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詩「出口雨」

作者: 有原悠二

六月の新緑は自殺するにはいい日だ

あじさいは決してなにもしゃべらないから

枯れてもなお人の記憶に残るにはただ黙って

 そこにいればいい

誰かが言った

曇り空の向こう側は晴れているって

きっとそうなんだろうと

うなずきながらも世界は常に騙されている

膨張する宇宙に

振り向きもせずに

悲しみの根源が海の底にあるとも知らずに

悪いか

ただ足掻きながら生きていくことの愚かさに

例え誰の記憶にも残らないとしても

わたしの人生はわたしのものだ

雲の切れ間から

ウソのような光が流れてくる

あじさいが枯れていく

味のしなくなったチューインガムを噛み続け

 ているように

険しい顔で緑を踏みつけながら

自分を殺すはずだったデカい木々の森が

ただそこにあったというだけの存在で

それは途方もない暗くて悲しい海だった

溺れていく三日前に捨てた影と

履き古したジョギング用シューズの

その穴に

あふれてくる冷たいものがなんだったか

この世界に別れを告げる数分前に

わたしはやっと分かった気がする

それは出口の向こう側だ

叫べ

雨の音が後ろから

わたしの鼓動を追いかけてくる


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