船内にて
定期船の時間になり、船に乗り込むカイ
人数が少なく検査もほとんどないおかけがカイも特に何も言われることなく乗ることができた。
船内はあまり広くはなく、10人くらいが入る中部屋が二つほどあるだけ。
利用客を考えればこれでも余るくらいだ。
カイはラウンジで海を眺めながら、この先の事をぼんやり考えていた。
「(向こうの港に着いたら、場所を使おうかな。せっかくだし歩いて行ったほうが良いかも?)」
などと悩んでいると突如船内から大声が聞こえた。
「おい船員!帽子を齧った銀髪の女を見なかったか!この船に乗ってるはずなんだ!」
「お客様、落ち着いてください。何かございましたか?」
「そいつに用があるんだ!いるなら早く連れてこい!」
「(以前に撃退した盗賊だろうか。まさか追ってくるとは……)」
「僕に何か用ですか?」
カイは少々うんざりしながら応対することにした。あまり目立ちたくはないのだが、船員に迷惑をかける訳にはいかない。
「やっぱりこの船に乗ってた!話があるんだ!」
仕方なくラウンジに出ることにした。
その男はかなり若くカイと同世代だろうか。黒い短髪で少し逆立っている。得物は槍だろうか。
「ここで争っても迷惑になるので、我慢してもらえませんか?後貴方はあの時にはいなかったはずですが仇討ちですか?」
「いいや!俺があんたにしたいのは仇討ちなんかじゃねえ!」
すると男は突然土下座をしながら言った。
「あの盗賊団を潰してくれて、助かった!本当にありがとう!!』
「え…………………??」
固まるカイを他所にその男はさらに続けた。
「俺の名はダース!ダースって言うんだ!歳は16だ!俺はあんたに恩を返したい!よかったらあんたの名前を教えてくれ!」
「僕はカイ。ダースさん事情が込み込めないから教えてくれませんか?」
「おっとすまねえ。察しの通り俺はあんたが潰した盗賊団にいたんだ。正確に言えば、無理やり組み込まれてたわけなんだが。」
「組み込まれた?」
「そう。あいつらに家族を人質に取られて従わされてたんだ。たまたまあの森に行く時は隠れ家で待機してて行かなくて済んだけどな。まさか、あんたみたいなお嬢さんがあいつらを再起不能にするとは思わなかったぜ。」
「ハハ……(再起不能??そんな強くしてない気が……加減間違えたかな…)再起不能ってそこまでだったの?」
ダースは少し青ざめながら
「全員喉潰れてたし、リーダーに至ってはトラウマでもう活動なんてできない状態さ。あんた何をしたんだ?」
「(やりすぎてた……力加減がどうも難しい…次はもう少し弱くしよう……)」
「まぁいきなりやってきてこんな事言っても信用できないかもしれない。が俺も自分の実力くらいは把握してる。たとえ闇討ちしようったって敵わないこともな。」
カイは母親エルミスの能力の一つでもある。相手の心音を聞いてある程度、嘘かどうか見破ることができる。
「(心音の乱れもないし、嘘を言っている気配もない……大丈夫かな)」
「恩を返すってちなみにどうやって?」
カイは少しだけ探りを入れてみた。
「まだ見たことはないが、あいつらを潰すくらいの強さを持ってんだ。大方騎士学校に入るってとこだろ?俺も一緒についていかせてくれ!
これでも子供の頃はパームにいたんだ。少しは助けになれると思うんだ。」
「(旅は道連れ、どんどん友達を作りなさい…か…)」
父親の言葉を思い出しカイは手を差し伸べる。
「僕で良ければ助けてくれると嬉しい。でもそれは恩とかそんなんじゃなくて友達として。」
ダースはその手をガッチリ掴み
「よろしくな!あんたみたいな女の子と旅出来るなんて嬉しいぜ!必ず役に立つから!」
カイはそれに対して少し表情を引きつらせながら言った。
「あと、僕は男だよ……」
ようやく他キャラが出てきました。
これから少しずつ増えていきます。