何もなっかた
全ての終わりと小さな手
ああ、やっぱりだ。やっぱり神様は助けてくれない。もう二度と動く事はないであろう俺の体は、アスファルトに張り付いている。ふらふらと大型トラックから降りてくるあの男にはねられたのだろう。幼い少女がぬいぐるみを高いたか~いをして落とした時の様に。羽根つきの羽が落ちるように。ぐちゃりと。トマトみたいに無残に死んだ。最後位綺麗に死にたかったわ。母さんが死んだときも親父が死んだときも、そして今、おれが死ぬ時も。天からの贈り物は雨だった。雨だから何かが起こるのか、それとも何かが起こるから雨なのか、名前が雨天だからだろうか。そんなことは分かりもしなかったが、ただ気が付けば記憶の中の大切な日には必ず雨がふっていた。ああ、憎い。どんなに手を伸ばしても届く気配が無い。
「遠いなあ、神様・・・・。ちくしょうっ、ちくしょう」血で濡れた俺の顔を洗い流してゆく。あの醜い顔を。指先をそっと伸ばす。が、すり抜けてしまった。
「ハッ、ドラマみたいだな。」力無く笑った。なら演じてみようか。悲劇のヒロインって奴をさ。・・・そうだな。特にやりたい事もなかった。必要としてくれる人も、する人も居なかった。俺には何も無かったじゃないか。在り来たりな絶望のうたの歌詞を借りるとしたら。ずっと、zぅっと一人だった。じゃあ別にいいじゃないか死んだって。なんでこんなに空っぽなんだよ?何だってこんなに寒いんだ。雨だから」?いや、雨だって俺に触れないじゃないか。なんで、どうして。誰だこんな呪われた人生を創ったのは?そうだ、神様なんだ。全部あいつらのせいだ。何でこんな酷い運命を創った、何でく苦しむだけの為に俺を創った?もう、わっかんねぇよ。
「神様が分かんねぇよ!」後には空虚な余韻が残る。その静けさと叫びなれていなかったせいの疲労感でか膝から力が抜けガックリとざらついたアスファルトに座り込んだ。どうして地面はすり抜けないんだろう。このまま埋まってしまいたいのに。もう、消えたいのに・・・。ズブズブと。
雨天には自分の感情を、悲しみを、苦しみを涙として浄化する機能は備わっていない。さっき叫んだせいで喉がガラガラだ。それでも。誰も聞いていないと知っていても言わずにはいられなかった。
「分っかんねぇよ、神様・・・・」 じゃあ、と。少女の声は言った。周りの野次馬達の声が嘘みたいに遠のいてゆく感じがした。
神様にならないか?