥没し、首の骨が折れる嫌な音が鳴る。


「マスター、手ごたえがない。ランクを飛ばせるか?」


「ふむ。ここまですべて瞬殺だったから、特別に許可しよう」


「感謝する」


「そうだな・・・Aはどうだ?」


すると周りが騒ぎ出す。どうも、私がそこまで強いとは思っていないようだ。

中には調子に乗るなと馬鹿にする者が現れる。


「静まれぇい!」


ガルドが爆音と言ってもいいほどの大声で周りを一喝。今のはさすがの私でも驚いた。


「決めるのは受験者だ。お前たちが決めるものではない。・・・それでシュラよ。どうする?」


「別に構わん」


「よく言った。召喚・悪魔」


出てきたのはまさに悪魔といった、額から二本の角がはえ、白目の部分まで真っ黒な男だ。


悪魔はいきなり殴りかかってくる。

右手で受け止め、カウンターとして左ストレートを放つ。

だが、Aランクの相手だけあって避けられ、至近距離で『閃光』の魔法を使われた。


まともに食らってしまい視界を奪われる。


「ぐっ!」


私が怯んだすきに悪魔は私の腹を殴り、頭を掴んで膝蹴りをしてくる。そいて魔法。

私に反撃の隙を与えず確実にダメージを与えてくる。


前にも言ったが、魔法は集中しないと使えない。このままでは私が負けと判断され試験が中止されてしまう。

どうしようかと考えていると、いい案が浮かんだ。


魔法が当たった瞬間に後ろに飛び、大げさにダメージを受けたように見せかける。

立ち上がれない私を見て悪魔は嗜虐的な笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてくる。


生半可な魔法より、一撃で倒せる魔法がいい。

集中し、悪魔が近くにきた瞬間立ち上がって魔法を放つ。


『獄炎』『拘束』


私が唱えた瞬間、悪魔を黒い炎が覆いつくした。私は巻き込まれないようすぐに離れる。

拘束により悪魔は動けない。


数秒間黒い炎が燃え盛り、炎が消えた後には何も残っていなかった。


「おお。まさか初試験でAランクとは。・・・どうする?Sランク試験、受けてみるか?」


「受けるさ」


「その意気だ。召喚・邪神の眷属」


現れたのは例えようのない奇妙なものだった。

どことなく名状しがたい何かに似ているが、正気を失うほどではない。


ただし見ていて気持ちのいいものでもないし、長く見ていると危険な気がするのでさっさと片づける。


『魔力分解』


この魔法は一定範囲内の魔力を分解することにより一切の魔法を使用不能にし、魔力を使ったスキルや能力も封じる。


ただし魔力を生命維持に使う生物や魔力を動力源にする機械があると死んだり壊れてしまう。

効果時間も短く代償は大きく使い手は数えるほどしかいない。


私がこの魔法を使ったのは邪神の眷属が魔法主体の攻撃をしてくると思ったからだ。

その読みがあたり、眷属は混乱している。


あとはもう簡単だった。


邪神の眷属は魔法なしでもかなり強かったが、悪魔と比べれば少しはましだった。

それでも冒険者からすれば素手で勝てる私の方が化け物に見えたらしい。

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