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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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容赦の欠片もない

『気をつけろ。罠だらけだ』


『掛かったらどうなる?』


『遅効性の毒や急所を外すように設計されているから苦しみながら死ぬことになる。回復すれば死ぬことはないがな』


『解毒』と回復魔法を合わせればどうにでもなるのだが痛いのは勘弁だ。


『そうか、なら兄さん、犠牲になってよ』


『・・・え?』


『聞こえなかったの?兄さんがわざと罠にかかってすぐに回復するんだよ。天竜様は回復が使えるそうだし大丈夫でしょ』


『ひでーな!そういのを・・・えっと、腹黒?ゲスい?って言うんだぞ!・・・・・それよりもギルシュ、お前ってそんな奴だったっけ?昔は今みたいにひどいことは言わずに解決策を探していたはずだろ。なんていうか・・・悪魔っぽい』


『・・・っ』


「悪魔っぽい」のところでギルシュが息を吞んだのが分かった。絶対に何かを隠している。同時に目線が一瞬左腕に巻かれた包帯へ向いたのも見逃さなかった。


悪魔と左腕に何かがあるのだろう。


しかし今はマモンたちを優先するのでいったんこのことは忘れる。


私が時間はかかるが罠を解除していこうとしたらギルドラドがまっすぐ前に進んで行き見事に罠にかかり両脚に毒塗りナイフが突き刺さっていた。


『あああああ痛てえええええ』


『当たり前でしょ怪我させて殺すための罠なんだから』


『ナイフを抜け。治療できん』


『ぐぎゃあああああああ』


いちいち咆哮しないでくれ。壁や床がビリビリと揺れている。


ギルドラドがナイフを抜いたのを確認して解毒と回復をする。可哀想なのと咆哮をやめさせるために『痛覚無効』の魔法もかけておく。


『いいか、「痛覚無効」の魔法をかけたが罠にかかったらすぐに言え。痛みを感じないだけで怪我や毒は無効化されないからな』


そう事前に警告しておき進んで行く。


急所を外して串刺しにしたり四肢がもげたり爆発したり切り刻まれたりとものすごい殺意が詰まった罠をわざと掛からせながら治療し進む。今のところ魔力量に問題はない。


問題があるとすれば串刺しにされても四肢がもげても『おおすげえ、マジで痛みがない』とか言いながら笑っているギルドラドが正真正銘の化け物に見えて恐怖した。


休憩を挟みながら罠フロアを突破し広い広場へと着いた。


灯りがついているだけの何もない空間だ。上には荘厳な扉があるが封印魔法陣が施されており開けられそうにない。


どうすればいいのか悩んでいるとギルドラドが何かを見つけたようだ。


『何か書いてるぞ。読めねぇ』


『見せて。・・・これは古代語だね。僕も読めない』


『私なら読める』


言語理解は万能すぎる。


『翻訳すると・・・・「汝、闇の支配者に挑み続けんと欲するならば我が試練に打ち勝ち力を証明せよ」だな。試練を攻略すればいいのか』


試練と言えば前に銃で攻撃してくる奴がいたがああいうのだろうかと思ったが違った。


私と同じ二足歩行で手の部分が翼になっている若葉色の竜と四足歩行の茶色の地竜が上から現れた。


見るといつのまにか封印魔法陣が解けており扉が開かれていた。あそこから出てきたようだ。


『姉さんと妹か。やっぱり洗脳されてるみたいだね』


『マジかよ・・・相性悪いんだが』


『確かに兄さんの大体の攻撃は風でいなすか土の防火壁である程度防げちゃうからね。でも相手も防御してる間は攻撃できないよ』


『話してる暇はないぞ』


敵意が感じられる。


『久しぶりやなぁ、元気してた?』


若葉色の竜が関西弁で喋りだす。


『ああ、悪魔どもへの復讐心で燃えてたから元気だったさ』


『復讐?何言うてんの。マモン様に復讐するとか意味わからんわ。マモン様はウチらに力をくださったんやで?それに人間なんて言う劣等種に関わるより悪魔に協力した方が得やがな』


『・・・・姉ちゃんの言う通り』


茶色の地竜が短く賛同する。


『やっぱりギルシュの言う通り洗脳されてたか!待ってろ、すぐに助けてや』『「氷結渦流滅槍・二連」』


私とギルドラドの頬(竜に頬はないが)を掠めて氷の槍が床を風圧で抉りながら二頭の竜に飛んで行った。

踏ん張って耐えるが氷塊の先端が体に刺さった。


『ぐえっ』


『・・・』


氷の槍は見事に二頭の竜に命中し貫通はしなかったが砕け散った。若葉色の竜は変な声を出し茶色の竜は無言で倒れた。


『・・・』


『・・・』


私とギルドラドが信じられないような物を見る目で振り切った姿勢のまま硬直しているギルシュを見るとギルシュは悪びれもせずに


『先手必勝』


とだけ答えた。


・・・・確かに相手の準備が整う前に攻撃して勝つのは戦略として認めるが。私もいつも「たった一つの命を賭けて戦うのだから戦場に卑怯などない」と言っているが。


・・・・・・家族に対して容赦の欠片もなかったな。死なないようにはしているが瀕死の状態だ。


『やっぱ悪魔みたいだな』


『・・・回復と洗脳の解除をお願いできますか』


ギルドラドを無視して私に回復を要請している。興味ないというよりは悪魔に関することを詮索されたくないからのように感じる。


すべて終わってから聞くか。


まず回復させて洗脳を解く。


このタイプの洗脳はコンピュータウイルスのようなものだから元凶と元凶が生み出した支配の根・・・不正なプログラムを消去すればいい。


ここをこうして向こうから引っ張って組み合わせて一緒に消して・・・隠れてるから軽く障害物を動かして・・・。


『二人とも解けたぞ。根深い洗脳だったからしばらくは後遺症が残るかもな』


『ありがとうございます。僕は二人の意識が回復するまで見張りをしておきます。・・・どうかマモンを・・・』


『オレたちに任せな!ちゃっちゃと殺してまた家族一緒に暮らそうぜ!』


『・・・・・・・・・そうだね』


『?何か悩み事か?悪魔だな!安心しろ、マモン以外の大悪魔も殺してやるよ!おらっ行くぞ!』


・・・。


ギルドラドは何というか、楽観的で物事を深く考えないようだ。


ギルシュはため息をついて二頭の竜に向き直った。


私もギルドラドを追うとしよう。


-------------------------


『・・・家族一緒に、か』


その中に僕はいないんだろうな。


みんなから見て僕はどう見えてるのかな。


薄情者かな?家族に対して容赦のかけらもなかったし。やはりもうみんなと関わらない方がいいかも。


・・・。


天竜様はもう気づいてるんだろうな。僕が何かを抱えていることに。


どう考えても怪しいのに兄さんのように疑わないのは常識的に考えてあり得ない。


兄さんはそうと決めたら一直線だからな・・・ちょっと熱血というか猪突猛進というか。


正直うざいと思ったこともあるけど本当はうれしかった。大勢でわいわいするのが苦手な僕にとっていつも構ってくれる兄さんは好きだった。

姉さんや妹もそうだったから家族のことが大好きだ。


でも・・・。


家族といられるのは今後もうない。


さっきのように洗脳されていたとはいえ家族全員がそろった時が僕にとっての最後の家族全員と過ごす時間だっただろうな。


そう思うと悲しくなるけど・・・もう覚悟はできている。


『兄さん・・・みんなをよろしくね』


昔はいつも小さなことでも大騒ぎして周りを巻き込んでいた兄さん。今はマシになったけど他人を巻き込むところは変わっていないな。


『うう・・・』


姉さんが目を覚ましかけている。そろそろかな。


立ち上がり、悪魔の気配がない事を確認し広場から出る。


『さようなら。僕は最期の仕事をするよ』


僕は左腕の包帯をすべて外して力を解放した。


-------------------------


『・・・?』


『どうした?』


『いや、気のせいだ』

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