せかいの半分をやろう?そんなの乗るしかないじゃないか!
※この作品は台本形式です。苦手な方はご注意ください。
「よくぞ来た、勇者よ」
「魔王……!貴様の命運もここまでだ!」
「ククク、なりのわりに威勢の良い事だ。まぁ待つがいい。我こそは魔物を従え、世界最大の軍事力を持つ魔王である。だが、世界最強となると……勇者、貴様だろう」
「何が言いたい?」
「我と貴様が手を組むならば、世界は我らの手の内に治まるだろうということだ。どうだ、我と手を組まんか?」
「はっ、何を馬鹿な……」
「我と手を組むならば世界の半分をくれてやろうではないか」
「!?せ、せかいの半分だと!?」
「そうだ。貴様一人を送り込むだけの人類に従う義理がどこにある?人類からどれだけの支援を受けてこれた?様々な犯罪者共も見てきただろう?貴様が上に立つ事で、全て是正することもできるのだぞ」
「せかいの半分……俺が……上に……ま、魔王よ!その言葉、偽りは無いだろうな!?」
「無論だ。さぁ、我が手を取るがいい、勇者よ!」
▷はい
いいえ
〜~~♪
そして夜が明けた!
「…………夢か。そうだよな、そんな都合のいい事が起こるわけがない。惑わされずに魔王を倒さねば。」
「おや、昨日はお楽しみ……んっ!?んんっ!!?」
「何の話だ?」
「い、いえ、凄い笑い声が聞こえていたのですが……あの、なんか雰囲気が違いますね……?」
「そうか?……すまないが、特に心当たりはないな……もしかしたら、面白い夢を見たからそのせいかもしれないな。」
「そうでしたか……そうなんですか……?ま、まぁ今後ともご贔屓によろしくお願いします」
「なんだか変な店主だったな……まぁいい。さて、魔王城へと向かおう。」
魔王城、魔王の間
「よくぞ来た、勇者よ」
「魔王!貴様の命運も……ん?随分と小さいな」
「だ、誰が小さいだと!」
「ああ、背丈を評するなど、例え敵であっても良いものではないな……すまなかった、俺が大きすぎたのだ」
「勇者、貴様頭は正気か!?そもそも誰のせいだと思っている!」
「何を憤っているのだ」
「貴様!自分の姿を見てなにかおかしいと思わないのか!?ほら!鏡!」
「うん?……フッ、今日の俺は心なしかいつもよりとてもキマって見えるな」
「どんな物キメればそうなるというのだ!貴様、150cm程度だっただろう!?それが何故3mを超える巨人になっているのだ!!」
「何を……成長期ならこれくらい普通だろう!魔王こそ、身の丈3mとの話だったが……その半分しかないじゃないか!まさか盛っていたというのか!?盛り過ぎにもほどがある!」
「盛ってなどおらんわ!!!……原因は全くもってわからんが、貴様と我の身長が入れ替わっているように思える。心当たりはないか?」
「だから成長期だと」
「そんなわけがあるか。そもそも何故気付かんのだ。部屋から出るときに頭とかぶつけんかったのか」
「……なんとなく、ここに来るまでの時間が速くなっていたような気はしたがな……急に伸びに伸びることへのイメージトレーニングなんて、誰でもやっていることだろう?」
「やっとらんわい。全く、貴様が手を組んでくれるという良い夢が見れたと思ったら、現実が悪夢のようになっているとは……」
「奇遇だな、魔王も同じ夢を見ていたのか……いを持ち出してきたのは理解に苦しむが、せの半分とはな。どこで俺の悲願を知ったのかは知らんが、アレは拒絶のしようがなかった……」
「……い?せ?何を言っている……?」
「だから、夢の中で魔王が言ったんだよ。背か、胃の半分をくれると」
「せか、い……?背……?……き、貴様!?まさか我の背丈の半分を!?」
「……ああ!つまり、夢ではなかったというのか!?」
「アホか貴様!?世界って言っただろ!ワールドだよワールド!」
「はぁ!?わかるかよそんなの!そもそもこの世界は魔王のものじゃないだろ!」
「文脈でわかるよなぁ!?貴様、身長コンプレックス拗らせて何聞いても背丈の話に聞こえるようになっておったな!?」
「反論の余地がねえ!」
「反論してほしかった……!くそ、なんだってこんなことに!」
「あー……まぁ、なんだ。生きてればいいことあるぞ。寝て起きたら身長が倍になってたりとかな」
「それ我にとってとんでもない災難だったがな!?……いや、そういえば夢じゃなかったんだよな?」
「そうだな」
「つまり、貴様は既に我と手を組んでいる……!そうだな!?」
「……夢オチだったことになんない?」
「なるかボケェ!鏡見てから物を言わんか!」
「ああ、この身長は夢であってはならない。仕方がない、手を組んでいるということでいいぞ」
「まったく……まぁ、これで勇者の対策が不要になったのなら……いや、酷い代償を支払わされた気がする……」
「そんな日もあるさ。それで、どうするんだ?人類を虐殺するとか奴隷にするとか言われたら止めさせてもらうが」
「え、いや手を組むって……」
「手を組む、であって従うとは言っていない。俺達はあくまで対等の協力関係だ」
「そういえば、確かに……まぁ、そんな人類のような悪辣な要求とかは最初からする気はなかったからいいのだがな……」
「では?」
「まずは各国に魔王と勇者が和解したこと、また降伏勧告の書簡を送る」
「条件は?」
「無条件……と言いたいが、無駄に争う理由もないからな。相互不可侵及び、魔王領に移住しようとする魔物が無事に通行する権利……まずは、これらの確保だな」
「世界を手にできると言った割に、支配とかは求めないんだな?」
「……知っているか、勇者」
「何をだ?」
「読み書きのできる魔物は……四天王だけだったのだ」
「えっ……四天王って、あの?」
「うむ。奴等は魔物の中で、知力において最強の4体だった」
「知力特化だからあんなに弱かったのか……」
「不眠不休で事務処理をし続けていたから、MPも回復できず魔法が使えなかったからな」
「なんかすまん」
「良いのだよ、我らは敵だったのだから。……ところで勇者よ、貴様、読み書きはできるな?」
「それはできるが……まさか!?」
「そうかそうか、それは素晴らしいな。では書類整理と作成から頼むぞ。なに、書類整理LV99まで上げれば一年昼夜を問わず働けばなんとかなるさ」
「し、死んでしまう!そもそも俺は書類整理LVなんてないぞ!?」
「うん?死んだところで、貴様は勇者の加護があるから復活できるだろう?何、我も魔王とはいえ王の一人。復活地点を設定する力くらいはある。そして、LVが低ければ上げればいいのだ。その分徹夜の期間は伸びるが、まぁ致し方あるまい」
「貴様、なんてことを!!!」
「さて、勇者よ。貴様は世界を征服しようと思うか?」
「思うわけないだろ!これ以上仕事増やすんじゃねえ!」
「そういうことだ、安心するがいい。なお、国境線を維持するのも、魔物の討伐を止めたいのも、新たな書類が発生するのを防ぐためだ」
「必要すぎる!では、通行権を要求しているのは」
「まだ見ぬ知能特化で事務処理ができる魔物が来てくれることを期待して、だ」
「魔王、すぐに書簡を作るぞ!」
「ああ、やってくれ」
「……魔王?」
「我も、言葉こそ話せばするがな……」
「魔王、今までの書類を見せろ!」
「うむ、これだ」
「……絵?」
「誰も書けないし読めないのに、文字で作っても意味がなかろうが」
「」
「ははは、頑張ってくれたまえ、勇者よ」
「勇者は逃げ出した!!!」
「しかし回り込まれてしまった!知らなかったのか、魔王からは逃げられない!」
「うおおお、リセットだ、リセットしろおおおお!!!」
「現実にそんなものがあると思うな!眼前の強敵から逃げようとするなど、勇者の名が泣くぞ!」
「泣いてもいいです!」
「許さん!ええい、もう終わらせてしまえ!」
「あ、ちょ、おま『こうして勇者と魔王は手を取り合い、世界は平和になりました。しかし、その後の勇者を見たものは一人も居ませんでした』
THE・END
はい、缶詰エンドです。
安心してください、魔王城の執務室に行けば、365日いつでも死んだ顔をした勇者に会えます。