第一話 異世界診断
俺の名は才子 鋭気
最近流行りの引きこもりである。
別に嫌な事があったとか、そういう理由ではない。
ただ単に働くのが面倒くさいだけだ。まあ他にも理由はあるが、それは無視。
最近は家にずっと篭り、パソコンにて様々なものを調べるのが日課になっている。
こんな俺だが、誰に迷惑をかけているわけでもない。
俺は既に一人暮らしをしているし、金は微妙にある。
……そう、微妙にある。
実は、俺もそろそろ働こうかな、と考えていた。
その理由は簡単で、単純に残金が少なすぎてそろそろヤバいと感じてきたからだ。
とはいっても、あと一ヶ月は持つ。
この一ヶ月の間に、どれだけそこそこの会社に就けるか、がポイントとなっていた。
しかし現実は難しい。
そこそこの会社に就けないのだ。
底辺クラスの会社にならば余裕で就けるのだが、そこそこともなると話は別。
やはり向こうも経験があり、優秀な人材を求めているのだから、総合能力の低い俺程度には目もくれない。
悲しいことである。
というわけで、俺は今、息抜きの為にパソコンをしている。
あくまで息抜きであり、決してサボっているとかそういう事ではない。
さて、俺は最近、とあるものにハマっている。
それは『診断』だ。
皆も、ネットをしていれば一度くらいは目にしたことがあるんじゃないかな?
自分の名前を入力して、診断ボタンを押せば勝手に診断してくれるもの。
まあおふざけのような回答しかないが、それが面白い時もある。
というか、俺はそれが診断メーカーの真の楽しみ方だと思っている。
まず真面目な回答を期待する奴は、はなから診断メーカーになんて頼らんだろ。
さて、今日の診断はこれだ。
『異世界診断』
これは名前を入力して診断ボタンをクリックすると、自分が異世界に行った時のステータスを表示してくれるという奴だ。
実はこの異世界診断、結構前から目をつけていたもの。
しかし、『恋愛診断』『性格診断』『脳内診断』など、様々な診断メーカーを試しているうちに、いつの間にか後回しになっていた。
そして、今日こそこの診断を行う。
まずは名前の入力……。才子 鋭気……っと。
そして、診断ボタンをクリックした。
数秒のロードのうち、画面にその診断結果が表示されていく。
《もし才子 鋭気さんが異世界に転生したら。
名前:コログ=アルティナ
ステータス=体力低、スタミナ低、魔力皆無、戦闘能力皆無。
特殊スキル:無限の財産。
無限の財産=念じた分だけ金を創り出せる能力。際限は無い。
装備:無限の袋。
無限の袋=どんな道具だろうが、いくらでも詰め込める魔法道具。レア度A。
異世界に行った後の行動:とりあえず金にものを言わせて頑張れ。》
……なんだこれ……。
流石俺だ。異世界に行っても使い物にならないんだな。
金にものを言わせて頑張れって……ゲームでいう成金プレイって事かな。
ふふふふふ……お主も悪よのう……。ってな感じかな。
それにしても、これにある特殊スキル?
今欲しい。現在進行形で欲しい。
それあれば、俺はもう二度と働かずに遊んで暮らせるって事じゃん。
くそっ、何だその人生チートスキル。
異世界で役に立つのかは知らないけど、今の世界なら喉から手を通り越して腕が出るくらい欲しい。
はあ……マジで羨ましい。
というか、何なら是非とも転生したい。
金で困ることが無いなんて、素敵じゃねぇか。
はあ……。
どうせやることもねぇし、彼女もいねぇし、ついでに金もねぇし、出来ることなら異世界とかそういう世界に転生して、また違う人生を生きたいものだ。
いや、別に異世界じゃなくてもいいんだけーーー、いや駄目だ、やっぱ異世界だ。
この世界にまた生まれ変わった所で、今と同じ状況になる事は揺るぎまい。
出来れば、魔物とか、魔法とか、そんな非科学的な世界にて楽しく過ごしたい。
死にたくはないし、かといってこのまま金なくて苦しみながら生きてたくもないし………。
ふー。全く、悩みが多すぎる。
あーくそ、このまま無駄に生きるよりは、いっそこの診断に書いてあるように、異世界へ、
「転生したいーーー」
無意識に、俺はそう呟いた。
すると次の瞬間ーー。
「あっ!?」
頭を殴られたかのような痛みが後頭部を走った。
俺はうつ伏せに倒れてしまい、パソコンの画面を押し倒してしまう。
(な……ん……ーーー?)
状況を理解するよりも早く。
俺の意識は、何かに吸い込まれたかのように消えていった。
《異世界への転生ーーー肉体の構築を開始ーーー》
そんな声を最後に聞いて。