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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
一章 王位継承の争い
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転生してください

「おじいちゃん・・・ばいばい」


目の前で泣きながらも笑顔で別れの挨拶をしてくれた少女。


私の孫だ。


「今までありがとう・・・父さん」


静かに微笑んでいる男性。


私の息子だ。


ほかにもたくさんの家族や親戚、知人が見送ってくれている。


ある者は泣き、ある者はありがとうと言い、ある者は必死に泣くのをこらえている。


こんなにたくさんの人に見送られるなんて、私はなんという幸せ者だろう。


私は子供のころに親が夜逃げし、親戚もいなかったので孤児になった。


餓えてさまよっていた時、保護団体が見つけてくれて孤児院で育った。


そこからは色々と大変なことがあって、私はキャリア官僚になった。


総務省で出世していき、かなりいい役職に就けた。


そして家族もでき、こうして老衰で死んでいく私を見送ってくれている。


これ以上の幸せはない。


さて、そろそろ寝るか。


みんな、いつか私の元へ来たときは思い出話を聞かせておくれ。


私の意識はだんだん遠ざかっていった。





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ふと目を開けると、目の前に純白の法衣に身を包んだ美女がいた。


天使様?


「天使様ではありません。私は女神です」


女神様?


「はい、そうです。ふつうは部下の天使がお迎えに来るのですが、少し事情がありまして私がやってきました」


女神様がお迎えに来るとは、私は最高の幸せだ。


「何か勘違いしてませんか?お迎えに来たわけではありません」


なんですと?

なら、私を地獄へ送ろうというのだろうか。

心当たりがないと言えばうそになる。

官僚になった時から『事件屋』という裏社会の人間と行政の裏仕事をしてたから、それが原因だろうか?


「違います。そもそも地獄へ送るつもりなら私ではなく悪魔が来ます。私が来たのは、あなたを異世界へ『転生』させるためです」


転生?


「ええ。私たちにもノルマがありまして。私は異世界転生の仕事をしており、もうすぐ期限なのにあと一人の魂を転生させられず困っていたのです」


転生って、全員していると思うが。


「あなたの考える転生はスピリチュアルと言われるようなものです。私の言う転生は前世の記憶を持ったまま、別次元に位置する異世界へ転生してもらうというものです」


興味深いが、私はこの人生に満足している。

やり直したいと思うこともあるが、最高に幸せな最期をむかえられたのだ。

未練も何もないから、このまま成仏させてくれ。


「それは困ります!もう本当に時間がなくて、あなたが最後の望みなんです!あなたが転生してくれないと、次の人事で左遷させられるんですぅ!そうなったらお終いなんですぅ!」


官僚の世界みたいだ。

小さなミスでも自分の能力評価に大きく影響し、それだけで出世コースから脱落したりする。

だから気持ちも分かるが、そう簡単にはいとは言えない。

転生したらどうなるかを説明してもらわないと。


「ええとですね、まず転生先なんですが・・・科学のかわりに魔法が発展した世界です。空気もきれいですし、過ごしやすいと思います。あと転生先の種族ですが、竜です。二足歩行で手が翼の竜です。モン〇ンのリオ〇ウスにそっくりな竜です」


竜?人間じゃなくて?


「いろいろあって人間は定員オーバーです。ただ、この竜は最強種ですよ?」


人外転生か・・・。


まあ、ふつうに暮らせるのなら何の不満もない。


「ありがとうございます!助かりました!お礼に・・・そうですね・・・コミュニケーションが出来れば便利そうですから『念話』と『言語理解』、あとは・・・」


まてまて、なにをしている。


「なにって、お礼ですけど・・・」


変なものはつけないでくれ。


「変なものではありません。普通に暮らすために必要なスキルを与えているだけです。・・・あ、『魔導を極めし者』と『人化の術』をつけましょう」


頼むから、本当に余計なものはつけないでくれ。

多すぎても使いこなせないだろうし、身に余る力は災いの元だ。


「そこまで言うなら・・・」


ありがとう。


「では、そろそろ転生させましょうか。起きたらまずは良いところに自分の住処を作ってください。では、あなたに神々の加護があらんことを」


複雑な印を胸の前で結び、祈りをささげる女神。


神秘的な印象を受けるその姿を見ていたら、急に意識が遠のいていった。

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