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第三話:レンジで3分、悪魔が出来る。

作者のやる気は傷心旅行中のため、不定期です。

第三話

 ラヴアーチャーだか何だか知らないがやつの道具の力はすごかった。まぁ、たまにいるよな。持っている物のほうがすごくて使っている奴のほうがしょぼいってことが。簡単に言うならば豚に真珠ってところだ。

「はい、蒼疾さんあーん」

「いや、そんなことをしなくていいから」

 意外と手の力が強く、押し戻すことなど不可能だった。くっ、こんなにほっそりとしている癖になんて怪力だ。

「じゃ、じゃあ、私にあーんってしてくれるんですよね」

 ほっぺたを朱に染めてしっかりとは俺を見ない。俺は天使の両肩を掴んで揺さぶった。

「おいおい、しっかりしろよ」

「だ、駄目ですよ、蒼疾さんっ。二人だからと言ってこんな、いきなり」

 何を寝ぼけているのか知らないが、まったくもって面倒な天使さんだ。どうやったら目を覚ますのだろうか。しばらくそっとしておいたほうがいいのだろうかと思って立ち上がろうとすると今度は俺の手を掴む。一瞬だけ、トラックに手が潰されたような錯覚を覚えた。

「その、ど、どこに行くのですか」

「買い物」

「じゃあ、私も行きます。だって、蒼疾さんの彼女ですから」

 ああ、完全に何か間違ったような見識が天使さんの中で生まれつつあるな。いや、恐るべきはやつのラヴアーチャーの力というべきか。

 もう嫌というほどラヴアーチャーの力はわかった。

「なぁ、お前の持っているラヴアーチャーって、効力を消したりできないのか」

「それは………えっと、どうでしたっけ。蒼疾さんがキスをしてくれたら思いだすかもしれません」

 そういって何かを期待するかのようにちらりと見る。

「………」

 くっ、なんだこのプレッシャーは。俺はこいつに対してキスなんてしなくちゃいけないのかよっ。

「な、なぁ、いたずらしないで教えてくれよ」

「蒼疾さんの困った顔、大好きですよ」

 ぐお、何という破壊力だ。女の子に大好きですよと面と向かって言われるのがこれほど俺の心にダメージを与えるとは………。し、しかし、これはやつのラヴアーチャーの力であってこいつの本心ではないのだ。俺は女に騙されるような男にならないと真っ赤な夕日に誓ったことをもう忘れたのかっ。

 考えろ、神埼蒼疾っ。もしかしたらこういったことのためにばあちゃんが残してくれているかもしれない。変な天使を呼びだす方法があるのだから何かそれに対抗する方法があるはずだ。

 俺は再び、書庫へと足を伸ばすことにしたのだった。もちろん、天使さんもついてくる。

「えっと、こんな暗い所でその、あの」

 もじもじとして、何かをしゃべっているが聞こえない、キコエナイ。今の俺にはそんなもの通用しない。悪魔のささやきだっ。

 二階に上がり、鍵の掛けられていた棚を再び開放する。そして、次にすることは天使さんを前に出すことだった。

「なぁ、この中に何かいいものはないか」

「いいものってどういうもののことでしょう」

 すごくはずかしそうな表情を浮かべて俺に尋ねてくる。

「ん、そりゃあな、俺が困ったときのために何かばあちゃんが残していそうな」

「はぁ、よくはわかりませんがこれでしょうか」

 手渡された本には『悪魔召喚』と書かれていた。うわぁ、すっごく危なそうな一冊をチョイスしてきたな、おい。

「あ、安心してもらっていいですけど低級です。低級悪魔ぐらいなら私、退治できますから。蒼疾さんの魂はあっちに言っても私だけのものです」

 わざわざ人間界に天使と悪魔を呼びだして退治することなどないだろう。だがまぁ、天使とついなす存在と考えられていそうだからなんとかしてくれるかもしれないな。

 一縷の希望を託して俺は悪魔召喚を行うことにしたのだった。

「あの、スルーしないでください」

「いや、してないよ、スルーなんてさ」



―――――――



「召喚方法は電子レンジで三分か」

 本当、この本自体がどういう仕組みなのだろうか。術者の名前を本に刻み、髪の毛を挟んでチンするそうである。

 天使さんは多少うるさかったので縄で縛って転がしておいた。あの怪力ならばすぐにでも千切れそうなものなのだが嬉しそうな顔をしているのはなんでだろう。

 三分後、電子レンジは黒煙を上げながら稼働停止し、俺はおそるおそる扉を開ける。

「ふはははは、どこの誰だか知らないがこのわたしの封印を解いてくれたことを嬉しく思うぞ」

「…………」

 手のひらサイズの漆黒のドレスをまとった女の子がそこにいた。

「おい、人間。貴様がわたしを復活させてくれたのだな」

「え、あ、はぁ、そうなんですが」

「よし、褒美をくれてやろう。この世界の半分をお前にやる」

「まぁ、それはいいんです。そんなことよりお願いしたいことが」

「なんだ」

「天使のラヴアーチャーの効力をなくしてほしいんです」

 そういうと悪魔さんの顔が固まってしまった。

「お、お前、ラヴアーチャーをわたしに向ける気か」

「は」

「くっ、恐ろしい人間のもとへと召喚されてしまったものだ。まさか、ラヴアーチャーなどという危険な代物を………しかし、何故人間がそんなものを………」

 ひとしきりぶつぶつつぶやいたかと思うと目を閉じて両手を広げた。背中に生えている小さくて黒い羽根も一緒に広げる。

「いいだろう。このわたしにラヴアーチャーを向けるがよい」

「はぁ、それで解決するんでしょうか」

「ああ、すべて解決するぞ」

 おお、さすが悪魔だ。とても頼りになる言葉。

 俺は天使さんがそこらへんに置いていたラヴアーチャーを持って悪魔の胸に狙いをつけた。

「ほ、本当にいいんですよね」

「言っておくがな、ラヴアーチャーの効力はすさまじいぞ。ちょっとでも心に隙があればその効力は半永久的だからな。このわたしを伴侶にするかどうか、後はお前しだっ………うぐっ」

 間違って手を離してしまった。なんだか、ものすごく大切な説明をしている途中で矢から手を離してしまったようだ。

 悪魔さんはしばらくの間荒い息を続けていたがなんとか立ち上がる。

「………今日から、お前の伴侶となることを誓う」

「ええっ」

「あれ、蒼疾さん何をしている……ま、まさか悪魔を」

 絶望したかのように天使さんは俺のことを見ていた。

「え、だってお前がラヴアーチャーの解除方法を教えてくれないからこんなことになったんだろっ」

「ひ、他人のせいにするんですかっ」

「いや、天使のせいにしているだけだから」

「おい、そこの下級天使」

「失礼ですね、なんなんですかっ」

 電子レンジ内の悪魔にそう話しかける。見下すような視線だった。

「大人はな、時としてとても理不尽なことを耐えなきゃいけないんだ。天使よ、この男は本当にどうしようもない男だ」

「出会ってすぐにそう言われたくねぇっ」

「………それは認めますが」

「認めるなよっ。天使なんだからなんとか否定してくれ」

「ちょっと、黙っていてください」

 俺のことをまるで下等生物でも見るかのような視線だった。

「夫よ、お前の名前は神埼蒼疾だな」

「ああ、そうですね」

「よし、何一つとして不足はないな。よかったな、わたしの伴侶になれて」

 悪魔と言ったら非常に怖いイメージがあるのだが目の前の悪魔からはそんなものは一切感じられなかった。

「あの、悪魔さん」

「なんだ」

「一つ、教えてほしいことがあるのですが、いいでしょうか」

「ああ、構わないぞ」

「なんで、悪魔の貴女が自己中心的な言葉を言わないのでしょうか」

「それは簡単だ。契約者が天使、悪魔の両方と契約しているのだから足して二で割った状態となっているのだからな」

「ああ、なるほど~」

「そ・う・やさんっ。おやつの時間ですからお菓子を出してくださいっ」

「………」

 足して二で割って両方とも不通になったと思ったのだが天使さんだけ異常だった。おかしいぜ、この人。

 悪魔さんに聞いてみると、どうやら力が強すぎて一時的な影響を受けているらしい。一時的ならなんとかなるだろう。


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