リリア視点:竜様とは
(竜様って、不思議)
竜様の最も恐れるものを聞いて数日。
私は王城の自室で考えていた。
王都に来て一週間ほどで兄の後ろ盾を潰して私を王位継承権二位まで上げ、一位の兄は病弱で政治ができないしもうすぐ国王である父親が退位するから私が王座に就くのはほぼ確定した。
武力を使わず知恵だけで王位継承の争いに勝った。
それだけでも恐ろしいのに、武力行使したら国が一つ滅ぶだろう。
それだけの力を持っているのに、恐ろしいものがあると言っていた。
竜様はヴィッツ・ヴェルナードという最強種の飛竜で、恐れるものはないはず。
なのに自分より圧倒的に弱い人間が恐ろしいという。
それに雰囲気も不思議だ。
竜といえば周囲に圧倒的な威圧感と恐怖を齎す存在とされているのに、竜様からはそんなに感じない。なんというか、近所のおじいさんみたいに感じることがある。
よくわからない。
こういう時は、王城の図書館を利用するように、と母親が言っていた。
図書館は私の住む塔の反対側にあるためけっこう遠い。
でも竜様への道のりよりは短いか。
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「あの、ヴィッツ・ヴェルナードについての本ってありますか?」
「これはこれはリリア王女。ありますよ。ですが閲覧レベル5なので丁寧に扱い、私同伴でお願いします」
閲覧レベルとは、階級によって読める本を制限するものだ。
レベル1は誰でも制限なしで読める。
レベル2は許可をもらい、図書館内でなら閲覧が許可される。
レベル3は貴族かつ許可をもらえば図書館内なら閲覧が許可される。
レベル4で公爵以上の者が王家から直接許可証をもらって司書同伴で読める。
レベル5は王族のみが閲覧でき、司書同伴かつ本を取った位置から一歩も動かないのであれば読める。
なぜ竜様のことがレベル5なのかというと、魔物や魔族・機密情報に関することのうち、機密情報はもちろん魔物や魔族に関することも国交を結んでいても教えないからだ。
他国より多くの情報または強力な存在の情報があれば他国に対して有利に立てるからだ。
秘密にするから他国の被害が大きくなり、関係が悪くなるから教えればいいのにと思っている。
司書に案内され、地下へと進み重装備の兵が二人いる重厚な扉の個人魔力式認証を解除して入る。
中は埃一つないが本棚にはスライドドアによる暗証番号式ロック、本には鎖がつけられている。
すべて解除して、ようやく目当ての本を見つけることが出来た。
見つけたと言ってもここの本はすべて見た目が同じでページ数、重さも同じだから司書がいないと目当ての本が見つからない。
黒い革表紙の分厚い本を開き、竜様のページを探す。あった。
『ヴィッツ・ヴェルナード
背中側はすべて赤黒い鱗で覆われており、二本の足と一対の翼を持つ飛竜である。
強さは国によって判定が変わる。
ある国は祝福と呼び、ある国は厄災と呼んだ。
なぜなら味方にすることができれば最強の戦力とできるが、敵対すればほぼ勝ち目はないからだ。
また、この竜の住処には『竜汞草』という大変貴重な草が生え、薬にすれば万病即効あること神の如し、酒にすれば『竜汞酒』という神酒になる。
この酒を語るのに御託はいらん。飲めば分かる。
ただし、竜はこの草を採られるのを嫌うため採取は厳重な注意が必要である。
また、この竜が現れるということは神からの『警告』でもある。
詳しくは分からないが、人類が犯した大罪の警告か、それとも災厄の権化の復活の警告か・・・。
そしてこの竜の出現と共にごく稀に発掘される『滅怨の輝石』だが、名前に騙されるな。
この石の真の名または用途を知り、悪意をもって使用しようとする者がいるならば、問答無用で消し去り、歴史から抹消せよ。この石の真の用途は忘れ去られるべきだ。永遠に。
この文章が善意ある者に読まれることを願う』
「・・・」
なにやら不穏な言葉が羅列されている。
最初は説明や竜汞草のこと、竜汞草から作れる薬や酒のことが書かれており、飲んでみたいと思った。
酒は嗜む程度に飲んでおり、嫌いではないし、竜汞酒は非常に気になる。
しかし後半は警告が書かれており、だいぶ後に誰かが書き足したようだ。
竜様は神からの祝福でもあり、厄災でもある、か。
そして最近発掘され始めた『滅怨の輝石』。
この文章を書いた人が警告している石。
『滅怨の輝石』は除霊や供養に使われたり、怨霊やアンデッドに対して絶大な効果を発揮する武器の作成に使われている。
しかしこの用途と別の使い方があるという。
いったい何なのだろう?
知ってはならないと書いてあるが、万が一のために知っておく必要があるはず。
しかしいくら調べても分からなかった。
見落としがあるかもと思い、調べなおそう思ったとき、門番が慌ただしく駆けつけてきた。
「た、大変です!大陸最強の国、ラヴィル帝国が我が国に宣戦布告をしました!」
「・・・なんですって?」
お読みいただきありがとうございます。
この話で一章は終わりです。
二章は政治は忘れて戦争、つまり主人公が暴れるようにするつもりです。




