交差点の少女
あれは交差点で信号待ちをしている時のことだった。気づくと交差点内に少女がいて、こちらを向いて笑っていたんだ。邪魔だよ。どけよ。
信号が変わって反対側の車が動き出し、少女の肩を掠めた。
危なっ。確かにこいつが悪いけど、そんな事しなくても⋯⋯
少女は相変わらずこちらに笑顔を向けている。
ブーーーッ!
後ろの車にクラクションを鳴らされてしまった。どうしようもないだろ。ちっ、仕方ねえなあ。
俺は窓から顔を出して少女に注意した。
「危ないから早く交差点から出て!」
ブーーーッ!
またクラクションを鳴らされた。いや、今注意してんだから黙っとけよな。
「おい」
後ろの車の男が窓から顔を出して言った。
「あんた、誰に話しかけてんだ⋯⋯?」
「誰って、この子だよ」
そう言いながら前を向くと、相変わらず笑っている少女の顔が目にはいった。視線を下に向けると、そこにあるはずの足がなかった。
そうか、人じゃなくて幽霊で、俺にしか見えていないのか。じゃあ進んでも問題ないよな。
ドン
と鈍い音がし、少女は宙を舞った。その間も彼女は笑ってこちらを見ていた。
見ない見ない⋯⋯見たら連れて行かれる。
後日、俺はひき逃げ犯として逮捕された。ひどくね?
ひどくね?