第11章 舞踏会再び!
春も終わりに近づいたころ、華族学園では再び舞踏会が開かれることになった。
前回の舞踏会は断罪の場となり、怜と涼にとっては苦い記憶でしかない。
だが今回――怜はもう逃げるつもりはなかった。
「姉さん、今度は僕が“怜”として参加するよ」
静かにそう告げる怜に、涼は目を細めて頷いた。
「うん。もう隠す必要はないわね。怜、そのままで輝いて」
舞踏会の夜。
怜は黒のタキシードに身を包み、堂々と入場した。
ざわめきが広がる。「双子の弟だ……」「あの怜が……」
好奇と疑念の入り混じった視線を真正面から受け止め、怜は胸を張る。
その隣には、青のドレスをまとった琴葉が立っていた。
彼女は周囲の視線をものともせず、怜の手を取る。
「怖じ気づいたら許さないわよ」
「……隣に琴葉さんがいるなら、大丈夫です」
音楽が流れ、二人は舞踏の輪へと足を踏み入れる。
ーーー
舞踏会からしばらくして。
双子の入れ替わりの秘密は学園に受け入れられ、涼も怜もそれぞれの姿で過ごせるようになった。
孤立の影はもうない。
図書館の窓辺で並んで本を読む怜と琴葉。
ふと怜が顔を上げると、琴葉が頬を染めながら呟いた。
「……覚悟しなさい。私はあなたに簡単に負けるつもりはないから」
「はい。負けませんよ。だって――」
怜は柔らかく笑った。
「僕は、もう一人じゃないですから」
外の桜は散り、初夏の風が新しい季節を告げていた。
二人の未来もまた、その風に乗って輝き始めていた。
怜の不器用なステップに、琴葉が小さく笑う。
「ほんとに……あなたって人は」
その笑顔は、もうツンデレの仮面ではなく、素直な恋心に染まっていた。
舞踏会の終盤。
怜は全員の前で口を開いた。
「僕は涼ではありません。双子の弟、怜です。でも……“偽り”として過ごした日々で学んだことがあります。
僕を見てくれた人がいた。弱さも強さも、全部を受け入れてくれる人が――」
視線の先、琴葉の瞳がまっすぐに応えていた。
「だから、これからは偽りじゃなく、本当の僕として生きていきます」
会場は静まり返り、やがて小さな拍手が広がり、次第に大きな波となった。




