第10話:告白未遂とすれ違い
翌日——。
「おい、來未。
お前、お見合いは?」
「んー、行かないことにした!」
來未はソファに寝転がりながら、ゲームのコントローラーを握っていた。
「行かないって、お前……
親父さんになんて言ったんだよ?」
「『すみません、急に体調が悪くなってしまって……』って言ったら、『まったく、無理するからだ』ってあっさり納得してくれたわ!」
「……お前、嘘ついたのか。」
「いやいや、ある意味本当よ!
昨日からずっと頭の中モヤモヤしてたし、ストレスで体調悪くなりそうだったし!」
「……まぁ、いいけどな。」
雄二はため息をつきながら、自分もソファに腰を下ろした。
來未はゲームを続けながら、ちらっと雄二の横顔を盗み見た。
(……結局、雄二は何も言ってくれなかった。)
昨日、ほんの少し期待していた。
——「お前、本当に行くのか?」
って聞いてくれた時、「行くな」って言ってくれるんじゃないかって。
でも、雄二は最後まで「行くな」とは言わなかった。
(……やっぱり、私のことなんて、どうでもいいのかな……)
來未は、ゲーム画面を見つめながら、胸の奥に広がる寂しさを押し込めた。
◆酔った勢いで、言いかけた言葉
その夜——。
「んー、酔ったぁ……」
來未は、居酒屋のカウンターでぐでんぐでんになっていた。
雄二と二人で軽く飲みに行ったはずだったのに、來未は妙にペースが早く、気づけばかなり酔っ払っていた。
「お前、飲みすぎだっての。」
「うるさいわねぇ……」
來未は雄二の肩にもたれかかりながら、ぼそっと呟いた。
「ねぇ、雄二……」
「ん?」
「私たちさぁ……
なんで付き合わなかったんだろうね。」
「…………」
雄二の手が、一瞬止まった。
「お前、何言ってんだ。」
「いや、だってさぁ……
こうして一緒に住んで、なんだかんだでお互い気を遣わないし、喧嘩もしないし……」
來未は、少し赤くなった頬を片手で押さえながら、ぼそぼそと続けた。
「それにさ……
雄二、優しいし……
料理もできるし……」
「…………」
「ねぇ、雄二はさ……
私のこと、どう思ってるの?」
「……どうって。」
「私はね……」
來未は、雄二の顔をじっと見つめる。
「最近、ちょっとだけ、雄二のこと、いいかもって思う時があるんだよね。」
「……っ!」
雄二の表情が、一瞬で変わった。
「お前、酔ってるだろ。」
「酔ってるけど、本気で言ってる。」
來未は、雄二のシャツの袖をキュッと掴む。
「ねぇ、雄二……」
「…………」
雄二はじっと來未を見つめていたが——
「……やめとけ。」
「……え?」
「お前、それ、酔ってるだけだろ。」
雄二は、無理やり來未の手を振りほどいた。
「ほら、帰るぞ。」
「ちょ、ちょっと……」
「お前、あとで後悔するぞ。」
そう言って、雄二は來未を立ち上がらせ、店を出た。
來未は、「言っちゃいけないことを言った」ような気がして、唇を噛みしめた。
◆すれ違いの始まり
帰り道、來未は何も話さなかった。
雄二も、珍しく黙って歩いていた。
家について、來未が先に部屋に入ろうとした時——
「來未。」
「……なに?」
「……俺たち、今のままがいいと思うけどな。」
「…………」
來未は、ぎゅっと拳を握った。
「……そう。」
そう言って、來未はドアを閉めた。




