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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
二章 予兆
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過去の古傷

翌日、土属性の魔法使いたちが両軍拠点のちょうど中間あたりを平原にした。

魔法で木などを浮かせて遠いところに植え、穴は遠くから土を持ってきて埋める。

あとは草を生やせば完了。


これを一日かけて行い、地面から見て地平線までが平らになった。


さらに翌日、とうとう戦いが始まった。

兵士が雄たけびをあげながら突撃していき、魔法担当がサポートする。仲間を強化したり回復させたりと、攻撃役はあまりいない。


本来攻撃役の魔法使いは今のように両軍が突進する前に相手に魔法を放つのだが、周りが森のため攻撃魔法のせいで戦場が荒れ果ててしまう可能性があり今回は特に何もしていない。

そのため彼らは雑用しかしていない。それでも何らかの褒美はもらえるらしい。

雑用しかしないのに褒美をもらうとは。前世では考えられなかったな。


それより、両軍がぶつかりあい激しい戦闘が始まっていた。

昔の日本のように一対一で戦うのではなく敵を見つければ斬るという戦い方だ。


見たところ互いに勢力は互角で優勢・劣勢はつけられない。


しばらく空から観戦していたが、帝国軍側からは竜にのった魔法使いが飛んできた。飛竜兵というそのまんまの名前だ。

王国軍は飛竜兵がないらしいので、彼らの相手は私がする。


咆哮は敵味方関係なく恐怖を与えてしまうらしいのでやめておく。


さて、どう戦おうか。


まずは牽制だ。

火球を放つ。


ドォン!


避けようとしたが避けられず火球が命中し爆発、消し炭になった。よわ!

この世界の魔物とか兵って、攻撃をよけて反撃すれば大抵勝ててしまう。

そのため私は全力を出さないようにしている。私が全力を出せば国一つ吹き飛ぶだろう。


そのため常に手加減しながら戦っているため、逆に疲れる。


そんなことを考えていると、魔法使いが竜を操りながら魔法を放ってくる。

属性も様々で、連携して攻撃するため避けづらい。

体も大きいのでどうしても数発当たってしまう。たいして痛くはないのだが。


ふと気づくと、奥の方に数人集まって巨大な魔力の塊を造っていた。

他の飛竜兵も攻撃魔法ではなく弱体化の魔法を使ってくる。

速度低下、魔法耐性低下など。さすが人間、小賢しい。

おまけに硬直の魔法まで使われ、完成した巨大魔力弾が私に命中した。


・・・思っていたほど痛くないな。

殴られたぐらいの痛みと衝撃で、回復すればすぐ治った。


飛竜兵は自分たちの渾身の攻撃が通用しないことに驚いていた。想定外の出来事で動けないようだ。


『常に最悪の場合を想定していないからそうなるんだ』


そう告げてお返しとして魔力弾を放つ。

サイズもさっきと同じだが、威力は桁違いだ。

飛竜兵たちはまた驚いていた。自分たちと同じ攻撃なのに威力が桁違いなことに驚いたようだ。


『同じ攻撃でも、使い方や練度で大きく変わる。全く同じ人物が全く同じやり方で殴ったとしても、腕だけの力で殴るのと全身を使って殴るのでは大きく変わる。それと同じだ』


そう告げて初歩的な魔法で反撃する。

私は暇さえあれば魔法を扱う練習をしていたので、そこら辺の魔法使いよりは優れていると自負している。


『すべての技も、すべての基本から発展していくものだ。基本ができていればできているほど技を習得する速度や完成度がよくなっていく』


実際、基本中の基本の魔法をマスターしたおかげで難しい魔法を簡単に扱うことができた。


『なにかつまずいたときは初心に帰ることだ。初心から見れば物事の見方が変わり、今まで気づけなかったことにも気づく』


前世でも失敗をしたときは新人時代を思い出していた。新人時代はすべてが新しくすべてを吸収していた。

大変だったが、成長しているという実感が私を支えていた。


『初心に帰れば昔の記憶が蘇り、初心の心構えで取り組めばまた新たなことを身につけることができる。成長に限界はない。自分が真剣に取り組めることがあれば、人はその取り組めることについてもっと知ろうとする。その探求心は絶対に失ってはいけないものだ』


何かを求めようとしなければ、次第に心が色あせていく。

心が色あせてしまえば、人生も色あせてしまい、生きることが苦痛になってしまう。


『もしなんらかの理由で生きること、探求することが苦痛になったら、とりあえず探求をやめて生きてみることだ。なんで何もしないのに生きるのかと問われても、答えられなくてもいい。答えようのない問いなんぞいくらでもある』


色あせてしまったのなら、違う色彩で色を取り戻せばいい。


『それか歩みを止めて一度まっすぐ立って周りを見渡すのもいい。自分がどこから来てどこへ向かっていたのか、それを確認すればたいていの苦痛は消える。苦痛は自分のことが解らないから感じるのだ』


明確な道しるべや目的があれば人はその目標に向かって歩み続けられる。


『叶えようのない夢を追いかけてみるのもいい。人は夢を追いかけている間が最も幸せなのだ』


夢へ近づいているという感覚が幸福だ。


『それに・・・おや?』


気が付けば飛竜兵は全滅していた。

私が前世で学んだことを語りながら攻撃していたようだ。


偉そうなことを語りながら即死級の攻撃を放つ竜。

私が飛竜兵だったら避けるのに必死で話なんぞ聞いていなかっただろう。


まあ、老人の独り言だ。気にする必要はないだろう。

そう思っていた。


後にこの独り言が戦場にいた全員に聞かれていて『竜様、見た目は青年中身は爺』などと言われ、人生相談をされるようになるのだが、それはまた別の話。


下を見ると戦いは今だ拮抗しており、さっさと面倒事(戦争)を片づけたい私は帝国軍の拠点を潰すことにした。


リーダーは殺すより生け捕りにしたほうが効果はあるらしい。


早速帝国軍拠点の一番豪華なテントに行き、『状態保存』『一時停止』の魔法をかけ運ぶ。この二つの魔法のおかげでテントを壊すことなく、中の人はいつの間にか敵軍の拠点にいるという状況を作り出せる。


戦場の上を通った時、帝国軍兵士からは絶望の声と「そんなんありかよ!」という声が聞こえた。


王国軍拠点近くでテントを落とし、人型になり中の人を縛り付ける。

中の人はキラキラするだけのアンバランスな豪華な服を着てニヤニヤとした笑みを浮かべてワインを飲んでいた。

未使用のコップがあったのでワインを入れて飲む。


・・・酸っぱいだけだ。


酸っぱいだけで芳醇なにおいやコクなどが全然ない。

前世の安物ワインとほぼ同じだ。


そんなことより、ロープを持ってきて椅子に縛り付ける。

まだ『一時停止』の魔法は解けていないので、椅子にガッチガチに縛り付けられているのにニヤニヤとした笑みを浮かべているため、Mというよりある意味での不気味さを受ける。


さっさと偉い人を呼んで捕虜にして戦争を終わらせよう。リーダー不在で戦争を続けるほど馬鹿ではないだろう。


「リリア」


「竜様?」


「敵のリーダーを捕まえた」


「ああ、さっき飛んでたのはそれですか」


「こっちだ」


-------------------------


「な、なんで笑ってるんですか?」


「『一時停止』の魔法のせいだ。しばらくすれば勝手に解ける」


「一時停止って、一億人に一人が使える時空系の魔法じゃないですか・・・」


「・・・!?な、なんだ!?」


魔法が解けたようだ。


「捕まったんだ。貴様はもう捕虜だ」


「き、貴様!皇帝である余になんたる口のきき方だ!」


「貴様が皇帝だろうがなんだろうが今の貴様はただの捕虜だ。権力にしがみつくほど見苦しいものはない」


「な、なんだと!」


「貴様、平民のことをどう思っている?」


「なんだ急に?平民など、我々が利用する道具だろう!使ってやってるだけでも感謝してほしいものだ!」


この皇帝の人柄を確かめたかったのだが、とんでもないことを口にした。

道具だと?


私の心の中の古傷が疼く。


「平民は我々の管理がなければ生きていけん!そんなことも分からん愚民どもに、我々は存在価値を見出してやっているのだ!」


この言い方、この考え方。


前世の地方出向したときのクソ上司を思い出す。


「貴様も愚民だろうが!この世は神である余が支配するべきなのだ!ひざまずけ!」


「・・・・やめろ・・・」


これ以上、過去の古傷を、忘れたい思い出を、思いださせるな。

それに・・・・。


これ以上、()を怒らせないでくれ。

あの事件が。忌まわしい思い出が。()の本性が。


手遅れになる前に。


「貴様らなど、神である余の命令にしたがえばいい!貴様ら愚民はな、余が生きろと言えば生き、死ねと言えば死ねばいい!」


・・・。


・・・・・・もう、無理だ。


・・・・・・・理性が、消えた。

次話を主人公の前世にするか、主人公視点か、第三者視点かのどれにしよう。

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