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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
二章 予兆
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宣戦布告

(すさまじい激務だな・・・仕事量が国会のときよりも多い)


私はリリアの国の政治に興味を持ち、どんな仕事をしているのか観察していたら、あり得ないほどの書類の量がリリアの机に積み重なっていた。


内容もバラバラで、中には下っ端役員でもやれるような書類もあった。


どうやら国には省庁がないらしく、国の仕事は基本的に王か補佐役がやることになっている。

そのせいでブラック企業も真っ青な激務となっている。


(せめて総務省ぐらいはあってもいいだろ)


総務省は地方の政治を担当するので、総務省があるだけでもだいぶマシになるはずだ。


(少し手伝うか)


人型の分身を魔法で作ってリリアの執務室内に登場させる。

魔法だがなんでもかんでも使えるわけではなく、正確な知識・イメージと集中力がないとまともな魔法にならない。攻撃系は練習が必要だな。


「何者で・・・竜様?」


「すさまじい激務そうだから手伝いに来た」


「え?でも・・・」


なにか言われる前にペン、インク、書類を取って目を通して確認していく。

リリアでしか分からないものは左に、できたものは右に置いていく。

しかし本当にしょうもないことだらけだ。省庁がないだけでこんなに面倒になるとは。


しばらく書類仕事をしていて、財政の書類を見たときに気になるものを見つけた。


「リリア、この書類だが、軍事費用が他と比べて異様に高いんだが」


「あ、それは・・・」


「防衛費増額の案でもあったのか?それとも他国に宣戦布告するつもりか?この国のことはよくわからないが、国の規模、内情から考えてもこの額はおかしいぞ」


「・・・違います。宣戦布告されたため、戦争費として軍事費用が異様に高いのです」


「宣戦布告?」


「大陸最強の帝国です。皇帝が非常に強欲で世界の掌握を目論んでいます。その帝国が我が国に宣戦布告をしたのです。おそらく我が国を掌握できれば他国を圧倒できるとでも考えたのでしょう」


「そうか。災難だな」


「・・・なぜ他人事のように言うのです?」


「他人事だろ」


私はこの国と協力しているわけではない。

リリアに協力したのは私の勘違いのようなものだ。


私が今の住処に来てしばらくたった時、相互協力みたいな条約を役人から結ばされそうになったが、結んでいないので私が戦争に参加しなければならない理由はない。

戦争になれば多くの血が流れ、命が無くなるだろうが、私にはどうしようもない。


少し関わったから、という程度の理由でいちいち首を突っ込んでいては何もできなくなる。

それに私に戦争に介入する権利はない。攻撃されたら別だが。


「戦争で多くの人が死んでも、竜様はなんとも思わないのですか!?」


「戦争とはそういうものだ。それに、戦争を肯定するわけではないが、戦争によって文明が進化する。私がすべての戦争に介入していては、世界が成長しなくなる」


「本当は傷つくのが嫌なんでしょう?」


「当たり前だ。傷つくことを恐れるのは生命としての本能だ」


「・・・戦争に協力はしない、ということですね?」


「ああ。攻撃されたら別だがな。我は仕組まれたことだとしても、攻撃するのなら容赦はしない」


伝わっただろうか。

私は『協力はしないが、帝国に私を攻撃させたら私も戦争に参加する』と言った。


迂遠な言い回しかもしれないが、これぐらいは分かってほしい。


「書類はある程度かたずけておいた。左側に固まってるのはお前にしかできない仕事だ。それ以外は終わっている」


「え?あ、ありがとうございます」


私は分身を消し、住処へと戻った。











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戦争か。


どこの世界もいつの時代も馬鹿な者はいるようだ。


世界を掌握なんてできるはずがない。


一人で全世界の責任を負えるのだろうか?

無理に決まっている。


官僚時代、日本のことだけで精一杯だった。

財務省の若手に必死に頭を下げ、政治家とのパイプ作りに国会の仕事や普段の仕事だけでも大変だったのだ。


帝国の政治体制はどうなのか知らないが、恐怖政治なら世界掌握なんて夢のまた夢だ。

恐怖政治は一つの歯車が狂えばそこからどんどん狂って行き、やがて崩壊する。


世界を『掌握』と言う時点でおそらく恐怖政治の類だろう。


もしそうならば、平民の兵士は士気が低いはず。

軽く脅せば逃げるだろう。


リリアの前ではああ言ったものの、やはり人が大勢死ぬのは嫌なのだ。

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