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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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閑話 始まりを告げる音

「アンジェラさん、あなたに違法建築の容疑がかけられています」


「だって、アンちゃん」


「誰?」


「リリアという名前で、この国の女王ですよ」


「へー」


・・・最近私が王女だと知っても大して興味なさそうに返事されることが多くなりました。この人たちだけでなく、臣下や兵士まで敬語で接するものの、どこかフレンドリーに感じます。

仲が良いことを喜ぶべきか、王女なのにあまり王女として扱ってくれないことを問題視すべきか悩んでいます。


話がそれましたが、私が今日公務を放って一夜で出現した謎の建築物へやってきたのは竜様の異世界とはまた別の異世界からやってきたアンジェラさんにこの建築物を違法に建築したとして兵士詰所に呼び出しがかかったからです。

普通なら兵士に任せるのですが、キャロルさんたちが何かしたらしく私が直接出向くことになりました。王女より一般人優先ですか。


この違法建築物は今までに見たことのない形状と素材でできていました。奇妙な形状の鉄がそこかしこに張り巡らされており、中は王城のように綺麗で清潔感がありました。ここへ来るまでも勝手に開くドアや壁に無数の穴の開いた部屋で熱い煙を吹きかけられたりして何度か迷いながらようやく中心部へたどり着きました。


そこで見たのはだだっ広い広間の中心に鎮座する大砲を巨大化し細長くしたようなものが付いた装置です。左右の壁には発行する大きなタンクがいくつもついていて、時々変な甲高い音を立てます。


「すごいねこれ。SFの研究所みたい」


「アリアさん、SFとは何ですか?」


「分かりません。説明してもらっても意味不明でした。何か、機械とやらが空を飛びまわったり宇宙へ飛んだり異次元レベルの科学技術がある空想の世界だそうです」


「空想?」


「極端に言ってしまえば異世界ってことだね。研究してるけどこの世界ってまだよく分かんないことだらけだし、説明のできないことはいくらでもあるよ。例えるなら、色盲の人に色を説明するようなものだよ」


「つまり理解できないってことだね!地球、私の世界だったら科学も魔法もファンタジーも空想として楽しまれてたからこの世界に早く馴染めたし、アンちゃんの造ったこれが何なのかは大体分かる」


「・・・地球の人たちはそんなに賢いのですか?」


「賢いかどうかは分からないけど、少なくとも娯楽と想像力においてはかなり強かったと思うよ。特に前世で私が育った国は毎日のように新しい異世界や娯楽が生まれてたよ。もちろん異世界は本の中の話だけど、それでも数え切れないほどの異世界が創られていたんだ。子供から大人まで、みんな自分が想像した異世界を妄想してたりしたんだよ」


毎日のように異世界が生まれる?本の中で?

本に使う紙は高級品だというのに、地球では誰もが本を使って異世界を題材にした物語を描くのでしょうか。それに子供ですら異世界を創造できるって・・・。

私は異世界と言われてもピンと来ません。一応王女でかなりの博識なのに。

博識の私ですら異世界を創造できないとなると、地球の人たちはどれだけの知恵を持っているのでしょうか?もし、万が一、この世界が地球に襲われたら・・・。


「話が逸れてるよ。えっと、リリア女王?違法建築ってなに?」


「ああそうでした。アンジェラさんが造ったこの建物のことです」


「建築に許可がいるの?」


「逆になぜ許可が必要ないと思ったのですか」


「え、この土地って誰のものでもないでしょ?」


「いいえ、れっきとした我が国の土地です」


「えー。今さら言われてもー」


「知らないは通じません。この建物をどうにかしてください」


「分かったよ~。せっかく造ったのになぁ」


アンジェラさんがポケットから小さな箱のようなものを取り出し、中央の装置に翳しました。すると装置から青い線のような光が出てきて装置を包み込み、すぐに床、壁、天井を光が這うようにして覆いつくしました。

次の瞬間、まるで建物などなかったように消滅しました。


「これでいい?」


「え?ええ・・・」


不機嫌な様子のアンジェラさん。違法建築したのにその態度はどうかと思いますね。


「じゃ、消したから違法建築の件も解決したよね?」


「はい」


「じゃ、ばいばい」


無理矢理追い返されました。


-------------------------


「あーあ、電力を無駄にした」


「発電したらいいのでは?」


「めんどうくさい」


「スイッチを押すだけではないですか」


「私は作業の邪魔をされるのが一番嫌いなの!」


草の上に寝転がり手足をばたつかせるアンちゃん。駄々っ子か。


さっきの違法建築物だけど、本当は消えたわけではない。あのスキャナーの中へ収納されただけだ。どうなってるのかさっぱり分からないけど、あれで収納できたらしい。

今の違法建築物を造った理由は簡単でオーディン君とやらを消滅させるためのものらしい。どう考えても過剰戦力だと思う。

なんでこんな巨大な物を造ったのかというと既に手遅れに近い状態になっているからだそうだ。アンちゃんが言うには、この世界の生命力がオーディン君とやらに吸い尽くされかけ、このままだと滅んでしまうから吸い尽くされる前にオーディン君を消滅させるために造ったみたい。


なんで消滅するのが分かったのかというと魔法と組み合わせて作った測定機器でエネルギー類を測定したときに異常な数値に気が付いたらしく、すぐに原因を突き止めた。

魔法と科学を融合させるのも驚きだけど、一瞬で犯人を特定するのにも驚いた。いったいどんなテクノロジーで特定したんだろう。


あと違法建築物の材料だけど、それはこの世界の物。地下に大量に埋まっていたから掘り出して謎の技術で増量させて材料を作った。組み立ては収納したスキャナーで行った。ものすごい技術だよね。設計図と材料、それに作動に必要な電力があれば勝手に組み立ててくれるから。


そうそう、聞くつもりだったけどリリアちゃんのせいで聞けなかったことがあるんだった。


「ねえねえ、けっこう昔の話なんだけど、『試練』で科学技術を持った敵が現れたんだ」


未だに手足をばたつかせていたアンちゃんに尋ねると動きが止まった。


「科学技術?どんな?」


「見てないから分からないけど、聞いた話ではガトリングを持ってて倒すと爆発したみたいだよ」


「ガトリング?爆発?・・・その敵の格好は?」


「コートを着てたって。後は白いローブを着てた敵もいたみたい」


「!」


勢いよく起き上がり危うくアリアちゃんと顔をぶつけそうになったアンちゃん。かなり驚いてるけどどうしたんだろう。


「それは・・・・・」


「知ってるの?」


「知ってるも何も、それはオーディン君が良く使っていた物。侵入者対策として造られたロボットで偵察や殺戮にそれぞれ特化したものだよ。それが普通に現れるってことは・・・」


「てことは?」


「オーディン君は本格的にこの世界を壊そうとしてる。それを放ったのも邪魔な人間を片付けるためかもね。・・・ねえ、他にない?」


「うーん・・・最近『クリフォト暴走』が増えたくらいかな?魔物が異様に狂暴化したりして手が付けられなくなるの」


「その狂暴化した魔物の特徴は!?」


いきなり近づかないでよ。


質問に答えていくと、どんどんアンちゃんの顔色が悪くなっていった。


「それは・・・生物兵器に使われるB-8697β型ウイルスの特徴だよ。人間には感染しないけど、動物に感染した場合は軍隊が出動するほど危険視されてるものだよ。幸いまだ完全に適合してないのかそこまで酷くはなってないみたいだけど、このまま放置していればいずれ・・・」


え、そんなに危険なの?高ランク冒険者が臨時収入感覚で鎮圧してるクリフォト暴走ってそんなに危険だったの?


「時間がない。オーディン君が本格的に世界を壊しにかかる前に対策をしないといけない。違法建築物程度では全然対抗できない。でも、もっと強い違法建築物を作るには特殊なエネルギーが・・・」


自分で違法建築物って言っちゃたよ。


こんな時にシュラがいてくれたらなぁ・・・。ハル教授は狂ったように転移陣を研究開発してるけどシュラの手掛かりはまったくない。アンちゃんにも相談したけど別次元を測定するには色々な物が足りなさすぎるとのこと。だからシュラはもう帰ってこないかもしれないし見つけることもできない。


でも、だからといって落ち込んでいるわけにはいかない。私にもできることがあるはずだ。


「特殊エネルギー・・・クリスタルジェネレーション?インフィニティオイル?ネザーコウル?」


アンちゃんはしばらく現世に戻ってきそうにない。


特殊エネルギーか・・・あ、あれ使えるかも。


-------------------------


「・・・・・ヘブンクォーツ?ドラゴニックエヴォリューション?・・・・・・」


未だにブツブツと意味の分からない単語を呟いているアンちゃんの目の前に持ってきた物を置く。


「ねえねえ、これどう?」


持ってきたのは『滅怨の輝石』の塊。最高位の竜の魔力でできた物なら何かに使えるはず。


「・・・・・・・エンダーウォート?・・・・・」


「おーい」


「・・・レジェルダイヤ?・・・」


「さっさと戻ってこんかい!」


スパァン!


平手打ちの音が思い切り響く。アンちゃんは口から血を出しながら遠くで気絶していた。ツッコミが強すぎたかな?


しばらく待ってアンちゃんが起きるのを待ち、起きたのでもう一度『滅怨の輝石』を見せる。


「どう?」


「・・・え?」


アンちゃんが目を見開いて固まった。


「・・・『界破石』」


「え?」


「これをどこで手に入れた!?なぜ持っている!?答えろ!」


「え、ちょ、待って!落ち着いて!」


いきなり両肩を掴まれて鬼のような気迫で迫られた。ものすごい大声で猫耳が痛い。


しばらく呼びかけるとはっとしたように急に肩を掴んでいた手の力が抜けていき、小さく「ごめん」と呟いた。


「いいけど、いきなりどうしたの?」


「・・・その石は・・・・・・その石は、今までに何度も世界を壊した忌々しい石なの」


「はい?」


「その石はとある方法で秘められた力を解放する。その力が世界を破壊する力。ほんの一欠片でも小国を跡形もなく吹き飛ばす威力がある。威力は指数関数的に大きさに比例し、片手の平ぐらいの大きさで世界を消滅させられる」


「どういうこと?なんども世界を消滅させたのに、なんで世界は残ってるの?」


「それがこの石の恐ろしいところで、消滅した世界は時間で元通りになるけど、数百年間は地獄のような有様の世界で生きていくことになる。別名『神罰石』とも言われてる、傲慢すぎる人間への罰として生まれたとも伝えられているんだ」


「・・・その起動方法は?」


「叩き割る。それで秘められた力が解放される」


深刻な顔つきで教えられた次の瞬間、強烈な光で目を潰され耳を劈き大地を大きく揺らす轟音が響いた。


数分待って揺れが落ち着き目が見えるようになって轟音が響いてきた方向を見ると。


「なにあれ・・・」


天に届くほどの高さの炎が立ち上がっていた。

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