始まりは日常的に
皆様、どうもこんにちは。月城 柚とか言う奴です。ファンタジーでありアクションでありガクエンモノな気がする何か変な作品です。プロローグである『始まりは日常的に』は、格闘技好きには堪らない(かも知れない)内容です。こういったギャグ(笑って下さると幸い)を書く事は結構好きだったりします。その場即席でどんどんアイデアが湧きます。嘘です。かなり考えました。タイトルとプロローグの内容が全く噛み合ってませんが、どうぞ暖かい目で見守ってやって下さい。そうして頂けると、月城は結構嬉しがります。安い動物です。それでは、魔法の世界へ。どうぞ。二月一一日 月城 柚。
一〇月二〇日。
快晴。俺は、マンションのオートロックを抜けて外に飛び出した。心地よい風が頬に触れる。程良く照りつける太陽は光の洪水の様。
「う〜ん…いい天気だ。こんな日は学校サボってゲーセンにでも繰り出したいな♪」
まんざら冗談ではない。
ホントに、ほんの一瞬だけそう思った。
考えを改めたのは、俺の出席率を思い出したからだ。
担任に遅刻が多いと言われ、このままなら確実に落第だないや別に俺はいいんだよお前の人生なんだから好きに生きろだがホントにこのままでいいのか一生後悔するぞと、早口でまくし立てられたら行かない訳にもいくまい。
「ン〜…でもな…こう天気が良くちゃ、サボりたくなるよなァ」
フワァ、と豪快な欠伸をかました俺は、通学路を引き返した。
ゴッ!と言う鈍い音と共に腰に激痛が走ったのは、丁度だった。
「ブグォッア゛!」
思わず、バイクに轢かれたガマガエルの様な声を出してしまう。
アスファルトに『ズジャシャシャァ!』と背中を滑らせ、どっかの家の塀にマンガみたくぶつかってへばりつく俺。
アクション映画でもコメディー映画でも見れない様な、凄まじい滑りだなと思う。
「どっこに行こうとしってたっのかナ〜?♪」
女の声が聞こえた。
ここまで体重の乗った低空ドロップキックを、悪びれる様子もなく繰り出す女。
と言われると、俺には一人しか思い浮かばない。
「テメっ、来未…いい度胸じゃねェか…」
言葉こそ強がっている俺だが、実はダメージが直に腰に来ていて、立ち上がるのがやっとだったりする。
目の前の、茶色が所々に混じった黒い長髪をポニーテールにしている少女――宮崎 来未――は、威風堂々という言葉がピッタリな程居直って俺を睨みつけていた。
俺と身長差が全く無い少女の眼力は日本刀を思わせる程鋭く、俺は一歩後退した。
「問一。キミは今、どこに行こうとしてた?」
急にニッコリと明るい声を出す来未。目が笑ってないのが不気味だ。
「近場のゲーセンに」
「正直に答えてるんじゃない!」
身体中のバネを最大限に活かした腕の一撃――要するにラリアート――が俺の喉に直撃。
「――――――!!」
喉に直撃したせいで、悲鳴すら出ない。
先程のダメージも相極まって、俺は今一度後ろに吹き飛ぶ。
「問二。キミの単位は今、どんな状態?」
「ケッ、ゲヘ、ゲホッブォッ!カハ、ヒュ、ヒューヒュー…」
俺は立ち上がりながら、答えを模索した。
答えなくては時間切れとか言われて次の攻撃が来る!しかし正直に答えても攻撃が来る!だからと言って嘘をついても攻撃が来る!ってどの道来るよ、この女の攻撃!
「た、単位…は…危ない…ヒュー、状態、DEATH…」
むしろ俺の生命が危ない。
「だから正直に答えるな!」
来未が跳躍する。
空中で方向転換して遠心力を増大させる足技、ソバットは見事に俺の後頭部に命中、クリーンヒットどころかクリティカルヒット。
俺は横薙ぎの一撃で今度はアスファルトに突っ伏した。
悲鳴をあげる前に額とアスファルトが衝突した。
「NO!脳!ドタマ割れ!!」
のたうつ俺を見下しているのは、さながら、冥府の魔女〈ヘカーテ〉に見えなくもない。見た事ないケド。
「問三。キミが今から行くべき場所はどこ?」
「東…大原…高校で御座います」
「分かってンならサボろうとするじゃない!!」
俺の頭に左腕を絡め、股に腕を通して、頭が下になるように持ち上げる来未。この技はまさか――!!
「ちょっ、待って待って待って来未さん!ブレンバスター?この技のモーションはブレンバスターDEATHか!?下アスファルトですよ!?頭打ったら確実に死にますって、聞こえてます?ネェ、ちょっ!?膝に力溜めてないで、あっ、あっ、あ――――あっ、あ――――これは、魔術と現実の境界線を決めるお話。