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2つの国と大きな円盤と僕たち
「本日の西宮の天気は晴れ、所により曇りでしょう。大型浮遊物体は西に移動し朝方未明に芦屋に入りました…ザーッ……ザーッ…」
小型のラジオは僕が動くと同時に電波キャッチに乱れを起こしその後からは途切れ途切れで女性アナウンサーの声を届けるだけだった。
いくら校舎の屋上といえど、空に巨大な浮遊物体があれば電波は届かにくいのだろうか。
多分、2045年の本日には無理な事なのだろう。
日本は、先の第二次世界大戦の大敗で2つに分かれてしまった。
あの年の8月に流れるはずだった玉音放送は当時の陸軍中佐のクーデターにより国民の耳には届かず、最悪の本土決戦に持ち込み、220万人の兵を犠牲にして2ヶ月伸びた10月に放送は流れた。
東京は首都と呼ぶには無理なほど土地が荒れ果て今でもなお立ち入りが禁止されたレッドゾーンと呼ばれている。
日本共和国と大日本国に分かれて96年になるという時、大日本国の大阪湾に突如巨大浮遊物体が現れたのだった。
それは映画やアニメに出てくるそれにそっくりだった。というか、UFOそのものだった。