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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
二章 予兆
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秘義

「あのまま殺してくれれば良かったのにのぉ」


「戦場以外で人殺しをするのは気が引ける」


激闘の末に師範に勝利した後、師範はこのまま殺してくれと言ってきた。

なんでも長年夢見ていた竜と闘い、満足したからそのまま逝きたかったらしい。


お互いに魔力が枯渇して致命傷を負っていたので、私の魔力が回復しなければ死んでいただろうが、今言ったように戦場でもないのに人殺しをするのはさけたい。


「それに師範を殺すと面倒なことになる」


道場を管理しなければならなくなるし、免許皆伝のようなものがもらえない。

また、門下生は師範に保護された者が多いため、怒り狂って暴走する恐れがある。


「お主は甘いのう。戦場で敵に情けをかければ死ぬぞ」


「戦場ではなかったからな」


「そうかい。それより、儂に勝ったんじゃから免許皆伝をしないとな。免許皆伝として教えるのは普通は奥義じゃが、お主には奥義ではなく秘義を教えよう。この秘義は普通は一子相伝じゃ」


「一子相伝なのになぜ教える?」


「お主ならこの秘義を力に溺れることなく正しく使いこなせるだろうと思ったからじゃよ。ではいくぞ」


師範が私の額に手を当て、魔力と共にイメージを直接脳に送り込んでくる。

すべての情報が脳に入り、内容が予想外だったため私は思わず呟く。


「『破魂』・・・」


「そうじゃ。この秘義はその名の通り対象の魂を直接破壊する技じゃ。そしてこの秘義の恐ろしいところは対象を殺すだけではなく魂を直接破壊することによって、輪廻転生を防ぐことにある。つまりこの秘義で魂を破壊すれば対象を永遠に抹消できる。また、魂あるものすべてに有効なため植物や神すらも完全に殺すことができる」


恐ろしいなんてものじゃない。

この秘義だけで世界を破壊できてしまうだろう。必要な魔力も少なく、誰でも簡単に使えてしまうのだ。


「なぜこんな秘義が受け継がれている?これは禁忌を超えるものだろう?」


「儂にもわからん。ただ、極戦流の始祖はなにがあってもこの秘義を失ってはならんとだけ言っておったそうじゃ。それ以外は何も分かっておらん。始祖が誰なのか、極戦流はいつからあったのか、そしてなぜこの秘義を受け継ぐ必要があるのか・・・何も分かっておらん」


「もし受け継ぐ者がいなければどうする?」


「その時はこの秘義を記した巻物を遺すように言われておる。そしてなぜかこの秘義を記した巻物は新たに受け継げる者が現れるまで決して消えることはない」


謎だらけだ。

なぜこの秘義を受け継がなければならないのか、神すら殺せる秘義を神は抹消しなかったのか。

これにはいろいろなことが隠されていそうだ。


私をこの世界に転生させた女神ならなにか知っているかもしれないが、会う方法もない。

この世界には教会はあれどあの女神を祀っている教会がどこにもないのだ。


このことにも何かが隠されていそうだが、今は何も分からないし調べようもない。

なにか問題になる前に調べておいた方がいいだろう。


「不審なことばかりだが・・・今はどうしようもないな。世話になったな、師範。この秘義は悪用しないと誓おう」


「お主なら悪用しないと信じておるぞ。もうお主に教えることはない。ただ、一つ約束してほしいことがる」


道場を開いて秘義の後継者を探すことだろうか。


「次に会うとき、また儂と闘ってくれぬか?できれば竜の姿で」


違った。

この師範、まだやるつもりか。

この師範との勝負はまさに殺し合いなのだ。下手をすれば私が殺されてしまう。

だが、いつか師範と勝負をするのもいいと思った。


「機会があればな」


こうして私の技術を習得するつもりで始まった修業は終わった。


『破魂』か・・・。どうも嫌な予感がする。

嫌な予感ほど決まって後に的中するのだ。












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「相変わらず凄まじい書類の量だな」


「あ、竜様、来てたんですか」


私は皇帝のことが気になって王城へ来たついでにリリアの執務室にあった書類の山々を片づけていた。書類を見ると片づけたくなるのは前世の職業病のようなものだろう。相変わらずどうでもいいものばかりだ。


「皇帝のことが気になってな」


「皇帝、ですか・・・」


「どうかしたのか?」


「それが、皇帝の態度がいくらなんでもおかしいんです。「余は神である」って虚勢でもなんでもなく、心の底から信じているんです。それと妙なことをずっと言っていて・・・」


「妙なこと?」


「ええ。「使徒が来る」って」


「使徒・・・」


「心当たりがあるんですか?」


「心当たりというか、違和感のようなものだ」


使徒といえば連想するのは神である。

そして今日私が受け継いだ秘義である神すら殺す『破魂』。どうもなにかが繋がっている気がする。

もしかしたら、伝説と言われる竜に転生させられたのにもなにか理由があるのだろうか。


「違和感?」


「今日受け継いだ秘義に関係しているような気がするのだ」


「秘義?」


「言ってもいいのか聞いていないから、今は言えんな」


『破魂』とか禁忌レベルな気がする。


「謎だらけだ」


「竜様もある意味謎だらけですけどね」


「どういうことだ?」


「別に何も。それより、最近各国で不可解なことが起きているそうです。主に犯罪率が上がったりとか」


「皇帝の「使徒」と関係あるかもしれん。まあ今はどうしようもない。真相究明の手がかりもないし深刻な問題でもないからな」


この時はまだ楽観していた。


だが、この楽観がかなり後に悲劇を生むのだった。

この話で二章は終わりです。


「予兆」とか書いてたけど、たいした予兆が書けていなかったような気が・・・。

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