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国語地天  作者: とーさん
1/4

生前

狭くとても裕福には見えない部屋。赤黒い絨毯が惹かれ壁には赤いレンガが埋められていた。

そのレンガ造りの壁には同じく赤いレンガで作られた暖炉が取り付けられ、

随分と使い古したのか炭で黒ずんでいた。中では、パチパチと火が燃え、狭い空間を照らしていました。部屋は、小さなキッチンとがら空きの食器棚にベッドが一つという殺風景なものです。暖炉の前で揺らめく二つの影を映しているのは、白髪の老婆と小さな幼い少女でした。老婆は今にも崩れてしまいそうな椅子に腰かけて少女はその老婆の膝に頭を乗せて顔を伏せていた。少女の茶色の髪を老婆はしわがれた手で愛おしそうに撫でます。

不意に少女の顔が起き上がり青色の瞳で老婆をとらえました。「ねぇ、おばあちゃん」

何だい?と老婆。「何かお話をしてよ」そのクリクリとした瞳でねだるように老婆を見つめます。老婆は愛おしそうに少女を見つめ「そうさねぇ・・・」「薪を足そうか・・・・」

そういうと重そうに腰を上げ、いつの間にか消えかかっていた火に薪をくべました。


 昔々ある山奥に小さな小さな村がありました。その村はとても小さかったけれどとても豊かな村でした。春には栄養豊富な山菜が採れ、夏にはたくさんの新鮮な野菜が採れ、秋には木々がきれいに紅葉したくさんの人々が訪れ賑わいました。冬には村の大きな湖が凍り、子供達が集まり笑い声が響き渡ります。その村には、何頭かの竜の神様がいてその竜達が、その村を何百年も守り豊かにしてきました。村の人々は竜に感謝し崇めていました。

しかし、いつしか人々は感謝することも竜達の存在も忘れてしまいました。人々は、より楽に暮らせる様に、機会をつくるようになり工場を作るために竜達の住処である湖を埋め立てたり、木々を伐採していきました。おこった竜達は、村を出ていきました。すると、みるみるうちに村は衰え人々は餓え、やがて村は滅んでしまいましたとさ。

その後竜は歌になったという。その歌を竜神歌、その歌を歌うことの出来る者、つまり竜に選ばれたものを竜信歌者とそう呼ぶらしい・・・。もっともただの風の噂だがね。



 人生というものを何かに例えられるのなら、自分の人生はおそらく年明け等に家族でワイワイ食べる蟹鍋・・・・の捨てられる殻についたネギと言った所だろう。と、本気で考えたりするのが雨天という人間であったりする。朝、ぎゅうぎゅうづめの電車の中で優雅に座る一人の少年というのが俺だ。恐らくこの額にある醜い傷のせいなのだろう。恐らく・・・と言うより100%だ。顔全体を覆う様に茶色く変色した皮膚は自分でも気持ち悪いと思う。遠目に見てくる人間が実に鬱陶しい。ああ・・・・。

          ・・・・・・・・神様が憎い・・・・・・・・・・・

   物心がついた頃からずっとずっと恨んできた。憎んできた。その理由はこの傷がおおいに占めているのだが・・・。電車からゾロゾロと降りる人々に混じらずに改札を抜けると雨が降っていた。雨だ。いつも雨。何かが起こる時はいつだって雨なんだ。名前のせいだろうか。6歳の時に母が死んだ。家族の中心であった彼女が居なくなった後は親父が荒れて酒浸りになりDVになった。毎日毎日雨天を殴り続けた。その頃からいじめが始まった。アリの巣に引きずり込まれた芋虫のような学校での一日が終われば薄暗いアパートでサウンドバッグにたいな時間が始まる。そんな生活が続いた割にはまともに育った方であろうか。下駄箱を開くとアルミホイルを小さく固く丸めたものがいくつか上履きの中に入っていた。今日は良い日だ。炭で書かれた落書きも絵具で塗られてもいない。ゴミ箱へ中身を入れると溜息がでた。生徒手帳だ。名前なんて見なくても分かる。ホコリを払うと胸ポケットに入れた。昨日の体育の時だろう。1-Bと書かれた教室の前に机と椅子があった。迷わず中へ運び入れる。わぉ、俺の机カラフル。チョークで書かれたメッセージは言われなれてた。バカとか気持ち悪いとか。気持ち悪いと初めて言われたのは確か小学1年生の時であろうか。今まで好きだといってくれていた女の子がこの傷ができたらそう言った。花宮だっけか。まぁ、彼女は悪くなかろう。でも、何か体がズーンと重くなったな。この思いを何て言うか知らないけどやっぱり、神様が憎い。信じてもいないのにな

「神様、いるんかなぁ・・・・」教室の窓から見上げた空は曇っていた。もうすぐ、雨が降る。―――


 

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