この王女、大丈夫か?
次は普通に攻撃してみようか。
飛んで兵隊の上まで行き、踵で思いきり踏みつける。
ぐちゃ、と嫌な音と感触。
少し上げると、潰れた武具と肉塊、恐怖に歪んだ兵の顔があった。
何だろう。罪悪感より、不快感の方が強い。
やはり精神は体に依存するのだろうか。
次はブレス。
上手に焼けましたー!と、どこかから聞こえた気がした。
尻尾攻撃。
直撃した兵は即死、近くにいたものは風圧で体勢が崩れた。
残った兵も魔法を使ったりして全滅させた。
うーん、弱い。
攻撃を食らいさえしなければ圧勝できる。
もしかして、対竜兵じゃなくてただの兵だったとか?
なんにせよ、この件はリリアに報告した方がよさそうだ。
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「竜様を襲った?」
「ああ。もっとも、たいしたダメージはなかったが」
「どんな兵でしたか?」
「確か、大剣、大盾、杖、剣、ブーメランの部隊で合計千人ぐらいだったな」
「なんですって?」
「心当たりがあるのか?」
「それは竜を相手にするときの軍編です。そしてこの時に竜様を襲うとなれば、帝国しか考えられません。そして竜様の種族は知っているはずなので、おそらく精鋭の対竜特化兵でしょう」
「あれでか?」
対竜『特化』兵にしては弱くないか?
まともに攻撃を受ければ痛いが、当たらなければどうということもない。避けて攻撃すれば一撃だ。
「一撃当てれば殺せたぞ。大陸最強の国の兵にしては弱くないか?」
「竜様は色々と異常ですから・・・。竜様の種族でも会話ができるとか、王の仕事ができるとか、大商会をあっという間に潰すとか、どう考えても異常です。ヴィッツ・ヴェルナードは人並みの知能はあれど、竜様みたいにその知能を応用して役立てるなんて、普通はできませんよ」
異常とは失礼な。
「我は他の竜とは違うから参考になるとは思えんがな」
私は転生者なので、人間だったころの知識があるからそういうことができるのだ。
「でも、それなら竜様がいれば戦争には負けませんね」
「何か勘違いしていないか?」
「え?」
忘れたのか?
「この程度のことを忘れるとはな。一般人でも覚えられるはずだが」
「え、えーっと・・・」
慌てて書類が入った箱に手を突っ込み探し出すリリア。おいおい、書類を散らかすな。
散らかった書類を見てみると、
『官僚最優遇案』
『財政悪化に伴う税率増加案』
『治安維持のための一部の思想取り締まり』
『新リゾート地設立のための森林開拓』
と、心配になる法案などが書かれていた。日本三大悪法のうちの二つとそっくりなものもあるし。
幸いすべて否決になっていた。
「はあ・・・・・・『我は戦争に参加しない』、だ」
「あっ・・・」
一瞬で絶望した顔になるリリア。これはもう一つの大切なことも忘れているな。
「もう一つ大切なことを忘れているぞ」
「えっとえっと・・・・『王国がどうなろうと知ったことではない』、でしたっけ?」
「違う」
「・・・・・・『帝国が勝ちそうになったら帝国に味方する』?」
「違う」
私に対するイメージがひどくないか?
さすがの私でもそんなにひどいことはしない。
「まったく・・・『戦争時に攻撃されれば防衛という名目で戦争に参加する』、だ」
「あ。・・・すっかり忘れてました」
「おいおい・・・」
戦争という一大事に関わる大切なことだというのに。
まさか戦争の準備まで忘れてないよな。
「戦争の準備はできているだろうな?」
「ええ。軍の総帥に任せています」
「全権を譲渡してないだろうな?最低でも貴様が軍全体を管理できるだけの権限が必要だぞ」
「一時的にすべての必要な権限を譲渡しているので私にはなんの権限もありません」
「なんだと?そんなことをしたら予算を無視して編成されるかもしれないぞ」
「賠償金で補うつもりです。竜様がいれば勝つ可能性が非常に高くなるので。何か問題でも?」
むしろなぜこんなことを言われているのか分からない、といった顔だ。本当にこんな奴が女王になって大丈夫か?
「あのな、軍の管理をすべて総帥に丸投げしたら大変なことになる可能性があるぞ。最悪の場合、帝国を倒して調子に乗って周辺諸国を支配しようとするかもしれん。そうなったら終わりだ。権限で押さえつけても不満がたまるだけだ。それとまだ我が戦争に参加するとは決まってないぞ。今日襲撃されたが、まだ戦争は始まっていないだろう?」
「・・・あ」
ようやく気付いたようだ。
「まだまだ未熟だな。それより、戦争が始まるのはいつだ?」
「三週間後です」
「そうか。・・・もし我が参加しなかったら貴様はどうするつもりだ?」
「ちゃんと戦います。実際に軍も竜様の助けがないということを想定した訓練をしています」
「負けそうになったらどうする?」
「国民を周辺諸国へ亡命させます。私は最後まで国に残ります。それが王族の役目です」
「・・・そうか」
そういうところはしっかりしているようだ。




