一人目の再会
『えい』
「やっ、やめっ」
悪魔が何か言おうとしてたけど無視する。殺しに来たんだから殺されても文句は言えないでしょ。
僕が投げた特殊な槍のせいで悪魔を木端微塵にしたあと直線上に大地が抉れてそこから氷塊が突き出ている。これだけなら幻想的で綺麗だな。
こうやって物を投げられるから僕のようなガイアは良いとよく思う。
飛行能力はみんなに劣るけど武器を利用した破壊力は抜群だ。
なんでこんなことになっているのかというとマモンとかいう悪魔に支配される前に逃げたからだ。姉さんと妹も助けようとしたけど手遅れでとてもじゃないけど僕一人の手には負えなかった。
だからマモンの趣味の悪い城から抜け出して現世へ戻ろうと出口を探しているけど一向に見つからない。そして悪魔どもが僕を探して常に襲い掛かってきてるから休む間もない。
僕は戦闘に特化しているから悪魔どもを一網打尽にして倒せてるけど体力にも限界が見え始めてきた。
それにもうある理由から出口を探すのは諦めた。
僕のやることは誰かがここへ来たときに苦労しないよう悪魔の数を減らすことだけだ。
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「四天竜ねぇ、知ってるわぁ」
「何か知っていることはないか?」
「ええ、マモンが連れてきてたけどあいつ嫌いだったから無視したわぁ。ルシファーに支配されてなければどうにかしかして助けられるはずよぉ」
「なるほど、感謝する」
「ご主人様ぁ」
立ち去ろうとするとアスモデウスから声をかけられた。
振り返ると期待に満ちた目でアスモデウスが私を見ていた。またか。
「無理だ」
それだけ言ってさっさと立ち去る。落胆するような声が背後から聞こえた。
『よし、じゃあマモンの野郎をぶちのめそうぜ!』
「早まるな、作戦が何もない」
無謀に突っ込んで返り討ちにされたら目も当てられないどころか最悪ギルドラドがまた支配される。どの程度強力な洗脳なのかは分からないが私は頑張れば耐えられる自信がある。
「マモンのぉ、あの悪魔は少々厄介じゃ」
「悪魔は全員厄介だろう?」
「それはそうなのじゃが、マモンの能力《強欲》は欲した物を一瞬で入手できるんじゃ」
「・・・・・・ああ、そういうことか」
『どういうことだ?』
ギルドラドだけは意味が分からないようだ。
「例えばマモンが魔剣を欲したらすぐにマモンの手元に現れるってことだ。槍を欲せば槍が、薬を欲せば薬が現れる」
青い狸みたいな猫型ロボットの四次元〇ケットの強化版のようなものだ。
「七美徳の騎士は連れて行くのか?」
メタトロンみたいなやつがいたら嫌なんだが。
あいつは今は旅行してるが他の七美徳騎士も旅行する羽目になるのは避けたい。
そもそも騎士団トップのくせに仲間同士で争うとかトップとしてどうなんだ。
「それなんじゃが、七美徳の騎士は解散したんじゃ。七美徳の騎士は七人のうち誰か一人でも不祥事を起こせば解散することになっておる。大体の者は納得するかメタトロンを恨んでおるがお主を逆恨みしておる者もいる。気を付けることじゃ」
もう七美徳の騎士とは関わらないでおこう。
『ひゃあ、我慢できねぇ!マモンにカチコミじゃあ!』
いきなりギルドラドが不良のように叫んで飛んで行った。家族が心配なのだろうがせめて作戦ができるまでは待ってほしかった。
しかし、勢いで行動すると良い結果に向かうこともある。特に若者の勢いはかなり強かった。
ここで勢いを止めるより勢いに任せて襲撃した方が面白そうだ。
「すまんな、作戦は考えなくていい。ギルドラドと共にマモンへ襲撃する」
「お主も竜じゃのう、戦うのが好きなようじゃ」
苦笑いと呆れが混ざったような表情で「行ってこい」と言われた。
白銀に進化した竜で暴れてみようか。
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『一人で行くな』
『なんだついて来たのか』
『面白そうだからな』
悪魔の世界へ通じる穴を探し飛ぶ。
しばらく飛び続けてようやく見つけた。空間が裂けて悪魔がいる赤い世界が見える。
『準備はいいか?』
『ばっちりだ』
『じゃあ行くぞ』
同時に裂け目へ突入し近くにいた悪魔を殲滅する。
『死ねぇ!「煉獄嵐」!』
ギルドラドの全身が炎と化し大きく円を描くように飛ぶ。
すると炎でできた巨大な竜巻ができ、竜巻の中から現れたギルドラドが尻尾で竜巻を叩いた。
叩かれた竜巻は悪魔が密集していたところへ一直線に進んで行き大地を焼き尽くし、炭すら残らなかった。
『なかなかの威力だな』
『だろ?弟には負けるかもしれねぇがな』
これを超える威力を出す弟・・・戦い方にもよるが苦戦するかもしれないな。
残った悪魔を適当に倒しながら悪魔の世界で二十分ほど飛び回っていると奇妙な痕跡をいくつか見つけた。
地面が一直線に深く抉られている。
『これは・・・』
『知っているのか?』
『ああ、こんな大地を地平線まで一直線に抉れるのは弟しかいねぇ。もしかするとまだ支配されてないのかもな!』
喜んではいるがもし既に捕まって支配されていたらかなりの脅威になる。
こんな威力の攻撃を一発でも食らえばひとたまりもない。
しかし、支配されておらず協力してくれるのなら心強い。
『ギルシュー!どこだー!?』
『・・・・兄さん!?』
遠くから声が聞こえる。
ギルドラドが猛スピードで声がする方向へ飛んでいき私もついていくとかすかに冷気を纏う直立二足の背中に大きな翼がある水色の鱗を持つ竜がいた。トカゲが巨大化して二本の足で立っている、といったほうがいいだろうか。
人間で言う左腕には包帯のような物が巻かれている。
見た感じ怪我をしている様子はないし痛がっているようにも動かしずらそうにしている様子もない。
何のために巻いているのだろう。
『・・・あの、あなたは?僕はギルシュと言います』
兄弟の話が一段落したのか私の番になったようだ。軽く説明しておくか。
『私はシュラと呼ばれている。とある事情でこの世界に来て人間と共に悪魔と戦っていた。ある日、夜の空を飛んでいたら暴走したギルドラドに襲われて助けて今はギルドラドの家族を助けることになった』
『・・・兄さん、また知らない竜に迷惑かけたの?』
ギルシュと名乗った水色の竜がギルドラドをジト目で見る。ギルドラドは「うっ」というだけで何も言い返さない。また、ということはいつも誰かに迷惑をかけているのだろう。
そして言い返さない、というよりは言い返せないようだから何を言っても論破されているのだろうか。
『そ、そんなことより妹たちを助けるぞ!』
『逃げた・・・』
・・・ギルドラドが熱い鉄ならギルシュは冷えた鉄だな。兄弟間で温度差がある。
『・・・いいよ、みんなを助けたいのは僕も同じだし』
何か引っかかるような言い方だが・・・何か家族を助けることだけは協力する、と言っているように気負える。
聞こうとしたがギルドラドが一人で行ってしまいギルシュが追いかけたので聞けなかった。




