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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
戦闘狂の水晶使い
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第92話  クラーク村の戦い


 村に来て、一月が経過した。

 季節はすでに冬。11月だ。


「ライン! 薪割り!」

「Yes,sir!」


 孤児院は他の家より多くの薪を必要とする。

 だからこうして、薪割りを手伝わされている。子供にやらせるわけにはいかないしな。


 斧は用意してもらってある。

 昨日までの一週間で、森の木々を切り倒し、村人全員が使用する分の木を用意した。


 見張りは騎士とフレイに任せた。

 だが、襲撃はおろか、近寄ってもこなかった。


 どうにも、連合の意図が読めない。


「今日はこれだけお願い」

「おう!」


 リアナスの口調は依然と変わっていない。

 もう、リアナスの性格の問題だ。諦めた。


 薪を割り続け、昼ご飯の時間になった。


「もういいよ、ライン」

「あいよ」


 薪が山積みだ。声しか聞こえない。


「午後はどうするの?」

「ああ、森の調査にな」

「ふ~~ん。意味あるの?」

「……いずれある」


 今のところ、たしかに何も起こっていない。

 何も起こらないにこしたことはないんだが、連合がいる時点で何か起こる。




 昼ご飯を食べ、すぐに出ていく。


「フレイ、行くぞ!」

「ぶるっ」


 そして、いつも通りフレイに乗って駆け、村が見えなくなってから仮面を着け、空を飛ぶ。


 どうせ今日も何もないだろうから、食用の魔物でも探しておこうと思っていた。

 魔力探知と『千里眼』を発動させる。


 カクトツとバモを見つけた。

 一緒にいるな。今日はたい……りょ…………?


 一か所に、バモとカクトツが合わせて10匹ほど集まっていた。


「なんだ? 何が起こっているんだ? 偶然か……?」


 視点を離し、広く辺りを見渡す。

 すると、カクトツたちの周りに連合のものらしき影があった。


「なんだ? 狩りか? いや、それにしては何か…………」


 森の奥の方にも複数の影があった。


「分隊が本隊に向かって獲物を追い込んでいる? いや、向こうにそれ以外の魔物はいない。何かがあるな」


 分隊の方を注意深く観察していた。そして次の瞬間──


 ──ズドンッ!!


 一瞬にして、分隊の魔物の反応が消滅した。


「何が!? …………ありゃなんだ?」


 連合の影かと思っていた大きな影が残っていた。こいつが魔物たちを瞬殺したのは間違いない。


 だが、オレにとっても敵となる存在だろう。

 それに、あんな強力そうな魔物を野放しにはできない。 


 あの魔物たちに話を聞いてみようか。

 本隊のもとに降り立つ。


「おい、一ついいか?」

『『!?』』

『敵!? ──【水晶使い】!?』


 まあ、そうなるわな。少なくとも、『人』と魔物は敵対関係だ。


「あの、森の奥の魔物にいついてだ。ここで一番偉い奴は?」

『私が、この複合分隊の指揮を任されたものだ』


 そう言って出てきたのは、ディービービ。普通のディービービよりも長い。


 普通のディービービが灰色であるのに対し、目の前のディービービは白色。

 アルビノだ。

 

「複合分隊? なんだそれは?」


 まあ、答えてくれるわけがない。


『各隊から選抜された分隊の複合部隊だ』

「なんのために?」

『あの魔物の討伐のためだ。あいつを誘き寄せるための罠も、こうして用意した』


 そう言いながら指差したのは、あのカクトツたちだ。


「お前らであいつを倒せるのか?」

『…………』


 連合は戦闘力の計算ができないのか? それとも…………捨て駒か?

 目の前の分隊長は隊長に準ずるレベルではある。が、他のやつらは……。


『……お前、かなり強い。私よりも』

「ああ。……で? それがどうした」

『どうか、今回は私たちに協力してはくれないか? あいつはここらの人間の村も壊滅させている。どうだ? お前にとっても悪い話ではあるまい?』


 正直、受けたい。

 こいつの話が本当なら、こちらにもメリットはある。…………本当なら、だが。


「なら、教えてくれ。お前たちがあいつを討つ理由はなんだ? あれは魔物だろう? それも、隊長級以上の」

『魔物はすべて仲間ではない。あれは我らと違い、理性がなく、殺戮衝動に支配されている。仲間も何十と殺された』

「…………そうか。なら、協力はしてやる。だが、信用はしない。オレはあの魔物を倒す」

『感謝する』


 こいつらとあれを同時に相手するのは、かなり厳しい。オレが負けたら、村に魔物が行くだろう。


 オレに勝ったのが連合ならまだいい。この蛇さえ押さえれば、あとは雑魚だ。


 だが、あの魔物が行ったら、孤児が増える。

 だが今度は受取先がなく、野垂れ死ぬだろう。それだけは避けたい。


「あの魔物の正体は?」

『異形でよくわからない。近親種すら、判別はできない』


 まったくの謎ってことかよ!


『──隠れるぞ!』


 は? いや、聞いてねぇぞ! 

 幸い、フレイに跨っていたため、そのまま上空へ飛び立つ。


 あの魔物は…………まだ100メートル以上離れている。隠れるの早すぎ。

 



 それからほどなくして、魔物がやってきた。

 そうしたら案の定、カクトツたちを襲い始めた。


 だが、カクトツたちは逃げない。

 よく見ると、足に木の枝を打ち込まれている。


 ここからなら、魔物の姿がよく見える。


 全身が真っ黒な体毛に覆われている。だが、赤い痣は一本もない。

 身長は少なくとも2メートル以上。3メートルには届かないだろう。

 腕は猿のように長い。

 毛皮の腰巻を履いている。


 人狼の親近種のように見える。

 だが、その仕草──捕食行動は吸血鬼ヴァンパイアだ。


 カクトツたちを捕まえ、噛み付き、血を啜る。その後、肉を食べる。

 吸血鬼ヴァンパイアなら、血を吸っておしまいだ。


『──かかれぇ!!』


 魔物が最後のカクトツに手を伸ばした瞬間、号令がかかる。

 

 それを引き金に、連合の魔物が総攻撃を仕掛ける。


 謎魔物に、火が、水が、土が、風が、爪が、棍棒が……降り注ぐ。


 だが、どれも決定打には程遠い。

 それどころか、全くと言っていいほどダメージは入っていない。


『攻撃の手を緩めるな!』


 正直、無謀だ。

 魔法が当たっても、痛痒を感じていなければ──反撃を受ける。


 ──ドズンッッ!!


 謎魔物を中心として、地面が揺れる。

 そして、連合の魔物は分隊長を除いて全滅。そう、たった一撃で、だ。


 木々も根元から倒れる。


『──『岩噛いわがみ』!!』


 分隊長は大口を開け、謎魔物に迫る。

 牙に毒はないが、技術スキルによって噛む力を増大させている。

 蛇型魔物特有の技術スキルだ。

 普通の魔物は喋らないらしいからな。そんな技術スキル名だったのか。


 だが、隙が大きい。

 準隊長級なのは保有魔力量だけか。喋ることができるのはいいことだが。


 謎魔物は、分隊長の大きく開いた口に生えた2本の牙を掴み、そのまま蛇をぐるぐる回す。

 そしてそのまま上空へ投げ…………


「……え?」


 狙いはオレか!? 

 オレに向かって大蛇が飛んでくる。戦闘は避けられないってか……。


「フレイ、頼んだ」

「ぶるる!!」


 フレイは『激震インパクト』を蛇めがけて放つ。

 それだけで、硬いはずの鱗が粉々にひび割れる。そのまま内部から破壊され、息絶える。


 え、フレイ、こんなに強かったっけ?

 この蛇、少なくとも魔鉱級だぞ。


「フレイ、少し離れたところで待機していてくれ」


 お前はどうするのか? という意思が伝わって来た。


「ああ……あいつを倒す。どのみち、このまま進めば村だ。ここで食い止めないとな」


 フレイは、もう、それ以上は言わなかった。


 謎魔物の前に降り立つ。フレイはまた駆け去っていった。


「お前の相手はオレがやってやる」


 謎魔物がこっちを向いた。目の焦点はあっているのか? 虹彩がない。

 呻き声も上げない。口から血が垂れている。


 だが、武器もない。

 しかしあの巨体だ。武器は必要ないのかもしれない。


 と、思ったのだが、死んだ魔物たちの体から、血が謎魔物の手の中に集まった。 


 すると、その手の中に大剣が出現した。


「ちっ! 血を操れるのか! しかも、錬金済みか」


 なかなか厄介な敵だな……。血には鉄が含まれてはいる。

 つまり、あの武器は鉄製。

 だが、魔法でもって生成したものだ。あなどれない。







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