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成金が生きる異世界物語  作者: 永遠に馬鹿な龍
二章 異世界の旅
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第二話 拘束中

 目覚めると、俺は鎖に繋がれていた。

 牢屋の中にいるらしい。鉄格子が外との交流を妨げている。

 脚には錘が繋がれており、動かすことも出来ない。

 腕は手錠のような鉄の輪に挟まれていて、動かすことが出来ない。

 ボロボロな布の服を着せられており、ズボンも同じようなものだ。


 ……え?何で俺、こんな訳の分からない状況に陥ってるの?

 あれ?確かさっきまでパソコンの前にいて……後頭部に何か食らって……倒れて……。

 ん?あれ?分からん。

 何で俺、捕まってるの?

 まさか、さっきまでのは全て幻惑で、実際には公然猥褻罪で捕まった、とか?

 なんて事だ。俺の名誉が穢されたってことじゃないか。

 くそっ、学校では真面目君として通っていたというのに、次の同窓会ではどんな顔をして出ればいいんだ……。

 おぉ、神よ、救ってください。


 ……さて、冗談はここまでにしよう。

そろそろ真面目に状況の判断をしないとな。

 俺は何故やら牢屋に囚われている。これは確かだ。

 さて、だが何故捕まっているのか分からない。

 うーん……夢では、ないんだよなぁ。

 夢にしちゃ妙にリアルだし、鎖の冷たさも現実味がある。

 でも夢でないとしたら、じゃあこの状況は何なんだ?

 一体何が?


「おい、あのガキ共、どこに売る?」

「そうだな……。おっ、そういやエレクの所のオッさんが、子供奴隷を探してるって言ってなかったか?」

「あのオッさんか……。ま、対した価値もなさそうだし、売り手もないんだから、あそこでもいいか」


 牢屋の外で、話している声が聞こえてきた。

 数は2人、両方とも男の声だ。

 売るやら奴隷やら、何か物騒な言葉が聞こえてきたのは俺の気のせいじゃない筈。

 え?奴隷商人?

 名前だけは聞いたことあるけど、まさか実在したとは……。

 って違う、そうじゃない。

 はああん!?なに、売るって?俺を売るってか!?

 何でだよ!俺が何をしたってんだよ!

 ただ俺は家に居てパソコンしてただけじゃねぇか。

 俺が何をしたっていうんだよ!


『あー、転生したいーーー』


 俺が何を……。


『あー、転生したいーーー』


 俺が……。


『あー、転生したいーーー』


 ……まさか、な。

 いや、あれは違う、よな?

 でも、急に痛みが走ったのも、あの言葉を言った直後のことだったよな。

 そして目が覚めたら訳の分からん場所に……。

 で、でも、転生ってこういうのじゃないよな。これじゃどっちかというと転移だよね。

 落ち着け、落ち着こう、まず深呼吸をしよう。

 俺は信じないぞ、そんな非科学的な話。


「俺を信じねーぞ、そんな事ォ!!」

「うるっせぇぞ!えーと……コログとかいうガキィ!!」


 あ、はい、すみませんでした。

 いや怖い、すっごい厳つい声で怒鳴られた。絶対ヤクザみたいな奴だよ、今の声の主。

 ……ん?コログとかいうガキ?

 なんだ、俺の事じゃないみたいだ。

 向こうにも、俺と同じような境遇の人間がいるのかな?


《もしも才子 鋭気さんが異世界に転生したら。

名前:コログ=アルティナ》


 ……は、はは……まさかな。

 偶然さ、偶然。

 多分、あの診断は元々現実にいる人の名前で構成されてるんだろう。

 ……どんな確率だよ、そんなピンポイントな名前を持つ人と会うなんて。

 でも……そうだ!確か『無限の財産』だっけ?

 思い浮かべた分だけ金が出てくるとかいう至高のスキル。

 もしこれがあの診断通りに転生しているとしたら、使えるんじゃないか?

 そして使えなかったら、これは転生などという存在のせいではない、という証明にもなる。

 おお!流石は俺!冴えてるなぁ。

 早速念じてみる。


 1000円……1000円……!


 すると、くしゃっという音がした。

 掌に何かが握られているようだ。

 繋がれた腕を何とか移動させ、掌にあるものを放った。

 その掌に現れたもの……1000円札はヒラヒラと俺の眼前に舞い降りーーー、


「う、そ、だろ?」


 証明されてしまった。

 証明してしまった。

 この世は、俺は…………。


「転生……。異世界に……転生しちまった……だと?」











 現実を受け入れ、ほうけていること早四日。

 もはや俺が転生しているという事は、受け入れなければならない現実であった。


 まず一つ。

 この牢屋では、外の監視役?の人達が奴隷の名前を呼び、意識があるか、精神が安定しているかの確認を取っている。

 意識が無かったり、精神が狂っていたりしたら商品として使い物にならないから、そういう事をしているとのこと。

 それ聞いた瞬間、狂ったフリでもしてやろうか、と考えたのだが、そういう奴は処分するとの事だった。

 あぶねぇ……。

 そんなこんなで、沢山の人達……というか子供達が呼ばれ、俺の番が来た。

 その時、監視役の人は俺をこう呼んだんだ。


「コログ=アルティナ!」


 はい、フルネームでありがとうございます。

 ここでその名前を使われたということは、つまり俺の名前は、コログ=アルティナになっているということ。

 これはもう揺るぎまい。


 二つ目。

 俺達奴隷は、力仕事が主になる為、体を鍛えなければならないらしい。

 よって、昼から夕方まで、外にて剣の素振りをしたり腕立てをしたりしている。

 しかし、俺の体はそれについていけないのだ。

 確かに俺はあまり体力には自信のない方だったが、それにしても体力の減りが早いと思ったのだ。

 そして思い出した。


《体力低、スタミナ低、戦闘能力皆無、魔力低》


 そう、体力もスタミナも、最低ランクになっているということに。

 そりゃバテるのが早い筈だ。

 こんなんで生きていけるのか?とも思ったが、金があるから何とかなるだろう。金の力は偉大なのだ。

 因みに、他の子供達は凄まじかった。

 木刀を片手で楽々と振り回し、腕立ても何なくこなしていやがった。あの力、俺も欲しい。

 まあスタミナはあまり無かったのか、すぐに息切れしていたが。


 さて、三つ目だ。

 実はこれが決定打となったのだ。

 俺が転生してしまったのだと、決定付けてしまう出来事だった。

 まあ、少し話をしよう。

 俺達奴隷は鍛錬を終えると、牢屋に戻る。

 その牢屋に戻る通路に、全身を映せる鏡があったのだ。

 俺は何となく鏡を見ながら、その前を通過しーーー、違和感を感じてすぐに鏡の前へと戻った。

 その鏡に映っているのは、明らかに俺じゃない。見知らぬ少年。

 身長は150程度で、髪の色が白い。

 瞳の色は青く、全体的に細い体付きをしていた。

 一瞬誰かがいるのかと思ったが、鏡の前で立ち止まっている者など俺しかいない。

 そう、それで俺は気付いたのだ。


 ……俺の体が縮んでいた。しかも、全くの別人の体となって。




 こんだけ揃えば、そりゃあどんだけ非現実的な事でも認められるってもんですわ。

 でも対して面白くも無ければ嬉しくもない。

 むしろ捕まってる状態からの転生なんて、喜ぶ奴はいねぇよ。

 俺にある特殊能力”無限の財産”も、この状態だと最早なんの為にあるのか分からない。

 金を取り出しまくってこの奴隷商人達を買収しようかな、とも思ったのだが、多分金を吐き出す機械として拘束されるのがオチだろう。

 この世界での金がどれほどの価値を持ってるのかは知らないが、わざわざ子供達を攫って売ってまで手に入れようとしているのだ。

 少なくとも大切なものであるのは間違いないだろう。

 そんなものを無限に取り出せる人間……そりゃ速攻確保だな、俺でもそうする。


 というわけで、俺は一切目立つ行動を取らずになり切っている。

 たまに盗み聞きする監視係の話によれば、あと数日で俺達奴隷が店に手渡されるようだ。

 つまり、この奴隷商人共の手から離れられる、という訳だ。

 その瞬間、俺は自分に課せられた代金の分だけの金を出し、自分自身を買う。

 そうすれば、俺は自由の身だろう。

 後は野となれ山となれ!ってやつだ。

 他の子供達?知らん、俺が出せるのは俺の分だけだ。

 冷たいようだが、そんな金を持ってるとバレたら絶対に狙われる。

 他人の為に危険を犯す必要がないし、それに、無責任に買われても迷惑だろう。

 買った後に『はい解散!』なんて言ったら、金を持ってないそいつらに生きる道はない。


 何より、俺は男を買う趣味はない。

 男がいる時点で、買うのはやめた、うん。

 女だけ買うって訳にはいかないだろうし、そこは諦めてもらわなければならない。





 そう色々と計画を練っていると、俺は監視役の人に呼ばれた。

 何事だろうかと着いていってみると、そこには既に何十人もの子供奴隷が集まっていた。

 両腕を縄で縛られ、自由を無くしてから荷馬車に次々と乗せられて行く。

 成る程、今から、か。

 どうやら荷馬車で商品を届けるらしい。

 この場合の商品とは、俺達の事だろう。

 馬車の数は少なくとも10を超えており、その一つ一つに鉄で出来た鎧を着た護衛がついている。

 というか、本当に異世界なんだな。

 あんなに武装してるって事は、やっぱモンスターとかいるのだろうか?

 無事に届けてほしいものである。

 無事に辿り着けたらチップをやろう。


 そんな冗談を頭の中で思いながら馬車の中で寛いでいると、外から話し声が聞こえてきた。


「なあ、あのガキども売れると思うか?」

「売れるわきゃねぇだろ、あんな出来損ない共」

「だよな」

「「ぎゃはははははははは!!」」


 …………あいつら……。


 若干の苛立ちを覚えつつ、こうして俺は馬車に揺られて出発した。

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