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嘘から始まる本当の恋  作者: naomikoryo


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第7話:嫉妬? 千紗の策略

翌朝——。


來未がいつものように出勤し、会社のエレベーターに乗り込もうとした瞬間、後ろから鋭い視線を感じた。


「……?」


振り返ると、そこには吉川千紗よしかわ・ちさが立っていた。


(あれ……? どこかで見たことあるような……)


來未が首を傾げていると、千紗はスッと近寄ってきて、静かに微笑んだ。


「佐々木來未さん、ですよね?」


「え、あ、はい。そうですけど……?」


「私、吉川千紗と申します。

雄二先輩の後輩です。」


「……!!」


來未の頭の中に、昨日の中村麻美の言葉がフラッシュバックした。


『向かいの会社の後輩の子が、かなり落ち込んでるらしいんですよ……』


(……まさか、この子!?)


來未が警戒しながら様子を伺っていると、千紗は涼しげな顔で続けた。


「先輩と婚約されたそうで……

おめでとうございます。」


「え、あ、ありがとう……?」


「でも、驚きました。

雄二先輩って、そういうタイプじゃないと思ってましたから。」


「そういうタイプ……?」


「ほら、先輩ってあまり恋愛に興味がなさそうだったじゃないですか。

だから、まさか婚約だなんて……

信じられなくて。」


千紗は笑顔のまま來未をじっと見つめる。

その視線には、何かを探るような鋭さがあった。


(……この子、雄二のこと狙ってるな?)


來未の第六感が、ビンビンに警報を鳴らしていた。



◆千紗の牽制


「でも、本当に急なお話でしたよね?」


千紗はエレベーターのボタンを押しながら、來未をじっと見つめる。


「……まぁ、うん。

タイミングが良かったというか……?」


「へぇ~。」


千紗は微笑んでいたが、その目は笑っていなかった。


「私、先輩のことずっと近くで見てきたので……

ちょっとだけ、心配なんです。」


「……何が?」


「だって、雄二先輩って、そんなに簡単に人と深い関係になる人じゃないんです。

仕事でも、プライベートでも、すごく距離感を大事にする人だから……

本当に、來未さんと結婚を考えているのかな? って。」


(……うわぁぁぁぁ! 完全に疑ってる!!)


來未は心の中で悲鳴を上げた。


(くっ……まぁ、こっちも偽装婚約だから、なんも言い返せない……!!)


千紗の鋭い視線に負けそうになりながらも、來未は必死でポーカーフェイスを保った。


「まぁ……

そういうのは、私たち二人の問題だから。」


「そうですね。

でも……」


千紗はそこで少し表情を曇らせた。


「雄二先輩、本当に幸せそうですか?」


「……は?」


「先輩、なんとなく無理しているように見えるんです。

私、もう2年近く一緒に働いているので、少しは分かるつもりなんです。」


(……無理、してる?)


來未の心臓が、ズキリと痛んだ。


確かに、雄二はこの偽装婚約に巻き込まれてしまっただけだ。

彼は元々、「結婚なんて興味ない」と言っていたし、本当ならこんなことに関わる必要はなかった。


(……もしかして、雄二、本当は迷惑してる?)


來未の脳裏に、昨夜の出来事がよぎる。


——「こういうのって、俺がやってていいのか?」


あの時の雄二の言葉は、もしかしたら「偽装婚約なんてやめたい」っていう遠回しなサインだったのかもしれない。


「……ふふっ。」


千紗が小さく笑う。


「ごめんなさい、変なこと言って。

でも、私は……雄二先輩には、本当に好きな人と幸せになってほしいって思ってるんです。」


「…………」


(……うわぁぁぁぁぁ! これは、私に『身を引け』って遠回しに言ってるやつじゃん!?)


來未の心は、複雑にかき乱された。


(ていうか、この子……めちゃくちゃ自信あるじゃん……!)


(雄二のこと、「私のほうが分かってる」感 すごいじゃん……!)


エレベーターが到着し、千紗は一歩後ろに下がると、にっこりと微笑んだ。


「では、失礼しますね。」


そう言い残し、颯爽と去っていく千紗。


來未は呆然とその背中を見送りながら、心の中で叫んだ。


(なんか負けた気がする……!!!)



◆來未、モヤモヤが止まらない


「……くっそぉぉぉ!!!」


その夜。


來未はソファに寝転びながら、クッションを抱きしめてゴロゴロ転がっていた。


「なんだよ、いきなり暴れだして。」


雄二がキッチンから出てきて、怪訝そうな顔をする。


「……ねぇ、雄二。」


「ん?」


「……あんた、会社でモテてるんだってね。」


「は?」


雄二はピタリと動きを止めた。


「今日、会社のビルで後輩ちゃんに会ったよ。」


「ああ……

千紗か。」


「やっぱり知ってるじゃん!」


「そりゃ知ってるだろ。

同じ会社だし。」


「で?

なんであの子、あんたのことめっちゃ心配してるわけ?」


「……さあな。」


雄二はソファに腰を下ろし、めんどくさそうにビールを飲んだ。


來未は少しむくれた表情を浮かべながら、雄二の横に座った。


「……ねぇ、雄二。」


「ん?」


「……もし、あの子が本気であんたのこと好きだったら、どうする?」


「…………」


雄二はしばらく考え込み、それから來未をじっと見つめた。


そして、ポツリと一言。


「俺は、お前を選んだんだけどな。」


「え……?」


來未の心臓が、大きく跳ねた。


「……あ、いや、そういう意味じゃなくて……!」


雄二は慌てて顔を背け、ビールをグビグビと飲み干した。


(今の、どういう意味……?)


來未は、自分の胸の奥が熱くなるのを感じながら、雄二の横顔をそっと盗み見た。

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