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突然の2択

ガチャガチャ、シュシュバリン。


えーと、ここがこうなるから・・・

いやっ、待てよ、やっぱりこっちのほうが発動させやすいか。


ガチャバリッ、キュッギュッ


バァーン!!!


「できた!」


「もう!!いつまで部屋に引きこもっているつもりなの!!!!!」


私が作っていた魔道具の完成音と、母が扉を開けた音が重なった。


「こんなに可愛く生んであげたのに・・・毎日毎日部屋に引きこもって魔道具を作ってばかり・・・。ある程度成果を出しているのも知ってるわ!でもね、あなたは女性なの!いつかはちゃんと公爵家として結婚を考えるだろうと思って見守っていたけど、そろそろ限界よ!!!」


慌てて後ろを振り返ると、鬼の形相をした母が仁王立ちしていた。


「あなた今いくつだと思っているの?20歳よ!いき遅れもいいところよ!!!夜会にも全然参加しない、無理矢理連れて行っても、すぐに帰ってくるし!あぁ!!もう!!」


私は慌てて、母に視線をあわせるように座りなおすと、


「姉のエイミーは王子様と結婚したし、弟も婚約者を作り結婚は目前よ!残りはあなただけよ・・・」


いつもの事だ、と私は黙って静々と母の小言に耳を傾けていると、次第に母の声のトーンが落ちていった。

チラッと母に視線を向けると、真剣な顔でこちらをじっと見据えていた。


「今すぐ決断しなさい。今すぐ結婚するか、学園の先生になるか」


うん?結婚か先生・・・?なんだその二択・・・。


「ほら、早く決めなさい。決めないと・・・その手にしている魔法道具を叩き割るわよ」


私は手にしていた魔道具を素早く背中に隠すと、


「え・・・と、結婚と先生なら・・・先生がいいです。」


母の剣幕に圧倒され、ビクビクしながらもそう答えた。


「よし、決まりね。明日は出掛ける準備をしておきなさい」


バタンッ


勢いよく扉が閉まると、私はふぅと息を吐き、また魔道具を作り始めた。



翌朝いつものように目覚めると、またも鬼の形相した母が佇んでいた。

私はビクビクしながら起き上がると、ベットの上で徐に正座をしてみた。

昨日、湯あみ後にすぐに寝てしまった為、髪はボサボサだ。

加えて、作業着のまま寝ていたため服は皺皺になっていた。


「昨日言ったわよね?出かける準備をしなさいと・・・。まだベットに居るのはどうしてなのかしら?」


「あー、えーと、これで出かけます!」


私はそばにあったローブを勢いよくかぶると、母に苦笑いを浮かべた。


「ふーん、まぁいいわ。さっさと立ちなさい!」


えっ、いいの!?

呆然と母を眺めていると、早くしなさい!!!と怒鳴り声が部屋に響いた。

私は母に言われるままに屋敷を出ると、急ぎ足で母の後を追いかけた。


久しぶりに浴びる太陽の光に目がくらむと、母はあきれた表情を見せ私の手を強く引っ張った。

そのまま馬車へ乗せられると、私はゆらゆらと運ばれていく。

はぁ・・・暑いし・・・どこにいくんだ?

母に聞いてみようとチラッと視線を向けると、眉間に皺をよせ、まだ怒りが収まっていない母の様子が目に入った。

そっとしておこう、行けばまぁわかるし・・・。

私は聞くのを諦めると、馬車へ身を預けた。


馬車が停止しすると、母が早くおりなさいと目で訴えてくる。

母を横目に馬車を下りると、目の前にはこの国一番の学園がどっしりと佇んでいた。

ここ・・・有名学園じゃないか・・・。

まさかここの先生になれっていうの・・・?

いやいやいや・・・引きこもりの私じゃ無理だろう・・・?


恐々異を唱えようと母の顔を横目で見ると、黒い笑顔を浮かべた母が、文句は言わさないわよ、早く行きなさい!と目で訴えていた。

ちょっと待て・・・うそだろう・・・。

私は泣きそうになりながら、後ろからの圧力に押され、渋々と学園へと足を進めた。


学園の門にいた案内人と挨拶を交わすと、後ろ髪を引かれる思いで、案内される背中を渋々ついていった。

学園の中に入ると、広いエントラスにはこの学園の大きなエンブレムが掲げられていた。

わぁお・・・すごいな・・・。

そんな学園の様子に圧倒されていると、案内人は困った様子で私に苦笑いを浮かべているのが目に入った。

私は慌てて案内人の後についていくと、校長室と書かれた扉の前に到着した。

案内人は私に部屋に入るよう促すと、校長室の中へと渋々足を進めた。


「ようこそ、我学園に。」


そこには優しそうな微笑みを浮かべた、渋いおじ様が座っていた。


「急にすまないね・・・。魔道具の授業を担当していた先生がやめてしまってね。急遽欠員がでて焦っていたんだ。知人に相談したところ、良い人材がいると言っていたがまさか、あの有名な魔道具師・アレックス殿が来てくれるとは思いませんでした。」


勢いよく話すおじさんに圧倒されながら、私は微笑みを浮かべた。

ぐぅ・・・もう先生になることは確定なのか・・・。

あぁ、家に帰りたい・・・・。

校長の話を聞き流しながら、そんな事を考えていると、


「一週間後からで悪いがよろしく頼むよ」


一週間後だと・・・。うそだろう・・・。

呆然としている中、サッと差し出された手に一瞬戸惑ったが、私は苦笑いを浮かべながら校長の手を握った。


屋敷へ戻ると、先に戻っていた母が満足そうな微笑みを浮かべ、待ち構えていた。


「ちゃんと引き受けたみたいね。」


まぁ、よくよく考えてみれば、時期を見て適当にやめればいいだけだしな。

そんな事を考えていると、


「2年よ!!2年あの学園で先生を全うしなさい!そうすれば婚約はもう少し待ってあげるわ。」


ハッ、頭の中が読まれている・・・。

私は誤魔化すように笑いを浮かべ深く頷くと、小言が飛び出す前に急いで自室へと戻った。


それから一週間は地獄だった。

母は元々教師をしていた経歴がある為、私に教師としての心構えや、教え方などをこの一週間で詰め込もうと燃えていた。

魔道具の研究をする時間もなく、毎日毎日立派な教師になるようにときついレクチャーが行われた。

うぅ・・どうしてこんなことになったんだ。

泣き言を言おうとすると、母のきついお叱りが飛んでくる。

逃げ出そうと部屋を抜け出すと、すぐにメイドや執事に見つかり、部屋へと連れ戻された。

あまりに私が何度も逃げ出すため最後の数日は、さぼらないようにずっと部屋で母の視線を背中に受ける時間は地獄だった・・・。


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