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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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残酷な現実

「む?」


マモンの拠点へ戻ってきたが様子がおかしい。


いたるところに激しい損傷と共に血痕が付いており、何者かの襲撃を受けたことが分かる。私たちはマモンの相手をしていて城は攻撃していない。

マモンの放った武器の一部が直撃またはギルシュが暴れた可能性もあるのだが、さすがにここまでの損傷を与えることは不可能だろう。


内部はさらにひどく、廃墟と言ってもいいほどボロボロになっていた。


「誰か生きている者はいるか?悪魔でないのなら攻撃はしない」


呼びかけてしばらく待つと反応があった。奥の方だ。

反応があった場所は瓦礫で埋まっていたので撤去する。


『うう・・・』


「・・・風竜?」


見ると若葉色の竜・・・名前は知らないがギルドラドの家族の一人がいた。衰弱している。

回復魔法をかけると竜の瞼がゆっくりと開いた。


『・・・天使?死んだん?』


「死んではいない。ただ、このままだと死ぬ」


頭以外はすべて瓦礫に埋まっているので放置すると圧死するか衰弱死してしまう。


『死ぬ?うちが?』


「混乱しているのか?」


『うん』


「そうか。どこから話したものか」


少し考え、マモンという悪魔に操られていたこと、戦おうとしたときにギルシュが必殺技で気絶させて様子を見させておいたこと、マモンとの戦いが終わって戻って来たら今のような状況になっていたことを話した。


『マモン・・・・・ああそうや、うちらはあいつに操られたんやった・・・ギルシュとギルドラドは?あとモルフェルも』


「・・・」


ギルドラドのことは伝えるべきだろうか。


悩んだ末、打ち明けることにした。


「ギルドラドは・・・・・死んだ」


『え?』


「私と共にマモンに挑み・・・そして殺された」


『・・・!』


信じられないと目が語っている。

しかしすぐに目が潤み始めた。


『・・・うちらのせいや』


「・・・心中お察しする」


『ええよ・・・竜は強いけど死ぬときは死ぬんや。寿命で死ぬ竜なんてほとんどおらへん。大抵は若い時に死ぬんや・・・けど、やっぱり死んだのは嫌や』


静かに涙を流していたが、すぐに私を見つめて、


『いつまでも悲しんでおられへん。他のみんなを助けなあかん。モルフェルはうちのすぐそばにおるはずや』


てっきり何で助けられなかったのか、自分だけ生き残ったのかと責められるかと思ったがそうならなかった。

感情に流されず、今すべきことを冷静に判断する。しっかり者のようだ。


まず風竜の上の瓦礫をどけて救出し、もう一つの気配を探す。

気配はすぐに見つかった。瓦礫に埋もれている。


瓦礫をどけて出てきたのは茶色い竜だった。風竜以上に衰弱している。

回復魔法をかけたが目覚める様子はない。


『そういえばまだ自己紹介してへんかったな。うちは風竜テぺスや。こっちの茶色いのが地竜モルフェル。あんたは?』


名乗ろうとしてやめる。

神から機密保護のため正体を隠す恰好をするように言われているため、名前を言ってもいいか悩む。一応名前も機密保護に含まれるだろうが、相手が名乗ったのにこちらが名乗らないのは失礼だろう。

仕方ないので適当に誤魔化す。


「申し訳ないが私は立場上個人情報に関わることを明かすことはできないのだ。名前すら名乗らない相手を信用しろというのは無理な話かもしれないが、私は人間側に味方している」


『ああ、ごめんごめん。あんた多分天使やんな?それも高位の。こっちこそ無理なお願いしてごめんな。それより、ギルシュはどこや?』


確かにギルシュの痕跡が全く見当たらない。どこに行ったのだろう?


気になるがまずはテぺスとモルフェルの安全確保だ。


テぺスとモルフェルに触れ、『集団転移』を使う。今までも出口を探すよりこうして出た方がよかったかもしれない。


魔法陣が足元に出現し、視界が眩い光に包まれた。


-------------------------


「竜が、二頭滅んだ?それは本当か?」


「ええ、占いの結果によると四天竜のうちの二頭が滅んだようです」


「妾は占いはあまり信じんが、さすがにそれは無視できないのぉ」


「それに天竜に謎の兆しがあります。吉と出るか、凶とでるか・・・」


「天獄竜だけはやめてほしいのぉ。妾ならなんとかできるやもしれんが、ここぞという時のために力は温存しておきたい・・・むっ?」


四天竜のうちの二頭が滅んだ?


今ここにいるのはテぺスとモルフェル。そしてギルドラドは死んだから残るは消去法で・・・。


テぺスも気づいたらしい。完全に固まってしまっている。


「竜!?」


「待て、この二頭は味方だ」


「・・・誰じゃ?変な声をしおって」


「立場上、答えることはできない」


さてどうしよう。


目の前にはシュタットとオート、それに臨戦態勢の騎士がいて後ろにはショックで固まったテぺスといまだに意識が回復しないモルフェル。

そして奇妙な声のうっすらと橙色のオーラが見れる白銀のローブに全身を包み、仮面で顔を隠した男。


怪しさ満点どころか怪しさの手本だ。


「信じろと言うのは無茶かもしれないが、私たちは人間側に味方している」


「・・・・おばば様、もしかするとこの方は天竜様かもしれません」


「むう。確かに言われてみれば・・・」


一体どうやって私が天竜だったと見抜いたのか。竜になれば面影で分かるかもしれないが今の私は面影が一つもない怪しすぎる男だ。


しかし気づいてくれたのはありがたい。


「お主はシュラか?」


「さっきも言ったが、私は立場上個人情報に関わることは回答できないのだ」


「・・・何やら訳がありそうじゃな。まあ、味方というのなら助かる。見たところ二頭の竜は衰弱しているようじゃな。神殿で休むといい」


「すまない、助かる」


-------------------------


『・・・ほんまに死んだん?』


ようやく動けるようになったテぺスが呆然と呟く。


「・・・分からないが、死んだと見るべきだろうな。私たちに気づいていなくて護衛の騎士しかいない場所で嘘をつく理由がない」


『そんな』


「・・・」


『・・・なあ』


「どうした」


『・・・泣いても、ええやんな?』


竜にとって泣くのはかなりの恥辱とされる。泣くのを誰かに見られるなどもってのほかだ。

竜は生物の中ではトップを争うほどに強力な生物なので誇り高く強者を称える傾向がある。そんな竜が泣くなど他の竜からすれば足元にも及ばない弱者のすることであり、ひどいときには家族であろうと泣いたら絶縁されることすらあるし種類によっては禁忌とする竜種すらいる。


こういった竜に関する豆知識は転生した時から記憶の中にあった。おそらく駄女神の仕業だろう。


そんな竜にとって禁忌とも言えることをわざわざ言ったのだから止める理由がない。


「・・・・存分に泣け」


私がそう言った瞬間、テぺスは堰を切ったように泣き出した。


『ああああああああああああああああああっうわああああああああああああああああああああああああっうっぐっあああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーあああああああああーーーーーーーーーーー!!!!!!』


テぺスは何度も否定するかのように首を振り、頭を地面にこすりつけ、ずっと泣き続けた。


見た目からは想像できないが、彼女はまだ子供なのだ。

本来ならばまだ親の竜に世話をされているのに、両親はいなくて兄妹と共に過ごし、戦火に巻き込まれ二人の家族を失った。

それに彼女が残った中で最も年長だ。これから残ったたった一人の妹を世話しながら生きていかねばならない。

彼女はこれから姉としての責任という重荷を背負うことになる。


今だけは・・・。


今だけは、一人の子供として好きなだけ泣かせておきたかった。

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