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嘘から始まる本当の恋  作者: naomikoryo


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第6話:意外な気遣い、雄二の優しさに來未がときめく

「……はぁ、疲れた。」


來未は玄関のドアを開けるなり、大きくため息をついた。


今日は最悪だった。


桐生課長との食事会は、想像以上に面倒くさいものになった。

キザな態度でマウントを取ろうとしてくる桐生に、適当にあしらいながらも、

途中で雄二が口論寸前になるという最悪の展開。


「まったく……

なんなのよ、アイツ。」


來未はパンプスを脱ぎ捨て、ドカッとソファに座った。


「ただいまー。」


後から入ってきた雄二も、ネクタイを緩めながらため息をついた。


「おい、來未。」


「んー?」


「お前、帰ってくるなり靴、そこらへんに放り投げるなよ。

ちゃんと揃えろ。」


「は?

そんなの今どうでもよくない?」


「そういうだらしないところ、昔から直らねぇよな。」


「うっさいわね!」


來未は文句を言いつつも、面倒くさそうに靴を揃えに行く。


(……まぁ、雄二がいるとこういう細かいところでうるさいんだよな。)


昔から家が近くて、何かと一緒にいることが多かったから、雄二のこういう「世話焼き」な部分は知っていた。

でも、今はその「世話焼き」が妙に心地よく感じる自分がいる。



◆ゴミ捨てと、ふとした優しさ


來未が部屋着に着替えてリビングに戻ると、雄二が無言でゴミ袋をまとめていた。


「あれ、ゴミ捨て?」


「ああ。

お前、またゴミの日忘れてただろ。」


「あ……

そういえば。」


「……ほんと、ちゃんとしろよな。」


そう言いながら、雄二はサッとゴミ袋を持って玄関へ向かう。


(……え? なんで当たり前みたいにゴミ捨てしてんの?)


來未はポカンとしながら、その背中を見送った。


「あのさぁ……

別に、そこまでしなくてもよくない?」


「は?」


「なんか、普通に家事とかしてるし……」


「だって、家が汚くなるの嫌だろ。」


「そりゃそうだけど……」


雄二は、來未の言葉に特に気にする様子もなく、サッとスニーカーを履く。


「まぁ、こういうのはできる方がやればいいんだよ。

お前、どうせ忘れるだろ?」


「……まぁ、うん。」


來未は素直に頷く。


「じゃあ、行ってくるわ。」


雄二は何でもないようにそう言って、ゴミ袋を持って出て行った。


何気ない日常の光景のはずなのに、なぜか心臓がドクンと跳ねる。


(なんだろう……これ。)


雄二が優しいのは昔から知ってる。

でも、それが「当たり前」になっていたからこそ、今まで意識したことなんてなかった。


なのに——


(……なんで、今さらこんな気持ちになってんのよ、私。)


來未は、ソファに倒れ込みながら、自分の鼓動が妙に早くなっているのを感じていた。



◆簡単なものだけど——それが意外と嬉しい


その夜——。


來未は残業で遅くなり、家に帰ってきたのは22時を過ぎていた。


「はぁぁぁ、疲れたぁ……」


靴を脱ぐのも億劫で、玄関でぐったりとうなだれる。


「あれ、おかえり。」


リビングのドアが開き、雄二が顔を出した。


「え、まだ起きてたの?」


「お前が遅いからな。腹減っただろ?」


「……え?」


「ほら、簡単なもんだけど。」


來未がリビングに入ると、そこにはアツアツのペペロンチーノが用意されていた。


「……え?」


「だから、簡単なもんだけどって言ったろ。」


雄二はキッチンの隅に立ちながら、來未の反応を伺っている。


「お前、最近まともにご飯食べてねぇだろ。」


「……なんで知ってるの?」


「見りゃ分かる。」


來未は、目の前のパスタをじっと見つめた。


(……これ、雄二が作ってくれたの?)


なんか、普通に嬉しい。


「……いただきます。」


來未はフォークを手に取り、一口食べる。


「……美味しい。」


「そりゃよかった。」


雄二は軽く頷き、ソファに座る。


(……あれ?)


來未は、自分の頬が少し熱くなっているのを感じた。


「なぁ、來未。」


「ん?」


「……こういうのって、俺がやってていいのか?」


「え?」


「いや、お前の婚約者のフリしてるけどさ。」


雄二は少しだけ視線を逸らしながら言った。


「本当は、こういうことをしてやるのって、お前の本物の彼氏の役目なんじゃねぇの?」


「…………」


來未は、一瞬言葉を失った。


そして、自分の胸の奥にある違和感に気づく。


(……私、本当に『本物の彼氏』を探さなきゃいけないの?)


(今、こうして雄二に気を遣ってもらって、ご飯作ってもらって、安心してるのに?)


來未は、自分の手のひらをじっと見つめた。


「……いいんじゃない?」


「え?」


「だって、私たち偽の婚約者だけど……今は、本当に一緒に暮らしてるんだから。」


「…………」


雄二はしばらく來未を見つめていたが、やがて静かに微笑んだ。


「……まぁ、そういうことにしとくか。」


その笑顔を見た瞬間、來未の胸がまたドクンと鳴った。


(……ちょっと待って、私、もしかして。)


(雄二のこと……本当に好きになりかけてる?)


來未はそっと口元を押さえながら、目の前のパスタをもう一口食べた。

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