第12話:お互いの気持ちを自覚
「ちょ、ちょっと雄二!
そんなに引っ張らないでよ!」
來未は抗議しながらも、雄二の手を振りほどくことができなかった。
「いいから黙ってついてこい。」
「は!?
何その言い方!」
「うるせぇ。
お前、いつもみたいに『もう、勝手にしなさいよ!』って言わねぇのか?」
「……!」
雄二は振り返り、來未を真っ直ぐ見つめる。
「お前さ、昨日からずっとおかしいんだよ。」
「おかしくなんかない!」
「じゃあ、なんで桐生の誘いを断らなかった?」
「それは……」
(雄二が全然気にしてくれないと思ったから……)
でも、それは口に出せなかった。
「……なんでもない。」
「はぁ……
お前、ほんとめんどくせぇな。」
「な、なによそれ!?」
「もういい。
家帰るぞ。」
雄二はそのまま來未の手を引き、無言で歩き出す。
來未は、強く握られたままの手をじっと見つめた。
(……雄二の手、大きいな。)
(……あれ? 私、なんでこんなことでドキドキしてんの?)
この胸の高鳴りが、何を意味するのか——來未はまだはっきりとは分かっていなかった。
◆リビングでの沈黙
家に帰り着いたものの、二人の間には微妙な沈黙が流れていた。
來未はソファに座り、雄二はキッチンで水を飲んでいる。
「……はぁ。」
雄二がため息をつきながら、來未の隣に座った。
「……なに?」
「お前さ、俺のことどう思ってんの?」
「え?」
「俺は、お前のこと好きなんだよ。」
「……は?」
來未は、一瞬耳を疑った。
(い、今、何て言った!?)
「ちょ、ちょっと待って、今なんて……」
「好きだって言ったんだよ。」
「……っ!」
心臓が大きく跳ねた。
雄二は、普段の軽口もなく、ただ真剣な目で來未を見つめている。
「……でも、お前が俺のことをそう思ってないなら、このまま元通りにしてもいい。」
「…………」
「ただ、お前が……
少しでも俺のことをそういう風に見てくれるなら……」
雄二は、言葉を切り、ふっと小さく笑った。
「……もう、これ以上は誤魔化せねぇよ。」
「…………」
來未は、雄二の言葉をじっと噛みしめた。
(……私、どうしたいんだろ。)
(雄二と、このまま“偽の婚約者”を続ける? それとも……)
來未の胸の奥で、何かが決定的に変わり始めていた。




