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第十七話:強襲、黒下着の死神

第十七話

 一難去ってまた一難。いや、ねぇ、まさか成人する前に子の言葉を聞く羽目になるとは思わなかったなぁ。

 のんきに構えている場合でもないので俺はさっさと家を盾にして反対側に逃げる………が、いきなり家の壁から死神が現れた。

「う、嘘だろ………」

「死神だから壁も通り抜けることが出来るのよ」

 にやっと笑うその表情は獲物がおびえる姿を楽しむものだった。

 さっさと切り刻めば終わるものを、何を思ったのか死神は鎌を自分の首にかけて笑っている。

「まさかねぇ、最初に出会ったときはそんなもの微塵も感じられなかった………いやぁ、あれはもしかしたらたかだか人間だと思っていただけなのかもしれない。決めつけは目を狂わせてしまうからねぇ」

 雨だけだったのに風まで吹いてきて、横殴りの雨へと変わる。死神の黒のローブは風を受けてはだける。青白い肌、黒い上下の下着、そしていつものように千切れたロープがあらわになったが、彼女がそんなことを気にする様子もない。

「従うに値するかどうか、いちいち試験ってするの面倒なんだけどね。私ってまだこれで二回目なのよ」

「な、何言ってるんですか」

「うふふ、あなたはまだ知らなくていいことよ」

 そして、再び鎌を握りしめた。ただ、鎌は先ほどまでの無機質なものとは打って変わって鼓動をし始めたのだ。金属片だったと思っていた刃の部分には何やら血管のようなものが現れて脈打っている。

「知らないまま死ねるのならそうしたほうがいいかもしれないもの。私はね、死神の中じゃ結構やさしいほうなのよ」

 そういって宙を滑ってやってくる。俺は急いで後ろ向きに逃げ出した。

「うっわああああああ」

 叫んでみたが誰も助けに来てはくれない。しかも、先ほどの結界は壊れたわけではないために俺が外に出ることは当然、出来ない。

 狭くはない家と庭なのだが、あっさり俺は追い詰められてしまった。追い詰められた一番の原因は壁に何度もぶつかったことだろうか。

「さぁ、ここまでね」

 本当にうれしそうに俺のことを見下していた。

「じゃ、ばいばい」

 振り落とされた鎌は俺の首ではなく、盾に真っ二つに切ろうとしている、そうすぐにわかった。



 だが、今回もまた俺が怪我することはなかった。



「…………」

「………」

 目をつぶることなく見ていると、鎌は根元から折れて、砕けた。一体、何が起こっているのだろうかと考えるもさっぱりわからない。何か俺自身が特別な力に目覚めたというのなら何か能力を使ったような感じがあるはずなのだが、あいにく、尻もちをついて手は地面にふれているままだ。冷たくて、寒いという感覚しか身体には残っていない。

「………ふぅ、やっぱり私は死神か」

 黒のローブは煙のように消え、死神はそのまま地面にひざを屈するように堕ちた。ちょうど俺の視界には彼女の豊かな胸が谷間を作っているところが確認できたが、そんなことよりも俺は聞きたいことがあった。

「あ、あの、なんで俺を襲ったんですか」

「あ~、強襲失敗しちゃったわ………死にたい」

 汚れることも彼女にとってはどうでもいいことなのだろうか。土砂降りの中、膝をつくような状態からそのままうつぶせの状態へと変わった。

「よ、汚れますよ」

「どうでもいいわ」

 そういって寝転がっているのを放置できるわけもなく、俺は死神を抱えて一旦、家に入ることにした。これ以上誰かが襲ってくることはないだろう、だってこれ以上おかしな知り合いはいないはずだし。

 雨は休まず、いまだに元気だった。



――――――――



 湯船につける前にシャワーを浴びてくださいと言ったのだが、素直に聞いてくれなかった。

「あなたが私を拾ってきたんだからシャワーであなたが洗えばいいでしょ」

 にこっと笑ってそう言われるが、先ほどみたいに命の危険にさらされている状態ではない。死神とは言え、女性なのだ。青白い肌は冷たい、だが、何故だかドキドキしてしまう。

 仕方がないので言うことを聞くことにした。シャワーを出して、頭から流してやる。

「さ、洗って」

「え」

 泡のついたタオルを差し出される。死神はあろうことか、下着を脱ぎ始めていた………。



「死神よ、わたしたちはそこまで頼んだ覚えはないぞ」



「く、黒金さんっ」

「あら、やっぱり見てたのね」

 そして、黒金さんの向こうには白銀がラヴ・アーチャーを握りしめている。狙っている先には俺がいた。



「すみませんっ、蒼疾さんっ」



 矢は放たれ、俺の胸へと突き刺さる。

 くっ、まさか一発ネタだと思っていたラヴ・アーチャーを持ってくるとは………

「あれ、別にドキドキもしないぞ」

「やはりか………これで確定だな」

 かなりがっかりしたような表情で黒金さんは俺に背を向ける。

「え、どういうことですか」

「安心しろ、蒼疾」

 それだけ残して黒金さんは思い出したかのように濡れた半裸の死神を(いつの間にかブラジャーを脱いでいた、くそ、気づいてなかったぜ)連れて行く。白銀も、俺のことをじっと眺めて出て行ってしまった。



 俺に残されたのは黒いブラジャー一つだけだった。


さて、新章続き、どうなる事か…

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