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第六話:謎の生物との邂逅

第六話

 黒金さんがばれることもなく、とくに授業中にあてられてしどろもどろになることもなく、空から女の子が落ちてくるなんて絶対にありえない。

 まぁ、普通の日常を終えて俺は放課後、スーパーへと向かっている。

「約束したコーヒーゼリーを忘れるんじゃないぞ」

「わかってますよ」

 俺が今通っているところはたまに不審者がうろついていると聞くところだ。男を襲うなんて話は聞いたことがないので大丈夫だろうが、でも、白銀がもしも家から出た場合は一応あれも女の子だし………いや、頭に光のわっかと背中に白い翼をもっている人物は十分不審者だな。通報されないように注意しておいたほうがいいだろう。

「おい、蒼疾」

「どうしたんですか」

 まぁ、黒金さんはこのサイズだからゴキブリか何かと間違われるぐらいだろう。だから注意しなくてもいい………

「向こうから子供が走ってきたぞ」

「え」

「うわぁぁぁぁぁん」

 黒金さんが言った通り、子供が一人走ってきた。小学生の上級生といったところか。男の子、元気がよさそうである。

「ひぐっ」

「え、ええっ」

 俺の後ろに隠れて震えている。見た目ガキ大将なのになんでこんなに泣いているのだろうか。

「い、一体どうしたんだ」

「えぐっ、こ、怖いお姉ちゃんが………」

「なるほど、変質者か………」

 黒金さんがそういうと俺に指示を出す。

「よし、子供はわたしが隠しておこう。お前はここにいて変質者がどういったやつか見ておくんだ」

「わかりました」

 黒金さんが子供の上に飛ぶとあらまぁ、不思議。あっという間に子供の姿が掻き消えた。ちなみに、黒金さんは近くの物陰に隠れている。

「来るぞっ」

「ど、どんな変質者なんだ」

 ガキ大将風の子供は怖いお姉さんが来ると言っていた。俺はそれを見届けよう。大丈夫、こっちには黒金さんだっているのだから。



ヴゥーン、ヴゥーンヴヴヴヴーンッ



「え」

 角を曲がってやってきたのは俺の通っている高校の女子制服を着た黒髪の女の子だった。だが、その手にはチェーンソーが握られており、うなりをあげている。

「すっごい変質者だーっ」

 俺は叫んでしまった。そして、当然のように相手はこちらへとやってくる。瞳は泳いでいるわけでもなくしっかりとした力をもってして俺を見ている。目をそらしてはいけない、俺の本能がそう叫んでいた。

「ああ、ちょっとそこの君」

「へ、お、俺ですか」

「ああ、君以外に誰かいるのかい」

 たぶん、貴女が追いかけていた小学生がいますとは言えなかった。これはガキ大将の子供でもおびえるな。

「で、俺に何か用ですか」

「ああ、そうだったそうだった。小学生を見かけなかったかな。あたしが公園で儀式をしているところを見てしまったんだ。あたしの友人のペレッペ星人は異様に恥ずかしがりやでな、だから、友達になってもらおうと思ったんだ」

 すっごく怖い人だっ。ああ、春だからか。春だからこんな人が………と、ともかく、ここは穏便に話を終わらせないと俺の身が危険だ。

「え、えっと、お探しの小学生ならあちらのほうに走って行きましたよ」

「本当かぁ、ここら辺からにおいがするんだけど」

 子供が隠れている空間あたりに顔を近づけようとするので俺はその間に入り込む。

「きっと、俺の匂いですよ」

「そうか、まぁ、いい。わかった、ありがとう」

 そういって春の嵐は過ぎ去った。手なれたようにチェーンソーをうならせ始めたのが本当、怖かった。

「………く、黒金さん、見ましたか」

「見たぞ」

「いやぁ、すごい人でしたね」

 悪魔がいるのなら本当にそのペレッペ星人とやらはいるかもしれないなと俺は思いながら黒金さんのほうを見る。

「よし、坊主。お前はもう帰っていいぞ」

「う、うん。ありがとうございました」

 最近の生意気なガキでもちゃんとお礼は言うんだな~。そう思いながら見送っていると非常に険しい表情で黒金さんは先ほどの危ない人が去っていたほうを見ていた。

「どうかしたんですか」

「そうだな。今日は家に帰ろう。白銀と蒼疾に話しておきたいことがある」

 やけにシリアス顔だった。うん、というか、悪魔が帰ろうというのなら帰ったほうがいいのだろう。



――――――



「ただ今、白銀」

「お帰りなさい」

 白銀は丸まっていた。白いボールだな。

「さて、早速話をしよう」

 この屋根の下に住んでいる者たち、まぁ、三人だけだが、テーブルについて黒金さんのほうを見る。

「一体、どうしたんですか」

 白銀は理由がわからないようで俺のほうを見るが、当然、俺もわからない。

「白銀よ。実は本日の放課後、蒼疾が勇者と邂逅を果たしてしまった」

「え、ゆ、勇者って」

「そうだ、天界にも伝わっているであろうあの勇者の生まれ変わりだ」

 白銀の身体が震え始めていた。どのくらいの揺れかというと一瞬だけ地震が来たんじゃないかと思わせるほどの揺れである。

「おい、お前大丈夫か」

「だだだだだ、大丈夫ですよ」

 そういってどこからかラヴアーチャーを取り出して身を低くする。

「く、来るならどこからでもい、いいですよっ。返り討ちにしますからっ」

 目がやばかった。何か見えない幻覚に対して戦っているような感じの目だったりする。

「あ、あの、黒金さん。白銀がおかしいんですけど」

「いや、あれが当然だ。よし、お前にはしっかりと話しておこう。これはまだわたしが小さかった頃、魔王の身辺を警護していたときだ」

「………」

 あえて、そこには突っ込まなかった。

「あの女の子が勇者の生まれ変わりだとか。その魔王を倒しに来たんですよね。魔王を倒したのなら別に問題なんて………」

「違うんだ。やり方がひどかった」

「え」

「当初、やつの仲間がやってきたとき、その中に勇者の姿はなかった」

 勇者不在のパーティー。一体、主人公はどこに行ったのだろうか。ああ、もしかしてその魔王が勇者だったとかいうオチなのか。

「え、えーっと、それでどうしたんですか」

「当然、魔王も気になって尋ねたのだが勇者は前日逃げ出したとか言ったのだ。噂ではどんな相手にも臆することなく、嬉々として立ち向かったと聞いていて魔王も喜んでいたのだがな」

「は」

 嬉々として立ち向かっている時点で人格を問われると俺は思う。

「まぁ、ともかく勇者がいないとしても魔王は自分に従わない勇者の仲間たちを葬るために立ち上がった。だが、魔王が呪文を唱えた瞬間、勇者のかけていた呪いが発動した」

 勇者は、呪いなんてかけないと思いますけど。

「簡単に言うならばその者たちを犠牲にして魔王を土に還そうとしたのだ。あれは怖かったな。その場の力をすべて消し去るというもので魔王も半身を失った」

「…………あ、あの、それって本当に勇者のやったことなんですかね。もしかしたら勇者を騙った別人が………」

「いや、勇者の姿が宙に現れてな。それはまぁ、使い魔みたいなものだった。そいつは『まだ苦しみが足りていないようね』そういって使い魔は爆発。読んで字のごとく死屍累々とした光景がわたしたちの前に広がったのだ。わたしはそのとき勇者が女だと初めて知ったよ。噂ではりっぱな男だと聞いていたからな」

「情報戦にも秀でていたんですね」

「ああ。ちなみに、当時聞かされていたその男は伝説の木の下に首だけ出ている状態で見つかったそうだ」

 想像すらできない。そんな血なまぐさくて恐ろしい勇者がいたとは。

「えっと、それでその、勇者の仲間たちはどうなったんですか」

「ん、ああ、ちゃんと天界に召されたぞ」

「そ、そうですか」

「それで、次の日………牢屋に捕まえていた人間たちが一斉に逃げ出した。魔王もそれに気がついてその場に行ったのだが罠だったんだ。そこで魔王は消滅した。魔王から傷を治すための薬を採りに行くように言われたため、遅れてその場についたわたしたちが目にしたもの、それは勇者一人だった」

「え」

「捕虜にしていた人間たちごと、勇者は魔王を消滅させたのだ。ああ、安心していいが人間たちはその後わたしの力で復活させた」

 それはよかった。というか、この黒金さんってやることあまり悪魔じゃないよな。

「その時、わたししか生き残れなかったのは仕方のなかったことだ。生まれて初めて、悪魔が手を組むという光景を目にしたのだからな。勇者は天国に行くことなく、わたしたちの生まれ故郷である地獄へと逝った」

「そりゃあ、そうでしょうね」

 そこまで残虐非道な勇者がいるとは………

「生まれ変わったとはいえ、あの気配………わたしは間違えないだろう。記憶も何もかもなくなってはいるが特殊な何かを持っているとわたしは思う。だから、蒼疾は近づかないほうがいいぞ」

「絶対に近づきません」

 あんな変な奴に近づくやつの顔を見てみたい。

「まぁ、わたしと白銀がいれば何とかなるだろう。今の奴はしょせん人間だ」

「そ、そうですよねぇ。白銀と黒金さんがいれば大丈夫ですよね」

「ああ、大船に乗っていたつもりでいてくれ」

 本当、黒金さんって頼りになる人だな。

「白銀、お前も頼りにしてるぜ」

「ええ、任せてください」

 白旗を手に持って自信満々にうなずく白銀を見て俺は不安が隠せなかった。


さて、いかがだったでしょうか。彼女は勇者、名前はまだない。候補としては『電波 受信子』か『毒物 乱子』といったものがあがっています。っとまぁ、暇つぶし程度で読んでいただけたら幸いですよ。ああ、出来たら感想よろしくお願いします。

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