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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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残りの四大天使とアヴィスと私

「痛いっつってんだろうが!優しくしろって何度も言っただろうが!」


「・・・(無言で微笑んだまま包帯で腕を締め付ける)」


「いだだだだ!血がっ!血がぁあああああ!ああああああ!!」


「うっさい、静かに治療されろ。今ので何回目だ?三十六回目だぞ。治療してやってんのになんだその口の利き方は?なんなら治療せずに悪魔どもの餌にしてやってもいいんだぞ?ア?」


「あっはいスミマセンデシタ」


喋った。あの無言で慈愛に満ちた微笑みを浮かべているラファエル様が顔や雰囲気からは想像できない絶対零度の言葉を吐いた。こいつ、天使じゃなくて悪魔だわ。俺の腕を平気で止血してくるし、下手すると腕が圧迫されて最終的に潰されたんじゃないかと思ってしまう。この天使は平気でやると確信したね。


「心の声も聞こえてるぞ?悪い子には心の治療が必要のようだな」


「え?」


「ぎゅっ」


ラファエルが何かを握りしめる仕草をした瞬間。


「ッ!!!??!!!?!」


全身が握り潰されるような感覚。痛いとかそういうレベルじゃない。魂もろとも攻撃されているような、得体のしれない何かを感じる。


「反省したかクソガキ」


「俺はガキじゃッ!!!??!!!?!」


「返事はイエッサーだクソガキ」


なんて奴だ。見た目は慈愛に満ちたまさに天使と呼ぶにふさわしい女性なのに中身はうちの鬼教官の怖に比べたら鬼教官が子犬のように思える。この天使の皮をかぶった悪魔はまさに邪神!


「二度とその生意気な心がきけないように調教してやるよ」


考える暇もなく俺の体は限界まで圧縮されて全身の肉という肉を潰され骨という骨を粉砕された。もう痛みとかそういうレベルを超えている。しかし次の瞬間は元通りだった。


「どこまで耐えられるか見てやろうじゃねえかクソガキ。ちなみに歴代最高記録は十回だ。生物の体を最も効率よく壊す方法を知っているのは戦士でも暗殺者でもない、医者なんだよ」


「嫌だ・・・いやだああああああ」


ぐちゃっ。


-------------------------


「まったく、ラファエルは治療担当という意識はあるんでしょうか・・・ま、人間が一人いなくなったところで痛くも痒くもないんですけどね」


今も治療所から何かが潰れる音と鮮血の臭い、そして断末魔の悲鳴が響いています。ラファエルは見た目に反して僕の知る天使の中では最も残虐ですからね・・・。


おっと、いけないいけない、心の声はラファエルに漏れてしまうんでした。聞かれると心臓をぎゅっされてしまいます。その程度では死にませんが苦しいのでできれば避けたいですね。


さて現在の戦況ですが天使軍が優勢のようですね、大悪魔も瞬殺でした。あれほどあっけないのならもっと早くに討伐しておくべきでしたね。


そして熾天竜ですが今のところ何もしていませんね。力を解放すればこんな戦いは一瞬で終わるのですが、そんなことをすれば熾天使が纏う炎により人間は焼け死んでしまいます。熾天使は人間に接触することを何があろうと許されておりませんから焼け死ぬことはまずないのですが。

遥か昔は特別な事情があれば熾天使だろうが人間に接触できたのですが、堕天しないとは限りませんので接触できなくなりました。熾天使が堕天使になってしまうと僕らでは手が付けられなくなり神が直接相手をする必要が出てきます。

それでも一応熾天使と同じ階級である熾天竜を下界に降りさせたのは戦力と言うのもあるのでしょうが本当は既に「欲望」を知っているからでしょうね。

普通天使は欲を知れば堕天しますがあの熾天竜は既に欲を知っており欲に溺れることがないから下界にいるのでしょう。

いえ、単に熾天竜は純粋な天使ではないから天界に来れないだけかもしれませんね。


もし熾天竜が今のように人型ではなく竜になれば何が起こるでしょう。力に振り回されるか、それとも制御できるのか。


僕はここでのんびり観戦しているとしましょう。


-------------------------


「・・・ふぁぁ。よく寝た。なんだ、まだ終わってないの?」


「アヴィス・・・」


ボクの力なら一発・・・とはいかないな。この体は弱すぎてボクの放つ魔力に耐えられない。

ボクの精神や肉体はこの体に封印されているからこの体を失うわけにはいかない。体が滅びるとボクも死んでしまう。面倒なことをしてくれたもんだよ。


「暇だから加勢するね」


せっかく目覚めたんだから暴れないと損だよね。


「『破』」


たった一文字の技。長い技名よりも短くて単純な方が良いよね。


手をかざした方向に紫の魔法陣が出現する。同時に『破』という文字が浮かび上がり、魔法陣を中心に大きな衝撃が伝わる。


魔法陣が粉々に砕け散り、残ったのはズタズタに破壊された大地と悪魔の死骸のみ。


この技の原理は至って単純。魔法陣から扇状の範囲の空間を一気に捻じ曲げるだけ。ビームも何も出ない。シンプルで強い技。


この魔法陣は空間属性の今では使い手がいない伝説の魔法陣になっているらしい。まあ確かに空間属性は等しく術式が複雑なうえに空間そのものの深い理解が必要だからね。


次は何をしようかな?あ、そうだ。


「『灰』」


炎の魔法陣が出現する。

それを悪魔が密集している場所へ向け、発動。


地獄の漆黒の炎が吹き出し悪魔を焼き尽くしていく。残ったのは悪魔だった灰だけ。


「うーん、このまま消すのもいいけど直接暴れたいなぁ。『召喚・獄剣デスゲイズ』」


目の前の地面に禍々しい形状の大剣が突き刺さる。この体では大きすぎるなぁ。ぶん回して遊ぼうって思ってたけどこの体じゃ無理っぽい。


じゃあどうするか?答えは単純。振り回さなければいい。


意味が分からない?こういうこと。


「オルァ!」


ブーメランみたいに投げればいい。


魔力を纏わせて体を強化しまっすぐ投げる。見えなくなる前に転移魔法陣の中に入れ、出口を別の悪魔の背後に出現、切り裂いたらまた転移魔法陣の中へ入れる。

そうすれば縦横無尽、自由自在に飛び回る大剣ができる。速すぎて悪魔は何が起こっているのか分からないだろうね。


・・・あれ?


おかしいな。大剣が出てこなくなった。


-------------------------


何か凶悪な大剣が飛んできたのでキャッチした。


ふむ、見るだけで恐怖を抱く禍々しい大剣だ。誰のものだろうか?


考えられるのは悪魔。この大剣にはかなりの力が宿っているから大悪魔のものかもしれない。だとしたら・・・ルシファーか?他の大悪魔は大天使に任せている。


おそらくルシファーはこの大剣を投げて私たちを殺そうとしたのだろうが、残念ながら進行方向に私がいたせいで止められてしまったようだ。それでもかなりのスピードだったから私がよそ見をしてこの大剣を見つけていなかったら瀕死になっていたかもしれないな。私は運がいい。


さて、この大剣はどうしようか。ただ返すだけではつまらない。


・・・そうだ。ちょうどいいから実験しよう。


転移魔法陣へ投げ入れて出口を適当な場所へ開き、出口の先にまた転移魔法陣の入り口を設置する。そうすれば自由自在に飛び回る大剣が出来上がる。


物は試し、やってみよう。


大剣を投槍の要領で魔力を纏わせて投げ、転移魔法陣の中へ入れる。


-------------------------


何かボクの大剣が誰かの転移魔法陣の中へ入ってるんだけど。


誰?人のものを勝手に使うなんてどうかと思うよ?


だけど転移魔法陣を使える人がいるなんてねぇ。もうボク以外に使い手はいないって思ってたけど、どうやらまだ使い手はいたみたい。

しかもあの魔法陣、ボクのより緻密で高度な術式が使われてるんだけど。術式をよく見ると、驚い屋ことに立体的な術式になっている。

ボクでさえ平面の術式が限界なのに、立体的な術式をどうやって書いてるんだろう。


って、そうじゃない、ボクの大剣を取り返さないと。

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