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プロローグ?/第一話:3分経ったら天使が出来る

不定期です。

プロローグ

 俺の名前は神埼蒼疾という。

 神様はいないと思っているタイプで、好きな女性のタイプは年上のお姉さんが好きなのだ。いや、好きじゃないな、大好きだっ。

 話がそれてしまったが母がたの親であるばあちゃんは俺と違って信心深い人だった。神様がいると思い、天使もいると思っていたのだ。ただ、不思議なもので何らかの宗教には入っていない。ばあちゃんの家の蔵には不思議な置物や棺桶のようなものなんてものはなかったのだが、それこそ天井さえ埋め尽くさんばかりの本がたくさんおいてあった。種類は様々なもので絵本から悪魔を呼び出すといわれている本まで。殆どのジャンルを網羅していた。そして、何故だか十八歳以上の大人の本もきちんと常備されていたところを見るとあちらのほうは高校に入る前に死んだじいちゃんが集めたんだろうなと簡単に想像がついたりする。

 そんなばあちゃんが亡くなってしまったのは一週間ほど前のことだった。

 ばあちゃんの遺言状を預かっていた人(隣のおじいさんだった)は親族全員を集めた。無論、その中には俺が含まれている。

「え〜、お金のほうは親族全員で分けてもらってかまわない。だが、この家は神崎蒼疾に全て譲り受ける。この件について文句をいうようならばその者には一切の遺産を分け与えない。たとえ、蒼疾の両親だったとしても。家に住む際は蒼疾の一人だけを認める」

 その後、莫大な遺産(お金のほう)を多く手に入れようと様々なことで親族が骨肉の争いを始めたのだった。そんな光景を俺は横目で見ながら遺書を読ませてもらっていた。間違いなく、俺の名前が書かれている。

「あの、なんで俺に家なんかを渡したんでしょう」

「それはきっと君に受け継いでもらいたい何かがあるからじゃないのかね」

おじさんはそう言って笑うのだった。受け継いでほしいものなんて想像できないし、蔵の本ぐらいしかないだろう。

「えっと、でも、家族三人で住むのにも広いですよ」

「ほっほっほ、少し君には大きいかもしれないけど家は喜んでいるよ」

「はぁ………」

 次の日、俺は一人暮らしをはじめることとなった。



第一話

 部屋数二十を軽く越えている、こんな馬鹿みたいな家を誰が掃除をするのだろうか、と俺は思いながら俺が最低使うであろうスペースを掃除しておくことにした。もし、両親がきれいに掃除をしろといっても一人でこの家の全てを掃除しようとは絶対に思わない。専門の業者を呼んでこき使ってやろうと思う。

「………ふぅ、まぁ、こんなものか」

 炊事場、トイレ、風呂場、玄関に近い部屋を掃除終えると既に疲労感で胸がいっぱいになっていた。まぁ、この家から高校までは近いのでバイクの免許を持っていない俺には得だ。

 てっきり一人暮らしなんて許しそうになかった両親だったが、俺が一人暮らしをするのをあっさりと認めてくれたのだ。

「蒼疾、私たちはお母さんの財産を多くゲットして見せるわ」

「それまで一人でがんばるんだぞ?」

 遺言どおり、俺がこの家を手に入れたことに関して誰一人として文句を言わなかった。大体、この家にあるものとしたら近くの蔵、まぁ、書庫ぐらいなものだ。それ以外に価値がありそうなものといえば……古いテレビ、古い冷蔵庫、住居者がいない犬小屋………こんなものだろう。比較的山の上のほうにあるのできっと売ったところでいい値段なんてつかないのだろうか。

 まぁ、高校生の俺がそんなことを考えていても仕方がないので書庫へと向かって歩き出していた。休憩のためではないが、その、なんだ、じいちゃんのコレクションをちょこっと確認しにいくことにしたのだ。

 書庫の扉は固く閉ざされており、なんでそんなに厳重にしているのか、理由をばあちゃんに教えてもらったはずなのだが思い出せない。子どもが勇んで入るような場所でもないのだが、近所の元気のいい子供が何度か侵入しようと試みていたらしい。

 ばあちゃんがその昔大事そうに持っていた鍵は今では俺の手の中にあり、当時は大きく見えていたその鍵も今では小さいものだった。

「遺産は誰が一番多くもらえたんだろう」

 ばあちゃんの子どもたちは十人近くいるのだ。今頃どこかの会議室でも借り切って争っているころではないのだろうか。

 そんなことを考えながら書庫の扉を開ける。久しぶりに人がやってきたので歓迎でもしているのか埃が舞って、かび臭いにおいが俺を迎えてくれている。

 さて、どこにじいちゃんのコレクションはあっただろうか。この書庫には二階があり、そこにも本棚がいくつかある。二階だっただろうか。そう思いながらはしごを上って鍵のかかっている本棚の鍵を開ける。無論、その鍵の所有者もばあちゃんから俺へと移っている。基本的に大事な本はガラスケースに入っていて鍵がかけられている。これがまた、どんなガラスなのかわからないが以前誤ってつぼをぶつけてしまっても割れることはなかった。

 きっと、ここにあるのだろうと思い、引き戸を開けて中を確認する。

「ん」

 厚い一冊の本が置かれている。どこの字かはわからないが、とりあえず四字ほど文字が書かれているようだった。興味をそそられたのでそれを持ち上げてみると不思議とその文字が理解できたような気がした。

「天使召喚」

 そうかかれているようにも見える………とりあえず家の中で読むことにしてそれをもってはしごを降りる………。

 鍵をかけるとき、なぜだかその書庫の中がざわついたような気がしたのだが、気のせいにすることにして俺は書庫に鍵をかけたのだった。

 ちゃぶ台の上に五キロはあるであろうその本を載せる………今、思えばこんな重たいものをもってよくはしごを降りることが出来たよな………俺。

「えっと、何々………」

 一ページにはこの本を使えば天使を使役できると書いてあった………というわけでもなく、きっとばあちゃんが翻訳して残してくれたであろう紙にそう書かれていた。

「………この本にお湯をかけて三分。それだけであなたの家の冷蔵庫に使役された天使が入っています……か」

 何だ、これ。馬鹿馬鹿しい………そう思いながらも俺はコンロにやかんをかけていた。次のページをめくってみると使役する条件が載っている。

「………三分たったらすぐに取り出してください。…………が伸びてしまう恐れがあります………なんだ、これ」

 何が伸びるか文字がにじんでいてよくわからなかった。んな、カップめんじゃあるまいし…………体がのびるのだろうか、天使の。信じられないといっていいだろう。さて、冷蔵庫から天使が出ることに驚くべきか、天使が伸びてしまうことに驚くべきか………どっちだろうか。

 そんなどうでもいいことに悩んでいた所為かやかんが俺を呼んでいた。

「おっとっと………」

 さっさとやかんを手に持って本当にこの書物にかけていいのだろうかと………思ったのだが、別にかまわないだろう。


ごぽぽぽ………


 湯気を立たせながらどんどん本は濡れていく。大丈夫なのだろうかとも思ったのだが、本に書かれていたことなのだし、浸しても大丈夫だろう。

「………このぐらいか」

 全体にまんべんなくお湯が染み渡った頃合で俺はやかんを再び水平にする。

「………で、三分だな………」

 時計を確認する。今の時間帯が午前十時四十五分だから四十八分に冷蔵庫を開ければいいんだな………


ぴんぽーん


 そんな小気味いい音が聞こえてくる。どうやら誰かが来た様で、俺はその場を離れたのであった。

――――――

 玄関先にたっていたのはにこやかな笑みをしている男性だった。

「どうも、新しくこの家に引っ越しきた方ですよね」

「ええ、まぁ………あの、なんですか」

「ああ、失礼………実は、この家では新聞を取っていないようでしたので新聞の勧誘をしにきたんです。あなたがこの新聞を取れば………」

 その後、十分ほど弁舌さえわたる目の前の男性は一方的に話し続けていた。息継ぎをした隙を狙って俺はとても的確であろう嘘をついた。

「あ〜………その、今両親がいないのでまた今度にしてもらいたいんですけど……」

「ああ、そうなんですか。これは失礼致しました………それではまた、日を改めて来ますね」

 あっさりと下がっていった新聞勧誘者の男性に対してくたびれながらも俺は冷蔵庫を開けることを忘れていたことを思い出した。

 出てくる天使の身長が三メートルを超えているのではないか………と、何故か想像してしまっていた。

「ん」

 冷蔵庫の前に立つと、俺は違和感を覚える。冷蔵庫が動いている………そんな気がしたのだ。そんな、まさか………

 冷蔵庫の扉を前にして、今日ほど戦慄を覚えたことなどなかったのだが、致し方ない。俺は一気に冷蔵庫の扉を開けた。

「はぁ、やっと開けてもらえた………で、契約した魔術師さんはあなたですよね」

 そこには窮屈そうに入っている女の子がいた。腰までの長い金髪にブルーアイ。年は俺より二つぐらい下というぐらいだろうか?天使だからか頭の上には光輪が浮かんでいる。ちょっと触ってみたい。

「えっと、それで何を求めるんですか」

あの本が本当だということを身をもって体験してしまう。藪をつついて蛇を出してしまった心境だ。

「え、あ〜……すまん、その、遊びというか、天使が本当に出てくるかどうか試したかっただけなんだ。それより、三分以上たったら何が伸びるんだ」

「………今、なんといいましたか」

 天使のくりくりした目は大きく見開かれていた。

「だから、三分以上たったら何が伸びるんだ?」

「えっと………何分ほどオーバーしてます」

 時間を確認すると………十分どころか二十分以上経っている。

「二十分以上かな」

「は………二十分もっ」

 驚愕したその顔は世界の終わりを告げられたかのようだった。

「そんな、あと、百年この世界にいないといけないの」

 一人でそんなことを言っている女の子に対しておれは首を傾げるしかなかった。


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