一方的な虐殺
今さらながら前回のサブタイトルがタイトル詐欺だという事に気づきましたので修正しました。
「これから妾はシュタットではなくなる。危険だと判断したならば、不意打ちで妾の首を取れ」
シュタットがアヴィスへ体の主導権を渡す前に言ってきた。アヴィスは敵味方の区別などなく、命あれば刈り取るのみということを何度も言われた。
「おばば様・・・絶対に帰ってきてくださいね?」
「あ、それ帰ってこないフラグだ」
ガブリエルが不吉なことを言い、オートが睨み、シュタットが「そういうことを言うでない」とため息交じりに答えた。
「別に僕達からすれば悪魔を全滅されられればいいので、人間がいなくなろうと知ったことではありませんよ」
「その通り。我らの使命はあくまでは悪魔の全滅。人間の保護など使命にないということを忘れるな」
なぜ天使は人間と仲良くしようとしないのだろう。天使軍もうなずいている。
「不協を招くなら天界に送り返すぞ」
「冗談だって」
冗談という割には本気に聞こえたんだが。
「お主ら、茶番はそこまでじゃ。アヴィスを呼ぶぞい。すでに悪魔どももこちらへ来ておる」
シュタットが低く唸るような声で詠唱を始める。
「我が身に眠る灰塵竜アヴィスよ、供物を用意したぞ。今一度目覚め、思うがままに暴れるがよい」
シュタットを包むように邪悪な気配が生まれる。
「見るものは殺戮すべきもの。足は獲物を仕留めるために動く。耳は呻く声を聞き、鼻は惨劇の臭いを嗅ぎ取るのみ」
邪悪な気配がシュタットを完全に包み込み見えなくなる。
「さあ殺せ、思うがままに」
邪悪な気配が暴走し嵐のような暴風が吹いた。
風が収まった時、シュタット・・・いや、アヴィスは俯いて狂気の笑みを浮かべていた。
「ククク、久しぶりだね・・・最近ボクの出番がなかったから退屈で退屈で仕方なかったよ」
大げさに肩をすくめてやれやれと首を振るアヴィス。
これだけならただの面倒な奴だが声はシュタットのものなのに聞いているだけで心の底から恐怖を呼び起こし、心をかき乱すような不気味な声だ。
「さて、今回の玩具は・・・まあさっきから聞いてたけど悪魔だよね?いいよ、久しぶりに暴れられるし。じゃ、やろうか」
言い終わるや否や右手を天に突き上げて魔力の弾を発射した。早すぎて見えなかった。
ヒュウウウウウ・・・。
気の抜けるような音がしたと思ったら白い閃光が視界を覆いつくした。咄嗟に『透視』を切ったものの、仮面を貫通して閃光が入ってきて視界が潰された。
ドン。
遅れて一発の空気を震わせる低い音が響いた。
「ククク、弱いねぇ・・・あの程度で三百の悪魔が塵も残さずに消えたよ」
愉悦を含んだ声で嗤うアヴィス。今のであの程度か。
魔力から推定するとあれは隕石を宇宙から落とした時の威力に匹敵するだろう。本来であればそんなものが落ちたら世界は吹き飛ぶ。しかしアヴィスは威力だけを何らかの方法で一定の範囲に押し込めた。
そんなことをすれば塵すら残らないのは当然として前世で言うマントルすら吹き飛ばして天変地異が起こってしまう。
少し考えれば誰でも分かるだろうに、アヴィスはおそらく分かっていながら明らかにオーバーすぎる攻撃をした。
シュタットが言っていたように、アヴィスは生物の生死などどうでもいいのかもしれない。何かを壊すように殺し、殺した後は何事もなかったかのように次の獲物を探す。
こんな奴が本当に満足するのだろうか?
「おばば・・・いいえ、灰塵竜。下っ端の悪魔の殲滅をお願いします。くれぐれも味方を巻き込まないように」
「保証しかねるよ。すべての物は壊れる瞬間が最も輝き美しく見えるものだからね。ボクはボクのやりたいようにやるよ。ボクを呼び出すとはそういう事だって分かっていながら呼んだんだからそれぐらいのことで文句を言われてもねぇ」
「・・・だそうです。申し訳ございませんが、灰塵竜に気をつけながら戦ってください」
危なすぎるだろ。
アヴィスはその気になれば私たちは瞬きをする間に消える。消そうと思えばいつでも消せるのだ。
アヴィスの性格を考えるならば、「面白いから」なんて理由で意図的に仲間に向かってギリギリ避けられる攻撃をしてくる可能性がある。
敵とも味方とも言えない、非常に危険な奴だ。
「ねえねえ、大悪魔はどこ?」
ああそうだ、私たちの目的は大悪魔の討伐だった。
いつの間にか悪魔の軍隊に囲まれているが、アヴィスがどうにかしてくれるだろう。
「疲れたからボクはしばらく休むね。死なないように適当にがんばれ」
・・・。
なんて奴だ。
「もうこいつのことはいないものとして扱いましょう。僕もいないものとして考えた方が楽です」
「その通り。さっさと大悪魔を見つけよう」
見つけようとは言ってもどこにいるのかが分からない。
おそらく軍の一番後ろにいるのだろうが、悪魔の数が多すぎて進めない。
・・・いや、進めるか。
私の現在の力は大きく分けて竜の能力、魔法、格闘、大鎌、そして天使の力の五つだ。そのうちの天使の能力の一つ、『地中の天国』を使う。
「死ね、大地の怒りに貫かれて。『地中の天国』」
詠唱し大鎌を地面に突き立てる。
突き立てた瞬間、地上にいた悪魔の足元から深紅の槍が出現し体を貫く。
「あ、『地中の天国』だぁ。久しぶりに見たなぁ」
「おお、確かに大量の悪魔を殲滅するには我ら天使の力を使えばいいのだったな。では我は・・・塔はすべてを貫き、地には何も残らぬであろう。『極光塔』」
なぜか知らないが天使としての力を行使するには詠唱が必要になる。無詠唱だと上手く発動しない。詠唱の内容は恥ずかしいからできれば詠みたくないんだが・・・。
ミカエルの使ったものは太陽光を一点に集中させて撃つようなものと理解すればいい。厳密に言うと光に似たなにかなのだが効果は光と変わりない。
天から降り注ぐ光の塔が悪魔を焼き貫いていく。
「あは、アタシもやる!・・・いずれ消えゆく蠟燭の炎のような人生の中で、最高の炎を灯せ。『反逆遊戯』」
遠くから陽気なラッパの音が聞こえ、上からいきなりサーカス団が降ってきた。全員が珍妙なデザインや形状の武器を持っている。
「キャキャキャ!」
「ケケケケ!」
不気味な高笑いをしながら武器を振り回し悪魔を殺害していく。彼らによって殺された悪魔は全員激しく燃え上がり、最終的に灰しか残らなかった。
「みんなやるなら僕もやりましょうか・・・夜が訪れるとき、彼らはやってくる。夜が明けたとき、そこには何もないだろう。『白波』」
現れたのは背中に黒い鉄の籠を背負った血に塗れた白衣に身を包んだ手がフック状になった不気味な人間?だった。
彼らはそこら中にある死体の破片を回収している。肉片や死体を籠に入れ、籠がいっぱいになると籠を降ろし、死体の山に手を突っ込んだ。
何をするのかと思ったら死体の山の肉片をフックで引っかけて肉団子にして、まだ生きているが瀕死の悪魔の口に突っ込んだ。
それだけでもかなりえげつないが、これから先が本番だった。
肉団子を無理矢理嚥下させ、しばらくすると肉団子を飲み込んだ悪魔の体が爆発四散した。そして新たな死体を籠に入れ、大きければ『分解』し、いっぱいになればまた肉団子を作り止めを刺す。
・・・天使が召喚したものの方がよっぽど悪魔らしい。
私が想像していた天使とは大きな違いだ。
彼ら天使はただ勝てればいい。過程がどうであろうと、同じ天使の仲間に被害が出ないのなら残虐な方法だろうと躊躇なく選ぶ。
その方法がどれほど悪魔的であろうと、非人道的であろうと、天使のルールに違反しなければ気にしない。ただ勝てばいいのだから。
分かってはいた。人間、魔族、天使、悪魔。
種族や住む場所が違えば価値観も違う。
だが・・・。
敵対している悪魔にさえ、このやり方はひどいと思うのは、甘いのだろうか。戦いで情けをかければ殺される。戦いに私情や己の価値観など関係ない。
それでも、せめて残虐な方法ではなく、できる限り苦しまずに死なせてやりたいと考えるのは傲慢だろうか。
・・・。
答えは出ない。おそらくこれからも出ないだろう。
天使のように価値観を変えれば答えは出るだろうか。
私は価値観をこれ以上変えるつもりはない。竜に転生して価値観は変わったものの、すべて変わったわけではない。人としての最低限の良心だけは持ち合わせている、と思う。
・・・今はこんなことを考えている場合ではない。今は悪魔との戦いに集中しなければ。
いつになっても戦闘の描写が上達しない・・・自分でも書いててよく分からなかったりします。




