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第3章 立ち聞き

 その日の放課後、あたしは同人誌のバックナンバーを借りようと思い、部室へ行った。ドアを開けようとすると、中から男子部員たちの話し声が聞こえてきた。

 

「新入部員の立花エリカちゃんって、かわいいよな」

「あっ、抜け駆けすんなよ。俺もエリカちゃん狙ってるんだぜ」

「だけどよ、いつも一緒にいる朝倉って、地味でさえないよな。こないだ出してきた小説だって、本当にひどかったもんな。俺、途中で読む気なくしちゃったよ」


 あたしは衝撃を受けた。恥ずかしさと悔しさで、体がぶるぶると震えた。するとやがてまた別の男の人の声が聞こえてきた。


「そうかな。あいつけっこうセンスあるよ。文章とかプロットの組み立て方とか技術を身につければ、すごくいい小説が書けそうな気がする。それに顔だって、あいつけっこうかわいいと思うけどな」


 三島先輩の声だ。あたしはどきどきしながら、ドアに耳を押しつけて話の続きを聞いた。


「マジかよ。うそだろ」

「いや、俺はどっちかというと立花のような美少女タイプよりは、朝倉のような愛嬌のある顔の方が好みなんだ。それにあいつ、不器用だけど何でも素直に一生懸命やっててさ、そんなとこがなんか、かわいいんだよな」

「おまえも物好きだな。まあ、俺としてはおまえがライバルでなくてよかったよ。せいぜいがんばりな」


 三島先輩があたしのこと、かわいいって言ってくれた。あたしは気づかれないように、忍び足で部室の前から立ち去ったが、心臓の鼓動が速くなり、顔が赤くなるのを感じた。

 

 あいつけっこうかわいいと思うけどな……か。あたしは三島先輩の口まねで何度も言ってみた。その晩、あたしは興奮して眠れなかった。そしてとうとう、ある決意をしてベッドから起き上がった。

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