表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

第6章 真実の告白と孤立

 舞踏会の大広間は、琴葉の声によって静寂に包まれた。

「ここにいる“涼さん”は偽物です!」

 その宣言は、華やかな音楽をかき消し、ざわめきを一気に恐怖へと変えた。


「偽物?」「どういうこと……?」

 生徒たちが色めき立ち、怜の周りに距離を取る。


 怜は唇をかすかに噛み、視線を伏せた。

 ――逃げ出したい。けれど、このままでは姉を巻き込んでしまう。


 意を決して顔を上げる。

「……琴葉さんの言う通りです。僕は“涼”ではありません。双子の弟、怜です」


 会場にどよめきが走った。

「弟?」「じゃあ、本物の涼様はどこに?」

「入学からずっと騙していたの……?」


 怜の胸を突き刺すような視線が四方八方から降り注ぐ。

 その中で、涼が人混みをかき分けて前に進み出た。


「怜を責めないで! 全部、私が弱かったせいなの。令嬢らしく振る舞えなくて……」

 必死に声を張り上げるが、周囲の冷たい視線は止まらない。

「弱さを理由に偽るなんて」「華族の名を汚した」――非難の囁きがあちこちで広がった。


---


 舞踏会が終わった後。

 誰も寄りつかない控室で、涼と怜は肩を寄せ合って座っていた。

「ごめん……僕がもっと上手くやれていれば」

「違う、私のせいよ……」


 二人の言葉は、互いを守ろうとするがゆえに痛々しく重なる。

 かつて羨望と称賛の声が飛び交った彼らの周りには、今は静寂と孤独だけがあった。


---


 廊下の影から、その様子を琴葉は見ていた。

 断罪したのは自分。勝利のはずだった。

 けれど、胸の奥がきつく締めつけられる。


(私は……何をしているの……?)


 勝ち誇りたいはずなのに、怜のうなだれる姿を見て、心が痛む。

 その痛みが、彼女自身さえまだ気づかぬ「本当の気持ち」への第一歩だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ