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第7章 揺れる心

 断罪の夜から数日。

 双子の存在は学園中に知れ渡り、怜と涼はすっかり孤立していた。

 授業で隣の席に座っても、声をかけてくる生徒はもういない。

 昼食を食堂で取ろうとすれば、いつの間にか周囲の席は空いてしまう。


「……やっぱり、私が悪かったんだ」

 涼は俯いたまま箸を置く。

 怜は首を振って微笑もうとするが、その笑顔には力がなかった。


 そんな様子を、少し離れた場所から琴葉は見ていた。

 自分が告発した結果、双子が孤立している。

 望んでいたはずなのに、胸がざわついて仕方がない。


(私は正しかった……はずよ。それなのに、どうしてこんなに――苦しいの?)


 放課後、廊下で偶然怜とすれ違った。

 怜は教科書を抱えながら、静かに頭を下げる。

「……こんにちは、琴葉さん」


 その声に敵意も反発もなかった。ただ、弱さを隠そうとする優しさだけがあった。


「……あなた、どうしてそんな顔で笑えるの」

 思わず琴葉の口から言葉がこぼれる。

「皆に避けられて……悔しくないの?」


 怜は立ち止まり、少し考えてから答えた。

「悔しいです。でも……僕は姉さんを守れた。それだけで十分だから」


「っ……!」


 琴葉の胸が大きく揺れた。

 完璧さに縋って生きてきた自分には決して持てなかった強さ――。

 怜は、弱さを抱えながらも笑える強さを持っている。


 夜、自室で一人鏡を見つめる琴葉。

 青い瞳に映るのは、完璧な令嬢の仮面を貼りつけた自分。


「……ずっと演じてきた。完璧じゃなきゃ、誰にも認めてもらえないと思ってたのに」

 呟いた声が震える。

 思い浮かぶのは、怜の穏やかな微笑み。


 胸の奥に芽生えた感情を、琴葉はまだ名前にできなかった。

 ただ一つだけ分かるのは――もう目を背けられないということだった。

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