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第二十一話:”城”の掃除

第二十一話

「さぁ、ではこの屋敷をしっかりと掃除しましょう」

 近藤はエプロンをつけてそう言った。そして、白銀、黒金さん、そして俺は返事をしなかった。

「あの、この家ってかなり広いですよ。なんだか外から見たら一階だけのような気がしますけど二階もありますし、屋根裏まで完備、部屋数だって一階だけで二ケタに上りますし、おまけに地下室までありますから」

「わたしのようなものが掃除をするわけないだろう」

「一日目で掃除は体験したからもうおなかいっぱいだ。業者呼んだほうが早いだろ。それに俺はこれから学校があるし」

 月曜日、学校は休みではない。日曜日という休日の次に来るためにいつもよりも厳しい学園生活を送る可能性が高いのだ。

 そういった文句を垂れていたのだが徐々に近藤の笑顔が危うい顔へと変貌していった。

「若様はどうぞ登校時間まで座っていてください。世話役のわたくしや、がーでぃあんの白銀さんと黒金さんが掃除をいたしますから」

「よっしゃ」

「ああっ、汚いですよっ」

「汚いのはこの家ですから、白銀さん、掃除をしましょうね」

 にこりとほほ笑むのだが、彼女の瞳は笑っていなかった。そして、気がつけば黒金さんの姿がない。

「まったく、あのごきぶりはしかたがありませんね」

 俺の頭の中にごきぶりのコスプレをしている黒金さんの姿が浮かび上がった。あ、かわいいな、いや、そうじゃなくて。

「ご、ごきぶりってそれはさすがに言いすぎじゃないか」

「いえ、ごきぶりは悪魔ですよ。あれっていきなり飛ぶんですよ、飛んで、顔に張り付いたらもうそれこそ、軽い地獄です。ですから、ごきぶりは悪魔の一種で、悪魔はごきぶりです」

「誰がゴキブリだ、誰が」

 黒金さんが現れる。

「ほら、それにいつも黒い召し物をまとっていますし、このサイズですからもしかしたら黒金さんは突然変異したごきぶりかもしれませんよ」

 じっと黒金さんを見ると彼女はぶんぶんと首を振っていた。

「わ、わたしはごきぶりの変異種じゃないぞ」

「わかってますよ、そんなこと」

「ま、ともかくごきぶりの巣窟となっているだろうこの家から追い出します。下手に残していたりしたらそれこそ、若様の魔力が何らかの影響でごきぶりを巨大化、または変貌させてしまうかもしれませんからね」

 まるで、予期するかのようにそう言うと黒金さんとともに部屋を出て行ったのだった。



―――――――――



 俺が学校に行くときは大体黒金さんが付いてくるのだが今日は掃除をしているためについてきてくれはしなかった。

「はぁ、襲われたらどうしよう」

 先日、俺を襲ってきた日和と死神のことを考える。睦月の話によればけがをすることはないとのことだったが、正直言って狂喜乱舞で襲ってくるのだから恐ろしいことこの上ない。


ヴゥーン


 不吉な音色が俺の耳へと届いてきた。あたりを見渡してすぐさま隠れることのできるごみ箱の中へと逃げ込んだ。

「ちぇっちぇっちぇっちぇ、チェーンソ~。ぶんぶん唸ってきりきりきりきり切りっざむ~。気になるあの子が唸って困る~」

 なんという歌をうたっているのだろうか、あんな歌を歌っていたら確実に痛い人を見る目で見られるぞ。

「あ、あんなところにあたしを見守ってくれている電柱の陰の人がっ。まって~電柱の陰のあしながおじさーんっ」

 そういいながらどこかに去っていった。ああ、本当、心臓に悪い奴だな、あいつは。

 はるか彼方のほうから『電柱地底湖建設募集中』というまったく意味不明な言葉聞こえてきたのでそちらのほうにはいかないようにしたのだった。

 しかしまぁ、俺を襲ってきたのは危ない日和だけではない。学校にいる間は集団の中にいるので安心だったが帰路について俺はいやなものを見つけてしまった。



 段ボールの中に入っている死神。



「あら、こんにちは」

「こ、こんにちは」

 首にはいつものロープ、そしてぼろ布をまとった死神が裏路地に捨てられていたのである。

「あの、魔王に捨てられたんですか」

「いいや、あなたのところの悪魔にあれから捨てられたのよ」

 にこっとほほ笑んでそう言われるが、遠回しにお前が捨てたといわんばかりだな。

「えっと、家に帰ったらどうですか」

「それがねぇ、結界張られててこの段ボールの中から出ることすらままならないのよ。困った困った」

 困ってなさそうにそういうため、俺は助けたほうがいいのか、このまま走って逃げたほうがいいのか決めかねていた。

「もし、私を助けてくれたらお礼をしてあげるわよ」

「お礼ですか」

「ええ、そう、お礼」

 おいて逃げるのも十分怖かったのだが、そのお礼とやらもかなり怖かったりする。

「えっと、先に聞いておきますけどお礼ってどんなことをするんですか」

「そうねぇ、夜な夜な夢枕にたって縄で縛ったり、鞭で叩いたりしてあげるわ」

「いや、そんなお礼はいらないっす」

「じゃあ、私の黒いローブの予備をあげるわ。夏は涼しいし、冬は暖かいのよ」

 なるほど、死神のローブならな珍しいかな、そう思って俺は助けることにしたのだがそこで問題がひとつ出てきた。

「あの、どうすれば助けることができるんですか」

「私に手を差し伸べて助けたいと思えばいいわよ」

 言われた通り、行動を起こす。彼女の言った通り、段ボールから死神が出てきた。

「じゃあ、出てきてさっそくだけど魂刈ってあげるわね」

「ひいっ」

「うそうそ、冗談よ。これ、約束の品ね」

 どこから取り出したのかはわからなかったが俺に闇を手渡した。いや、本当闇というしかない代物で重さなんて感じないのだがただそこに何かがあるというのだけは理解できた。

「困った時は両手をあげて『助けて~、死神おね~さ~んっ』と無様に叫べば片道一分で助けに来てあげるわ」

「はぁ、それはどうも」

 じゃあ、死霊が私を呼んでいるからもう行くわといって彼女は去って行った。絶対にそんな言葉を叫ぶかよと思ったのだが、後日、呼ばなくてはいけない日がやってくるとは思いもしなかった。


アットホームな空気を一発でコキュートスへと陥れるおやじギャグ。スキー、スノボー、スケート、スケボー………苦手なのに滑るのはうまい、城のことを知ろうっ………どうも、雨月でした。

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