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彼女はいつも同じさよならしか言わない 〜さよならを言う練習  作者: ふぁい(phi)


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第三話 おかえりと言う人

私は知っていた。


 


今日、彼が昔の彼女に会うこと。


 


隠されていない。


 


ちゃんと「会ってくる」と言ってくれた。


 


それだけで十分だと思った。


 


 


でも。


 


思ったより、平気じゃなかった。


 


 


カフェで会ってるのかな。


 


どんな顔してるんだろう。


 


懐かしいって思ってるかな。


 


 


私はスマホを何度も見てしまう。


 


 


嫉妬?


 


少し。


 


不安?


 


正直に言えば、ある。


 


 


でも私は、選んだ。


 


 


“問い詰めない”を。


 


 


だって、彼は隠さなかった。


 


 


隠さなかった人を疑い続けたら、


その先は、たぶん濁る。


 


 


夕方。


 


メッセージが来る。


 


「ちゃんと終わったよ」


 


 


終わった。


 


その一文が、少しだけ重い。


 


 


私は考える。


 


 


終わったって、何が?


 


 


未練?


 


物語?


 


 


それとも、私が知らない時間?


 


 


少しだけ指が止まる。


 


 


本当は聞きたい。


 


「何を話したの?」

「どう思ったの?」

「まだ好きじゃないの?」


 


 


でも。


 


それを全部聞いたら。


 


 


彼の“過去”を

私の“現在”で裁くことになる。


 


 


それは違う。


 


 


だから私は打つ。


 


 


「そっか」

「おかえり」


 


 


送信。


 


 


胸が少しだけ痛い。


 


でも、壊れてはいない。


 


 


彼は帰ってくる。


 


本当に。


 


 


いつもより少し静かで、


でもちゃんと、私を見る。


 


 


私は聞かない。


 


 


彼も多くを語らない。


 


 


それでいい。


 


 


夜、ひとりになって考える。


 


 


私は、彼の“一番最初”じゃない。


 


 


でも。


 


 


私は、彼の“今”だ。


 


 


それは、負けでも妥協でもない。


 


 


人は、重なってできている。


 


過去の恋も、

失敗も、

さよならも。


 


 


それを消さずに、

今を選んでくれている。


 


 


それなら。


 


 


私は“今を守る人”でいい。


 


 


翌朝。


 


彼が言う。


 


 


「ありがとう」


 


 


私は笑う。


 


 


「何が?」


 


 


「信じてくれて」


 


 


私は少しだけ肩をすくめる。


 


 


「選んだだけ」


 


 


さよならを言う人がいる。


 


 


でも。


 


 


おかえりを言う人もいる。


 


 


どっちも、勇気がいる。


 


 


世界は止まらない。


 


 


でも、


誰かの帰る場所になることはできる。


 


 


――続く。


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