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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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二人の大悪魔と殉職者

試練を突破したというより開戦前に無力化するという卑怯な作戦でも勝てばよかったらしく特に何もなかった。


薄暗い一本道を進み巨大な装飾がこれでもかと施された門を開ける。


中には予想通りマモンと赤い長髪の女性がいた。


「おやおや、誰かと思えば四天竜の長男・・・それに伝説の天竜ですか」


「本当にあんたのとこにはいい奴が来るねえ・・・嫉妬しちゃう」


マモンは女性とチェス?をしながらニタニタとこちらを見て笑っている。弱者を見下すかのような不快な笑みだ。


『貴様がマモンか?』


念のため聞いておく。


「なにを当たり前のことを。いかにもわたくしが大悪魔が一柱、《強欲》の悪魔マモンです」


「あたしは《嫉妬》の悪魔レヴィアタンよ」


嫉妬?まさか大悪魔がもう一人いるとは。


マモンの能力はシュタットから聞いていたが嫉妬の能力は知らない。


嫉妬・・・妬んだものの模倣だろうか?


『てめぇ・・・オレの家族をよくも・・・・!!!』


ギルドラドが激しい怒りを滲ませてマモンを睨みつけている。彼にとってマモンは両親を殺された怨敵なのだから怒りは分かる。


彼の体から炎のような魔力が漏れ出し始め。今にも飛び掛かろうとする。

私はそれを見て・・・。


『馬鹿者』


と魔法で氷水を生み出して思いきりぶっかけた。


『うぎゃひゃああああああああ冷たあああああああああああああ寒いいいいい』


リアクション芸人みたいな反応をするギルドラド。そんなに転げまわるほど冷たいか?


『なにしやがる!』


『怒りに身を任せるな。怒りに支配されては勝てるものも勝てなくなる』


『お前に何が分かるんだ!両親を殺されたオレたちの気持ちが!』


どこかで似たようなことを聞いた。


私に両親を殺された気持ちは分からない。だが・・・。


『私は両親に捨てられた。まだ幼く何の力もなかった時に放り出されたんだ。細かい所は違えど辛い思いをしたのは同じだ』


もしあの時保護団体が見つけてくれていなければ私は病気になり死んでいただろう。


『私が生きてこられたのは決して私個人の力だけではない。多くの者と関り助け合い私を捨てた両親への怨みを糧に強くなってきた』


子供の頃から何人も悪人と関わってきて道を外しかけたこともあったな。その度に友が私を助けてくれた。


・・・最終的には裏社会にどっぷりと浸かった汚職公務員になったが。


『・・・何が言いたい』


『一人で立ち向かおうとするな。お前の隣に私がいるだろう?出会ったばかりで信用できないかもしれないが、同じ悪魔と戦う者として、目的が一致している者として信頼してくれないか?これでも私はそれなりに強いと思うのだが』


一人ですべて抱え込むのは無理だ。いずれ抱えた物の重さに押しつぶされてしまう。


・・・前世の一時期の私がそうであったように。


『今は怨みは忘れろ。家族を守る者として戦え。終わったら家族に胸を張って「オレはマモンを倒したんだぞ」って言えばいい』


『・・・分かったよ』


拗ねたような返答。暗に精神が未熟だと言われたとでも思っているのだろうか。


「いいわねその関係・・・嫉妬しちゃう」


「あなたは何にでも嫉妬しますねぇ。嫉妬していないと死ぬのですか」


「言うじゃない、ここであんたを殺してもいいのよ?」


うっとりするようにレヴィアタンが呟きマモンが馬鹿にしたように言い攻撃的な笑みを浮かべて威嚇するレヴィアタン。軽い冗談の類でもなんでもなく互いに本気で言ったようだ。

この二人は仲が悪いのだろうか?


なんにせよ、ギルドラドに怨敵のマモンを任せて私はレヴィアタンと戦おう。怪我ぐらいしてくれると嬉しいのだが。


-------------------------


『そろそろ、かな』


「何を言っているんだ?命乞いか?四天竜でありながら悪魔の手先になった弱い水竜よ」


『・・・フフッ』


「何がおかしい」


『いや、これから起こることを想像すると楽しくて楽しくて』


・・・何で僕は笑っているのかな。


四方を悪魔で覆いつくされているからじゃない。狂ったわけでもない。

僕は・・・。







僕は、悪魔どもをを嬲って命乞いをさせてそのままゆっくりと殺すのが楽しみで仕方ないんだ。





悪魔はどんな声で泣き叫ぶのかな。どんな感じで命乞いをするのかな。どんな断末魔をあげるのかな。


楽しみで仕方がないよ。


・・・本来の僕ならばこんなことは考えるどころか嫌悪していただろう。

だけど、僕は僕の選択で自分を「根本から」変えた。


僕の左腕全体にある逃げ出す時に刻まれたおぞましい黒い紋様・・・『転魔融合の邪紋』。


これは呪いで対象者の魂を悪魔の魂に侵食させて乗っ取るというとんでもない呪いだ。

魂を侵食するので対象者は徐々に悪魔へと近づいていく。


思考から体まですべてが変わる。


この呪いはたとえ天竜様でも解くことはできないだろう。禁忌の中の禁忌、神すら恐れる呪いだから。


僕も抵抗はしたけれど魂という未知のもの同士かつ精神の戦いでは強靭な竜の体や能力は全く役に立たない。

僕の中に僕を侵食する悪魔の意識や記憶が混ざってきて自分が何者か分からなくなる時がよくあった。


幸いなことに最初からすべて侵食するのではなく一度融合してから侵食するので僕が僕でいられる時間があった。


ある程度融合が進んだ時から悪魔の力が使えるようになったけど使うと融合・侵食が早く進むので今まで使わなかった。


僕が包帯をしていたのはみんなに心配させたくなかったから。


それに・・・親を失ったのにさらに自分の手で家族を殺すようなことはしてほしくなかった。


だから僕は僕として、一人の竜として邪竜に堕ちる前にここで死ぬ。


ノーワンエスケープ(誰も死から逃れられぬ)


悪魔が逃げられないように結界をはる。


僕を侵食する悪魔・・・《傲慢》の悪魔、ルシファーの力の一端だ。


悪魔を殺すのに悪魔の力を借りるのは癪だけど仕方ない。


ルシファーの記憶に何故かあった命と引き換えに広範囲の悪魔を問答無用で抹消する魔法の呪文を詠唱する。


『善なき心なき意思なき者どもよ、意志ある我の声を聞け』


意思なき、というのはほとんどの悪魔が大悪魔に考えもなしに従っていることを示すらしい。


もちろん悪魔たちも僕が何をしようとするのかは分かっているようだから妨害してくる。


でも心配ない。


ノーワンエスケープ(誰も死から逃れられぬ)』で作り出した結界は作った者のすべての能力を底上げする。


元々の竜の強靭な肉体も相まって衝撃は受けるが詠唱は続けられる。


『我が命の灯火は邪を滅する光なり。我が灯火が消ゆる時、それは邪の根絶を意味する』


悪魔たちが詠唱を中断させようと躍起になって襲い掛かってくるけど耐える。


『神よ、我が声に答えよ。邪の者よ、畏れるなかれ、断罪の光を』


・・・今までありがとう、みんな。


『我が灯火、邪を滅する光となれ・・・善なる者に、祝福を』


僕の体から悪魔の世界を覆いつくすほどの閃光が放たれた。



































・・・・光が収まった時、そこには塵一つなかった。


ただ、優しく風が吹いていた。

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