第6章 真実の告白と孤立
舞踏会の大広間は、琴葉の声によって静寂に包まれた。
「ここにいる“涼さん”は偽物です!」
その宣言は、華やかな音楽をかき消し、ざわめきを一気に恐怖へと変えた。
「偽物?」「どういうこと……?」
生徒たちが色めき立ち、怜の周りに距離を取る。
怜は唇をかすかに噛み、視線を伏せた。
――逃げ出したい。けれど、このままでは姉を巻き込んでしまう。
意を決して顔を上げる。
「……琴葉さんの言う通りです。僕は“涼”ではありません。双子の弟、怜です」
会場にどよめきが走った。
「弟?」「じゃあ、本物の涼様はどこに?」
「入学からずっと騙していたの……?」
怜の胸を突き刺すような視線が四方八方から降り注ぐ。
その中で、涼が人混みをかき分けて前に進み出た。
「怜を責めないで! 全部、私が弱かったせいなの。令嬢らしく振る舞えなくて……」
必死に声を張り上げるが、周囲の冷たい視線は止まらない。
「弱さを理由に偽るなんて」「華族の名を汚した」――非難の囁きがあちこちで広がった。
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舞踏会が終わった後。
誰も寄りつかない控室で、涼と怜は肩を寄せ合って座っていた。
「ごめん……僕がもっと上手くやれていれば」
「違う、私のせいよ……」
二人の言葉は、互いを守ろうとするがゆえに痛々しく重なる。
かつて羨望と称賛の声が飛び交った彼らの周りには、今は静寂と孤独だけがあった。
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廊下の影から、その様子を琴葉は見ていた。
断罪したのは自分。勝利のはずだった。
けれど、胸の奥がきつく締めつけられる。
(私は……何をしているの……?)
勝ち誇りたいはずなのに、怜のうなだれる姿を見て、心が痛む。
その痛みが、彼女自身さえまだ気づかぬ「本当の気持ち」への第一歩だった。




